成績概要書（2002年1月作成）
研究課題：とうもろこし(サイレージ用)「ジェレミス」　　　　　　　
担当部署：北見農試、十勝農試、上川農試、道立畜試、北海道農業研究センター
協力分担：
予算区分：受　託
研究期間：1999〜2001年度

１．目　的　　
　サイレージ用とうもろこし外国導入品種の各地域における適応性を検討し、優良品種選定に資する。
　
２. 方　法
　品 種 名：「ジェレミス(Jeremis)」(標準品種「ＤＫ３００」(中生の早))
　組 合 せ：単交配（デント×フリント、構成系統名は不明）
　育 成 者：PAU SEMENCES社（フランス）
　導 入 者：株式会社ゲン・コーポレーション
　　　　　　（平成9年導入、平成10年場外予備検定試験実施）
　登　　録：ＯＥＣＤ（1997）
　
３．結果の概要
1) 熟期：絹糸抽出期は｢ＤＫ300｣より2日早い。収穫時熟度は｢ＤＫ300｣並である。総体の
　　乾物率は｢ＤＫ300｣よりやや低い。熟期は｢ＤＫ300｣と同じ中生の早に属する。
2) 耐倒伏性：｢ＤＫ300｣並である。
3) 発芽および初期生育：発芽期は｢ＤＫ300｣並で、初期生育は｢ＤＫ300｣より優れる。
4) 収量性および乾物特性：乾総重、推定ＴＤＮ収量は｢ＤＫ300｣より多い。乾雌穂重割合は
　　｢ＤＫ300｣より高い。推定乾物中ＴＤＮ割合は｢ＤＫ300｣よりやや高い。
有効雌穂割合は｢ＤＫ300｣並である。
5) 形態特性：稈長及び着雌穂高は｢ＤＫ300｣より高い。
6) 耐病性
　　 すす紋病抵抗性は｢キタユタカ｣より強く、｢ＤＫ300｣よりやや強い。
　　 ごま葉枯病抵抗性は｢キタユタカ｣及び｢ＤＫ300｣並である。
　
　
表１　病害抵抗性特性検定試験における罹病指数(北海道農業研究センター)
品種名 すす紋病 ごま葉枯病
平成10年 平成11年 平成11年 平成12年
ジェレミス 4.7(9.19) 3.7(8.28) 4.7(9.1) 2.7(9.4)
キタユタカ 6.1(9.25） 6.0(9.2) 4.7(9.8) 3.3(9.12)
ＤＫ３００ 4.7(9.25) 4.7(8.28) 4.7(9.1) 2.0(9.12)
　注1) 伝染源は、すす紋病が罹病葉の粉砕懸濁液、ごま葉枯病が麦粒培養した菌の接種による｡
　　　2) 罹病指数は1:無〜9:甚。なお、平成10年の値はElliot＆Jenkinsの指数に基づいて調査した値
　　　からの変換値である｡
　　　3) 括弧内の値は調査月日である。
　
　
表２　生育調査
場所 品種名 発芽 ２） 絹糸 　 ３） ４） 　 着雌 有効雌
期 初期 抽出期 収穫時 倒伏 すす 稈長 穂高 穂割合
(月日) 生育 (月日) 熟度 (％) 紋病 (cm) (cm) (％)
北見
農試		 ジェレミス 6.1 6.2 8.4 黄中 0.6 1.0 240 115 99.4
ＤＫ３００ 6.1 5.0 8.6 黄中 6.7 1.0 221 94 100.0
十勝
農試		 ジェレミス 5.27 5.9 7.31 黄初〜中 0.3 1.7 276 126 98.3
ＤＫ３００ 5.27 4.9 8.2 黄初 0.0 1.7 250 103 99.4
上川
農試		 ジェレミス 5.26 8.0 7.24 黄中〜後 1.9 1.0 255 128 98.2
ＤＫ３００ 5.27 6.4 7.27 黄中 0.5 1.0 230 98 101.7
遠軽町 ジェレミス 6.1 5.5 8.5 糊後 0.0 1.0 257 130 96.1
ＤＫ３００ 6.1 4.5 8.6 糊後 0.0 1.0 230 99 98.8
鹿追町 ジェレミス 5.24 7.0 8.6 糊中 0.0 1.0 248 104 100.0
ＤＫ３００ 5.24 6.3 8.8 黄初 0.0 1.0 232 92 100.0
士別市 ジェレミス 6.11 6.3 8.9 黄初 1.3 1.0 235 111 99
ＤＫ３００ 6.11 5.6 8.10 黄初 1.3 1.0 222 89 96.5
　1)北見、十勝、上川農試が平成11〜13年の3か年平均値、他3市町の現地試験が
　　平成12〜13年の2か年平均値である。
　2) 9:極良〜1:極不良による評点。
　3)折損も含む。
　4) 1:無〜9:甚による評点。
　
　
表３　 収量調査
場所 品種名 　 推定 　 総体 乾雌穂 推定乾物中
乾総重 ＴＤＮ 同左比 乾物率 重割合 ＴＤＮ
(kg/10a) (kg/10a) (％) (％) (％) (％)
北見
農試		 ジェレミス 1638 1202 109 27.9 56.8 73.5
ＤＫ３００ 1518 1102 100 28.1 53.8 72.6
十勝
農試		 ジェレミス 1611 1182 110 26.3 56.5 73.4
ＤＫ３００ 1472 1079 100 26.8 56.5 73.3
上川
農試		 ジェレミス 1917 1419 105 34.8 59.2 74.2
ＤＫ３００ 1837 1347 100 34.5 56.4 73.2
遠軽町 ジェレミス 1393 988 101 23.0 47.6 71.0
ＤＫ３００ 1371 974 100 25.3 47.6 71.0
鹿追町 ジェレミス 1316 930 105 21.3 47.0 70.8
ＤＫ３００ 1268 887 100 22.5 44.0 70.0
士別市 ジェレミス 1551 1109 125 28.8 48.9 71.2
ＤＫ３００ 1256 887 100 30.5 46.0 70.6
注) 推定ＴＤＮの算出は新得方式（推定ＴＤＮ＝乾物茎葉重×0.582＋乾物雌穂重×0.85）による。
　
　
４．成果の活用面と留意点
1) 普及対象地域：道央北部、十勝中部および網走内陸の気象条件の良好な地域。
2) 普及見込面積：平成14年度 120 ha、平成15年度以降 400 ha。
3) 配布しうる種子量：平成14年度 3ｔ、平成15年度以降 10ｔ。
　
５．残された問題とその対応