成績概要書(2002年1月作成)
課題分類:04-03-05
研究課題:木製すのこによるパドックの泥ねい化防止技術       
担当部署:農研機構・北海道農研・畜産草地部・家畜管理研究室
担当者名:佐藤義和,中村正斗,矢用健一
協力分担:
予算区分:交付金
研究期間:1999〜2001年度

1.目的
 舗装していないパドックや通路は容易に泥ねい化し,①蹄病の増加,②乳房炎の増加,
③家畜や畜舎の汚れ, ④正常な運動の阻害,⑤作業能率の低下,などを引き起こす。
舗装を行うことは,牛の肢蹄への負担の増加, 暑熱期の放射環境の悪化,施設費の増加,
などにつながる。そこで,断面の小さい木材を使用し,土の軟らかさ を失うことなく,
泥ねい化を防止できる技術の開発を行った。

2.方法
(1)泥ねい化の主な原因が牛の蹄による土のねり返しであることから,ねり返しが
防止できればパドックや   通路の泥ねい化を防止することが可能である。本課題では,
木口断面の長辺が地面に垂直になるように   して作成した木材薄板製すのこを
地表面に埋設する工法を考案した(図1)。
(2)単位面積当たりに必要な木材の量を低減するために,すのこに使用する板材の断面は
12×90mmとすることとした。すのこの間隔は,牛の蹄が常に2〜3本の木材に載るように
45mmとした。スペーサーには断面が45×90mmの木材片あるいは長さ45mmに切断した
径20mmのポリエチレンパイプを使用した。1.8m間隔で,スペーサーを入れ,径12mmの
ボルトおよびナットで固定した。
(3)設置箇所の地表面をすのこの厚さだけ掘削し,すのこを置き火山礫で埋め戻した。
すのこ上の堆積物が泥ねい状態になることを防ぎ,かつ,すのこの損耗を低減するため,
すのこの上に2〜3cmの火山礫がかぶるようにした。
(4)搾乳牛約40頭が飼育されているフリーストールのパドック内の水槽前に,約30m2の施工
(幅1m,長さ3.6mのユニットを8ユニット設置)を行い,2年間使用し効果を確認した(図2,図3)。

3.成果の概要
(1)設置したすのこは土中に埋没したり破損したりすることなく,泥ねい化の発生が防止
できることを確認した。
(2)設置箇所はトラクタやホイールローダで走行することができ鋼製のバケットなどで
除ふんすることも可能であった。除ふん後,少量の土をすのこ上に載のせることで
施工直後の地表面の状態を再現することができた。
(3)すのこを設置した場所(実験区)とその近傍で設置しなかった場所(対照区)とで
地表面の山中式硬度を測定した。山中式硬度は常に実験区で大きい値を示し,
降雨があっても短期間のうちに回復する傾向が認められた。対照区では家畜の蹄による
土のねり返しが行われたため,土が軟化して泥ねい化が発生し,地表面の山中式硬度が
低下したものと考えられた(図4)。

[具体的データ]
 
 
 
 
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
(1)すのこの埋め戻しには,充填と締め固めが容易で透水性が現況地盤程度以上の土を使用し,
すのこ上に若干の土がかぶった状態を保つ。
(2)与えられる荷重やその頻度が大きい場所では,すのこの板厚を15〜20mmにしてもよい。
(3)掘削を行わずにすのこを置き,すのこの高さまで土で覆っても施工可能であるが,
縁部の保護が必要である。
(4)単位面積当たりの材料費は,コンクリート舗装費,あるいは,以前開発されたエキスパンドメタルと
ジオテキスタイルを用いる方法よりも安価である。
(5)「家畜飼養場所の泥濘化防止方法」として特許を申請中である。
 
5.残された問題とその対応
(1)耐用年数が明らかになっていないため,防腐剤の有無と種類が耐用年数に及ぼす影響について
実験を継続中である。