成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:プレディッピングにおける薬液浸漬後の乳頭清拭法 担当部署:道立根釧農業試験場 研究部 乳質生理科・乳牛飼養科 協力分担:なし 予算区分:民間受託 研究期間:2001年度 |
1.目的
プレディッピングにおける薬液浸漬後の効果の高い清拭方法を明らかにするため、
清拭資材の性状と拭き数が付着汚れの除去効果に及ぼす影響を検討した。また、
市販のノノキシノールヨード製剤の5倍希釈液(ヨウ素濃度0.1%)を用いた
プレディッピングが乳中ヨウ素濃度と乳頭付着細菌数に与える影響を検討した。
2.方法
1)薬液浸漬後の清拭作業における資材及び拭き数が乳頭付着汚れの除去効果に
与える影響
供試乳頭;芽胞添加滅菌スラリーで汚染して風乾
清拭処理;薬液浸漬の有無、清拭資材2水準、拭き数2水準(1、3)
調査項目;薬液浸漬前および清拭作業後の乳頭付着芽胞数
2)ノノキシノールヨード製剤5倍希釈溶液を用いたプレディッピングが乳中ヨウ素濃度
に与える影響
供試頭数と試験期間;一群放牧飼養の泌乳牛24頭、15週間
試験処理;供試溶液(ヨード剤区)と乳頭洗浄液(対照区)
薬液浸漬後の清拭作業;乳頭マッサージ実施、湿った布タオルを使用
乳頭表面と先端部の拭き数はそれぞれ3
調査項目;乳中ヨウ素濃度、清拭作業前後の乳頭付着細菌数
3.成果の概要
1)薬液浸漬後の清拭作業における資材及び拭き数が乳頭付着汚れの除去効果に
与える影響
(1)薬液浸漬後の清拭作業における資材の性状と拭き数は、汚れの物理的な除去に大きな影響を
与え、湿った布タオルは乾燥紙タオルに比較して除去効果が高かった。(表1)。
(2)汚れの残存割合の目標値を500分の1以下に設定すると、薬液浸漬後の清拭作業では湿った
布タオルを使用し拭き数を3とする丁寧な作業が必要である(表1)。
2)ノノキシノールヨード製剤5倍希釈溶液を用いたプレディッピングが乳中ヨウ素濃度に
与える影響
(1)個体乳の乳中ヨウ素濃度は対数正規分布に近似した分布をもち、乳中ヨウ素濃度の中央値は
ヨード剤区で143μg/L、対照区では135μg/Lと近似した値で処理間に有意な差は認められ
なかった(図2)。
(2)採取日と乳牛個体を考慮した乳中ヨウ素濃度の最小二乗法による相乗平均値は、ヨード剤区の
146μg/Lに対して対照区では148μg/Lと近似した値で、ノノキシノールヨード製剤5倍希釈溶液
を用いたプレディッピングは乳中ヨウ素濃度に影響を与えなかった(表2)。
(3)ヨード剤区と対照区における乳頭付着細菌の除去割合は、560分の1と430分の1で有意な差は
みられず、いずれも500分の1前後の近似した値で概ね満足できる細菌除去効果があった。
[成果の具体的数字]
表1 薬液浸漬後の乳頭清拭方法と汚れの除去効果
清拭方法 | 乳頭付着芽胞の残存割合* | |
薬液浸漬-資材-拭き数 | 乳頭側面部 | 乳頭先端部 |
無-乾燥紙タオル-1 | -0.1±0.2(0.8) | − |
有-乾燥紙タオル-1 | -0.8±0.4(0.2) | -0.6±0.4(0.3) |
有-乾燥紙タオル-3 | -1.3±0.6(0.05) | -1.7±0.5(0.02) |
無-湿った布タオル-1 | -0.5±0.3(0.3) | − |
有-湿った布タオル-1 | -1.3±0.6(0.05) | -1.0±0.3(0.1) |
有-湿った布タオル-3 | -3.5±0.7(0.0003) | -3.2±0.8(0.0006) |
図1 試験機寒中の乳中ヨウ素濃度の推移
図2 処理区および農場バルク乳の乳中ヨウ素濃度の中央値
表2 乳中ヨウ素濃度の最小二乗分散分析法による推定値と要因の効果
要因 | 対数平均値±標準誤差(相乗平均値)または 範囲(μg/L) |
要因の効果 | 分散成分割合 |
試験処理 | ヨード剤区;2.165±0.009(146) | p=0.71 | -0.3% |
対 照 区;2.169±0.010(148) | |||
採取日 | 2.058±0.027(114)〜2.268±0.022(185) | p<0.01 | 17% |
乳牛個体 | 2.057±0.021(114)〜2.329±0.021(213) | p<0.01 | 50% |
4.成果の活用面と留意点
1.乳頭清拭方法としてプレディッピングを採用する場合に活用できる。
2.乳頭汚れの著しい場合は、プレディッピング前の予備清拭や薬液の再浸漬と清拭等の
対応が必要である。
3.プレディッピングに使用する薬剤は、搾乳前の使用を認可された薬剤を用法に従って
適切に使用する。
4.清拭用布タオルは毎回の使用後に除菌効果のある洗剤を使用して洗濯し脱水した
状態で保管する。
5.残された問題とその対応
1.付着物除去効果と乳房炎に対する予防効果の関係
2.乳中ヨウ素濃度に対する採取日や個体要因の作用メカニズム