成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:牛の敷料および牛ふんの堆肥化副資材としての石炭灰の利用       
担当部署:道畜試 環境草地部 畜産環境科,家畜生産部 肉牛飼養科
協力分担:な し
予算区分:受 託
研究期間:2000年度

1.目 的
 ストーカーボイラーより排出された石炭灰を用い、オガクズに対する石炭灰の混合比率
を変え、牛の敷料および牛ふんの堆肥化副資材としての利用性、ならびに、石炭灰の
臭気抑制能について検討する。

2.方 法
1)肥育牛への敷料利用試験:黒毛和種去勢肥育牛5〜6頭ずつ飼養している牛房4区画に、
オガクズ単独の0%区およびオガクズの20、40、60%(容積比)を石炭灰で置き換えた区を
配置し、4×4ラテン方格法(1期2週間)で試験を行った。
敷料の水分含量、家畜の飼料摂取量・行動等を調査した。

2)牛ふん堆肥化試験:泌乳牛ふんに対しオガクズを水分が約70%となるように混合し(0%区)、
このオガクズ容積の10、30、50%(各10、30、50%区)を石炭灰で置き換えそれぞれ牛ふんと
混合した。混合物各0.54m3を断熱材製の箱型容器(底面80×80×深さ85cm)に積め堆肥化した。
試験は温暖期(7/25開始)と寒冷期(2/28開始)の2回おこなった。

3)臭気抑制能の検討:乳牛ふん尿1500gに、オガクズ、石炭灰、およびオガクズ・石炭灰混合物
(容積比で1:1)を各3L混合し、各混合物をビニール袋に入れ20℃で5時間後に、内部空気中の
アンモニア等の悪臭成分濃度を測定した。対照としてふん尿のみの区を設けた。

3.成果の概要
1)-1 オガクズに石炭灰を混合した場合、石炭灰の混合比率が高まるにしたがって容水量は
急激に低下した(図1)。

1)-2 オガクズに対する石炭灰の混合は肥育牛の行動および飼料摂取量には影響を与えなかった。

2)-1 堆肥化試験に用いた石炭灰はpH9.1、水分5〜15%、灰分85%、全炭素15%、全窒素0.2%、
容積重0.8〜0.9(t/m3)であった(表1)。

2)-2 開始時の各混合物の容積重は、0,10,30および50%区でそれぞれ約、0.37、0.40、0.49および
0.55t/m3であった。

2)-3 温暖期の堆肥化試験において、10%および30%区は0%区と同等の品温推移・有機物分解を
示したが、50%区では品温上昇および有機物分解がいずれも抑制された(図2)。

2)-4 寒冷期の堆肥化試験は、温暖期と比較して各区とも品温上昇は抑制され、堆肥化に長期間を
要した(図2)。最高温度は石炭灰の混合比率が高まるにつれ低下したが、品温の積算値は
0,10および30%区で同程度の値を示し、それらの区は有機物分解も同程度であった。50%区では
品温上昇および有機物分解がいずれも抑制された。

3)-1 敷料として利用した場合、石炭灰はオガクズと同程度のアンモニア揮散の低減効果が認められた(表2)。

以上の結果、石炭灰はオガクズ等と混合して牛の敷料や牛ふんの堆肥化副資材として利用可能
であることが明らかとなった。多量の石炭灰の混合は発酵を抑制するため、その混合比率は
30%(容積比)を上限として利用することが望ましい。また、石炭灰はオガクズと同程度の
アンモニア揮散の低減効果が確認された。






4.成果の活用面と留意点
1)ストーカーボイラーより排出された石炭灰を用いた。

2)石炭灰は、敷料としてオガクズを用いている牛舎で、オガクズの増量材として利用できる。

3)石炭灰をオガクズの増量材として用いる場合、その混合比率は30%(容積比)を上限とする。

4)石炭灰を混合した堆肥の圃場への施用効果は検討していないが、石炭灰は一般的にホウ素を
多く含むため、その含量を確認し、土壌診断値と併せて作物に応じて施用量を決定する。

5)利用する石炭灰は、金属等を含む産業廃棄物に関わる判定基準をみたすものとする。


5.残された問題点とその対応
石炭灰の施用が作物生育に及ぼす影響