成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:サイレージ用トウモロコシ新品種候補系統「北交55号」       
担当部署:農研機構・北海道農研・作物開発部・飼料作物育種研
担当者名:濃沼圭一、三木一嘉、榎宏征
協力分担:系適、特検および奨決試験場所
予算区分:交付金
研究期間:

1.目的
 道央および道南地域に適する中生の耐倒伏性・多収品種を育成する。


2.方法
1)育種方法:自殖系統を用いた単交雑一代雑種。

2)育成経過:1995年に「Ho57」を種子親とし、「Ho49」を花粉親として両親系統間の
交配を行い、組合せ能力検定試験および生産力検定予備試験の後、1998年に
「月交580」の系統番号を付した。その後、生産力検定試験、系統適応性検定試験
および病害抵抗性の特性検定試験で有望と認められ、1999年に「北交55号」の
系統名を付した。さらに、これらの試験を継続するとともに奨励品種決定試験で
その優秀性を確認した。

3.成果の概要
1)熟期は中生の中に属する。絹糸抽出期は「3790」より1日遅く「3845」並で、
収穫時の乾物率は「3790」と同程度である。発芽期は「3790」並で「3845」より
1日遅い。初期生育は「3790」より優れ「3845」並である。稈長は「3790」より高く
「3845」よりやや高い。着雌穂高は「3790」および「3845」より高い(表1)。

2)乾総重および推定TDN収量は平均で「3790」よりそれぞれ6%および5%高く、
「3845」より3%および2%高い。乾雌穂重割合は「3790」および「3845」よりやや低い(表1、2)。

3)耐倒伏性は「3790」および「3845」より強い(図1)。

4)すす紋病抵抗性は「中」で、「3790」および「3845」より弱いが「キタユタカ」よりやや強い。
ごま葉枯病抵抗性は「中」で、「3790」より弱く「3845」並で「キタユタカ」より強い。
黒穂病抵抗性は「3790」並で「3845」より強い(表1)。
登熟後期の下葉の枯上りは「3790」より多く「3845」よりやや多いが、
収量および茎葉消化性への影響はない。

5)雌雄畦比3:1での採種量は38kg/a程度である。採種栽培では花粉親を3〜4週間晩播
することにより両親の開花期が合致する。


表1 「北交55号」の特性概要1)
形  質 北交55号 3790 3845 キタユタカ
絹糸抽出期 (月日) 8. 4 8. 3 8. 4
発芽期 (月日) 2) 6. 1 6. 1 5.31
初期生育(1〜9)3) 7.6 6.7 7.4
稈長 (cm) 277 233 266
着雌穂高 (cm) 124 115 115
乾総重 (kg/a) 3) 181.8 (106) 172.2 (100) 176.4 (102)
推定TDN収量 (kg/a) 4,5) 130.8 (105) 124.9 (100) 128.2 (103)
乾雌穂重割合 (%) 51.3 53.6 53.8
黒穂病個体率 (%) 6) 1.0 0.9 3.8
すす紋病罹病程度(1〜9)7) 4.9 3.4 3.5 5.4
ごま葉枯病罹病程度(1〜9)7) 4.4 3.7 4.3 5.2
 1) 道央および道南地域における1997〜2001年の試験場3場所と現地4場所、延べ20試験の平均.
 ただし、すす紋病およびごま葉枯病罹病程度は1998〜2001年の育成地における接種検定試験の平均
 2) 延べ19試験の平均
 3) 1:極不良〜9:極良の評点
 4) ( ) 内は対「3790」比(%)
 5) 推定TDN収量 = 乾茎葉重×0.582 + 乾雌穂重×0.85
 6) 品種・系統間差異が認められた試験の平均 7) 1:無〜9:甚の評点



 図1 「北交55号」の耐倒伏性
  注:1998〜2001年の7場所、延べ15試験での倒伏個体率の平均
  LSD.05は倒伏と折損の合計値についての5%水準での最小有意差


表2 「北交55号」の場所別の推定TDN収量(kg/a)1)
品種・系統名 試 験 場 現   地 平均
北農研 上川農試 畜試滝川 伊達市 鵡川町 恵庭市 八雲町
北交55号 134.4
(106)
145.8
(100)
123.8
(102)
132.6
(103)
120.6
(107)
121.5
(121)
121.0
(100)
130.8
(105)
3790 127.3
(100)
145.5
(100)
121.5
(100)
128.6
(100)
112.2
(100)
100.2
(100)
121.4
(100)
124.9
(100)
3845 131.8
(104)
147.9
(102)
122.8
(101)
135.5
(105)
112.6
(101)
103.7
(104)
125.6
(104)
128.2
(103)
試験年次 97 - 01 98 - 01 00, 01 00, 01 99 - 01 99, 00 00, 01  
 1) 推定TDN収量 = 乾茎葉重×0.582 + 乾雌穂重×0.85 、( )内は対「3790」比(%)


4.成果の活用面と留意点
1)普及対象地域は道央(北部を除く)および道南地域。普及見込み面積は1,200ha。

2)密植適性は比較的高いが、栽植密度はアール当たり680〜800本程度とする。

5.残された問題とその対応
早生品種を重点に、適応地域別の安定多収品種を育成する。