成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:気象・土壌環境評価に基づく農地利用計画策定のための指針       
担当部署:道南農試・技術体系化チーム
協力分担:日本気象協会函館支店、渡島北部・中部地区農業改良普及センター
       砂原町、JA砂原町
予算区分:受託
研究期間:1999〜2001年度

1.目 的
 駒ヶ岳山麓を例に、作物生産性を規制する気象・土壌因子を区分して気象・土壌評価マップを作成し、
適作物選定等の土地利用計画を策定するための指針を作成する。
 

2.方 法
 1)気象環境関連調査:①現地の気象概況。②作物の生育環境評価基準設定(現地の作物生育経過、
各作物の道内主産地における温度環境、霧発生による気温の低下)③気象条件からみた作付け適地
マップの作成(小麦生産と気象条件、地域別作付け適性評価)

 2)土壌環境関連調査:①現地土壌調査(土壌断面調査、土壌のメッシュ区分調査、土壌凍結及び
ガリ発生調査)②土壌環境の生産阻害要因評価基準設定(土地条件3、土壌物理性2、保肥力3、化学性9)
③農業生産力評価システム開発(土壌要因別マップ、作付け適地判定のためのマップ)④地域別土壌特性
評価(作物生産阻害要因の地域別特性、作物栽培適地区分)⑤地域別生産力検定試験(現地5地域、農試1)

 3)気象・土壌総合評価に基づく適作物選定と土壌改良目標

 4)土壌改良のための参考資料(土壌診断結果の表示、酸度矯正石灰量、有機物資源量)
 

3.成果の概要
①現地の気象データから得られた250mメッシュ気候図と、各作物の主産地における積算気温等を
もとにした生育環境評価基準から、作付け適地マップを作成した(図1)。

②作付け適地マップによる区分から、砂原町西部では畑作、果樹栽培が「適〜ほぼ適」、東部では
「不適」と評価された。また、西部でも標高の高いところでは生育がやや不安 定で,小麦生産は
成熟期前後の気象条件からみて安定生産が難しいことを示した(表1)。

③土壌環境のメッシュデータベースと作物生育阻害要因の評価基準から,各地点の要因別阻害強度と
作付け適地区分を評価するための農業生産力評価システムを開発した(図2)。

④駒ヶ岳山麓北部の農耕地は有効土層が浅く作土の礫含量が多いことから,物理性の改良が
最も大きな課題である。また,腐植に乏しく,低pHで,塩基類や微量要素に不足しており,東部では
土地条件や土壌の物理.化学性に係わる生産性阻害強度も大きかった(表2)。

⑤土壌環境からみた畑作適地はほぼ砂原町西部に限られた。その適地面積割合は砂原町西部で
畑作全般60%、いも36%、アスパラガス35%であった。一方、東部では畑作適地が15%で、草地として
適合する割合は60%であった(表3)。

⑥土壌の違いが牧草生産に及ぼす影響をみたところ、黒色火山性土に対する現地土壌の生産力指数の
平均値は67〜80で、生産力が劣ることを示した。

⑦気象・土壌環境を総合的にみると、砂原町西部では畑作や果樹栽培がほぼ適しており、
東部は草地主体の土地利用が適合する。畑作、果樹栽培には一部地域で防風対策や潅水が
有効とみられる。また、土壌改良は物理性が主体で、作土層の除礫とともに有機物施用、酸性矯正、
施肥改善が有効である(表4)。なお、現地で土壌改良を行う際に活用するための、地点ごとの
土壌診断図(図3)、酸性矯正のための石灰緩衝曲線、町内で発生する有機物資源量を示した(参考資料)。 



図-1 気象環境による作付け適地マップ


表-1 気象マップによる作付け適性指針


表-2 土壌因子の作物生育阻害強度



図-2 農業生産力評価システム表示例


表-3 土壌環境評価による作付け適地割合(%)



図-3 土壌診断結果の図示(赤:基準値,青:現地)


表-4 気象・土壌総合評価による農地利用区分と改良目標
 

4.成果の活用面と留意点
 ①適作物選定等土地利用計画が策定でき、地域農業振興計画に活用できる。
 ②気象、土壌環境の評価区分は、砂原町の作付け実態と気象・土壌条件を基準にした。
 ③農業生産力評価システム活用に当たっては、SIS Map Modeller Ver5.0が必要である。
 

5.残された問題とその対応
 ①地域の有機物資源活用と環境問題。