成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:季節外繁殖に対応した母羊の栄養管理が受胎率に及ぼす影響       
担当部署:北海道立畜産試験場 家畜生産部 特用家畜科
協力分担:
予算区分:道 費
研究期間:1998〜2000年度

1.目 的
 季節外繁殖方式は、2月分娩から6月の交配を行うまでの期間が短いため、この間の
母羊の栄養 管理が繁殖成績を左右すると考えられる。
また、「1996年版日本飼養標準・めん羊」も通常の1年 1産方式を基準に作られており、
季節外繁殖に対応するメニューが必要である。本試験では、前産 次の授乳期と乾乳、
回復および雄羊同居期における母羊の栄養管理を改善することにより受胎率の 向上を
めざし、季節外繁殖に適した母羊の飼料給与メニュー作成の基礎資料を得る。
 
2.方 法
1)雄羊同居期の飼料給与水準が季節外繁殖成績に及ぼす影響(試験1:図1)
 乾乳期(2週)は乾草1.5kg、回復期(2週)は乾草2.0kg+配合0.4kgの給与とし、雄羊同居期(4週)
 について、乾草2.0kg+配合1.0kg(同居H区)、乾草2.0kg+配合0.5kg(同居M区)の2処理を設定。
2)前産次授乳期の母羊栄養水準が離乳後の体重変化と季節外繁殖成績に及ぼす影響(試験2:図1)
 前産次の授乳期(9週)について、日本飼養標準(双子授乳前期)のTDN要求量に対し、
 80%(L区)、100%(M区)、120%(H区)の3処理を設定。
3)季節外繁殖不妊羊の通常繁殖群での繁殖成績の検討(試験3)
 季節外繁殖で不妊となった雌羊を同年秋の通常繁殖期に交配、通常繁殖雌羊と比較。
 
3.成果の概要
1)-1 雄羊同居期栄養の違いでは繁殖成績(表1)に有意な差がなく、一腹産子数は
同居M区でやや高い 傾向にあったことから、同居H区のような飼料増給は必要ないと
考えられた。
2)-1 乾乳終了時基準の体重推移を図2に示した。H区では、授乳期の体重減少が
最も少なく、季節外 繁殖への体力的な準備ができていたと推察された。M区では、
乾乳後の体重回復はH区と大差なかったが、 授乳期間の体重減少が大きかったために
回復の程度が小さかった。
2)-2 授乳期の栄養水準による季節外繁殖成績(表2)では、発情誘起率、妊娠率、
受胎率ともに H>L>M区の順に高い傾向が認められ、特に妊娠率ではH区がM区より
有意に高く、一腹産子数も 有意差ではないがH区が多い傾向にあった。M区がL区より
劣った原因は明確には分からないが、L区では 乾乳終了後の順調な体重回復(図2)から
フラッシング効果があったと推測され、これが一因として考えられる。
2)-3 本試験の範囲では、授乳期の母羊の栄養管理としてはH区の成績がよかったが、
年次間の受胎成績 には妊娠率で42〜95%と大きな隔たりがあり、栄養の改善だけでは
妊娠率のバラツキを軽減できなかった。
3)-1 6月の季節外繁殖で不妊となった場合、秋の繁殖季節交配を行うことにより
1年1産の生産は確保される。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
①ラム肉の特に春先の需要に対応するための技術として活用できる。
②雄羊同居法では、同居前の2〜3カ月間は雌羊を雄羊から隔離しておく必要がある。
③分娩時期にあたる2〜3月の2カ月間は羊舎内を点灯しておく。本試験での照明には
蛍光灯を用い、照度はめん羊の眼の高さで80lux以上(一番暗いところでも40lux以上)とした。
 
5.残された問題とその対応
①全明処理の実施時期・期間や日照条件を含む光周期環境が季節外繁殖成績の年次間差
に及ぼす影響の解明
②雄羊繁殖能力の季節変化の解明と、非繁殖季節における繁殖能力の向上
   「周年ラム肉生産のための種雄資源の効率的活用技術(平成13−16年度)」で対応
③季節外繁殖雌羊の連産性など、季節外分娩後の活用方法の検討