成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:ホタテ貝殻および乾燥ヒトデの土壌改良材特性と樹木苗畑における利用       
担当部署:天北農試研究部草地環境科、林業試験場道北支場
       
協力分担:
予算区分:道単(共同研究)
研究期間:1999〜2001年度

1.目的

 ホタテ貝殻および乾燥ヒトデを樹木苗畑および緑化を前提とした脊悪地で利用するため、
これらの土壌改良材特性を化学性について解明し、これに基づいた適切な施用量を設定する。

2.方法

1)試験場所:道立林業試験場道北支場内苗畑(中川町、褐色低地土)。

2)供試資材:
試料名 性状 粒径 備考 容積重
(g/100ml)
pH EC
(mS/cm)
T-N
(%)
CaO
(%)
K2O
(%)
P2O5
(%)
Cd
(mg/kg)
ホタテ
貝殻
A 粗砕き 50mm角以下 S漁協製造 97 9.11 0.23 0.09 50.2 0 0.08 -
B 中粒 15mm角以下 市販 111 9.23 0.20 0.06 55.7 0 0.01 -
C 粉末   市販 148 8.82 0.13 0.06 55.4 0.01 0 -
ヒトデ D 粗砕き   S漁協製造 71 6.9 13.3 3.4 26.4 0.44 0.18 4.5

3)処理:
 ホタテ貝殻施用−試料Aを土壌に対し体積比0〜40%(0〜60t/10a相当)を全面全層に混和、
             および試料B、Cを同じく0〜40%表面施用し混和した2系列。
 乾燥ヒトデ施用−試料Dを0〜40%(0〜43t/10a相当)を全面全層に混和、ならびに0〜1%
             (0〜1050kg/10a相当)を耕耘・未耕耘土壌に施用した3系列。

4)供試樹種:アカエゾマツ、ハルニレ、シラカンバ、ナナカマド、ハマナス

5)測定項目:土壌のpH、EC、交換性塩基、乾燥ヒトデ施用系列では無機態窒素、
         可溶性(0.1M-HCl抽出)および溶出(1:5水抽出)カドミウム。
         樹木の生存率および植栽時からの樹高伸長量。

3.成果の概要

1)ホタテ貝殻はアルカリ分(CaO換算)が50〜56%であり、粒径により効果の発現が異なるものの、
炭酸カルシウムと同等の土壌pH改善効果が期待できる。なお、pH5と低い条件の褐色低地土や
褐色森林土では、体積比5〜10%(7.5〜15t/10aに相当)でpH6.5〜7に改善される(図1)。

2)本試験で用いた乾燥ヒトデの窒素無機化率は30℃、4週間培養で70%と高く、pH上昇効果も併せ持った。

3)乾燥ヒトデ5〜40%施用区では、土壌ECが急激に上昇することにより、4樹種すべての生存率が
著しく低下し、とくに20、40%施用区では全樹種が枯死した。しかしながら、施用1年後に土壌ECは
無施用区と同程度に低下し、その時点で樹木を再植栽すると各施用区の樹木生存率は80〜100%と高く、
伸長も促進された(図2、3)。

4)乾燥ヒトデ1%施用区ではアカエゾマツの生存率が低下する場合が認められたが、ナナカマドは
100%の生存率であった。これに対して0.5%施用区では、アカエゾマツ、ナナカマドともに生存率は
ほとんど低下せず、むしろ伸長量は増加した。これは、0.5%の施用量ではECが生育に影響を与えるほど
上昇せず、pHの改善や肥料養分の補給が生育に好影響を及ぼしたものと推察された(図4)。

5)乾燥ヒトデ0.5、1%施用区では、溶出カドミウムは土壌環境基準値0.01mg/lを著しく下回っていた(図4)。

6)以上から、ホタテ貝殻は土壌体積比5〜10%(7.5〜15t/10a)、乾燥ヒトデは土壌体積比0.5%
(現物450kg/10a程度、15kgN/10a)以下の施用量が妥当であった。



図1 ホタテ貝殻施用による土壌pHの推移



図2 乾燥ヒトデ0〜40%施用区における樹木生存率(H11年10月)



図3 乾燥ヒトデ0〜40%施用区(H12年再植樹)における樹木生存率(H12年10月)、樹高伸長量(H13年10月)および土壌ECの推移



図4 乾燥ヒトデ0〜1%施用区(耕耘土壌)における樹木生存率(H12年10月)、樹高伸長量(H13年10月)および土壌EC、溶出Cdの推移


4.成果の活用面と留意点

1)本試験に用いたホタテ貝殻は洗浄後破砕したもの、乾燥ヒトデは700℃で熱風乾燥したものである。

2)樹木苗畑および緑化を目的とする脊悪地に適用する。

3)乾燥ヒトデはカドミウム含量が高く、窒素の無機化も起こりやすいので、環境に影響を及ぼす
これらのモニタリングを考慮する。当面は、汚泥肥料と同様に連用しない。

4)本試験で用いた土壌は褐色低地土及び褐色森林土である。


5.残された問題とその対応

1)樹木の栽植密度の違いに応じた対応。

2)土壌の種類の違いに応じた対応。

3)一般農耕地への適用。