成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:無人へリコプタ散布によるてんさい主要病害虫の防除効果       
担当部署:北海道病害虫防除所、農林水産航空協会
       
協力分担:
予算区分:受託(てんさい協会)
研究期間:1999〜2001年度

1.目的
 畑作農家の経営面積の拡大、老齢化などに伴い従来の地上散布に比べ省力的かつ
効率的な病害虫防除法が求められている。このため、大型無人ヘリコプタによりてんさいの
褐斑病とヨトウガを対象に少量・高濃度散布の防除効果と薬剤の付着特性について検討する。


2.方法
1)供試機:産業用無人ヘリコプタRPH2
2)供試薬剤:殺菌剤 マンゼブ水和剤、テトラコナゾール乳剤
         殺虫剤 アセフェート水和剤、エトフェンプロックスマイクロカプセル剤
3)散布時期および場所、品種
(1)平成11年度(千歳市中央北沼)品種「ユーデン」
褐斑病 空散:7/21,8/5,8/19,9/3 地上:7/21,8/7,8/19,9/3
ヨトウガ(第一) 空散:6/28 地上:6/29
(第二) 空散:8/19,9/3 地上:8/19,9/3
(2)平成12年度(千歳市中央長都)品種「スコーネ」
褐斑病 空散:7/21,8/4,8/14,8/24,9/5 地上:7/21,8/4,8/12,8/24,9/5
ヨトウガ(第一) 空散:6/26 地上:6/26
(第二) 空散:8/14,8/24 地上:8/12,8/24
(3)平成13年度(千歳市根志越)品種「フルーデン」
褐斑病 空散:8/10,8/21,9/3注) 地上:7/21,7/31,8/11,8/21,9/4
 注)空散区も7/21,7/31に褐斑病防除のため地上散布を行った。
ヨトウガ(第一) 空散:6/22 地上:6/22
(第二) 空散:8/21,9/3 地上:8/21,9/4

4)調査項目:気象条件、付着精度、飛行諸元、病害虫の発生状況ならびに防除効果


3.成果の概要
1)無人ヘリコプタによる散布による水平分布調査ではすべての調査地点で落下が認められ、
散布は均一であった。上位葉と中位葉の葉表の付着量は同程度で、下位葉では上位葉の
半分程度となった。葉裏では上位葉から下位葉になるにつれ付着量は減少傾向を示した(表1)。

2)散布液量と付着程度には関係が認められ、散布液量を多くすると散布精度の向上に
つながると考えられる。

3)無人ヘリコプタによる褐斑病の防除は、中発生の場合は、マンゼブ水和剤8倍16L/ha、
テトラコナゾール乳剤の24倍16L/haでは、地上散布区とほぼ同程度の効果があったが、
甚発生の場合は効果が劣った。

4)無人ヘリコプタによるヨトウガの防除はアセフェート水和剤、エトフェンプロックスマイクロカプセル剤
とも1ha当たり8L(8倍希釈)〜24L(24倍希釈)で、対照の地上散布区と比べほぼ同等の防除効果を
示した。ただし、最終散布2週間後にさらに被害が伸びるような場合には追加防除が必要と考えられた。


表1 平成11年 化学分析による付着量総括表(上段:分析値μg/cm2、下段:変動係数CV%)
散布月日 試験区 水平分布 上位葉表 上位葉裏 中位葉表 中位葉裏 下位葉表 下位葉裏 分析対象
6/28 1区 3.36 2.98 1.41         アセフェート
計画量:5μg/cm2
37 56 85        
2区 1.11 1.53 0.40         エトフェンプロックス
計画量:2μg/cm2
62 55 61        
7/21 1区 0.75 0.37 0.39     0.24 0.04 エトフェンプロックス
計画量:2μg/cm2
44 28 74     96 72
2区 4.06 3.08 0.53     1.45 0.08
29 38 41     40 56
8/19 1区 1.29     1.57 0.18     アセフェート
計画量:5μg/cm2
74     92 128    
2区 2.44     1.95 0.33    
56     65 98    
9/3 1区 4.19 3.64 1.22         アセフェート
計画量:5μg/cm2
64 56 126        
2区 4.54 2.96 1.61        
58 55 95        
試験区1:アセフェート→マンゼブエトフェンプロックス→テトラコナゾール→マンゼブ・アセフェート→テトラコナゾール・アセフェート
試験区2:エトフェンプロックス→マンゼブエトフェンプロックス→マンゼブ→テトラコナゾール・アセフェート→テトラコナゾール・アセフェート


表2 褐斑病に対する防除効果(平成13年 中発生)
供試薬剤 散布法 希釈倍数
散布量(/ha)
発病度(発病株率) 薬害
8/10 8/17 8/30 9/10 9/18
マンゼブW 空散 8倍・16L 0.0(00%) 0.0(00%) 00.0(00%) 04.8(024.0%) 16.8(084.0%) -
地上 500倍・1000L 0.8(04.0%) 2.0(08.0%) 03.2(14.0%) 10.4(050.0%) 18.4(090.0%) -
テトラコナゾールEC 空散 24倍・16L 0.8(04.0%) 1.6(06.0%) 06.0(26.0%) 09.6(042.0%) 21.2(100%) -
地上 1500倍・1000L 0.0(00%) 0.0(00%) 04.8(24.0%) 06.4(032.0%) 18.8(094.0%) -
無散布1   0.0(00%) 2.8(14.0%) 10.0(50.0%) 18.0(090.0%) 27.2(100%)  
無散布2 2.0(10.0%) 5.2(26.0%) 18.0(90.0%) 28.8(100%) 36.8(100%)
散布月日は空散:8/10,21,9/3。地上:8/11,21,9/4。褐斑病は7/17時点では未発生であった。
注)無散布1はマンゼブ水和剤(7/21)、カスガマイシン・銅水和剤(7/31)を地上散布し、それ以降の無人ヘリでの防除のみ行っていない。


表3 ヨトウガに対する防除効果(平成13年第2回目 中発生)
供試薬剤 散布法 散布月日 希釈倍数
(散布量L/ha)
食害程度 薬害
8/21 8/29 9/3 9/6 9/13 9/18
アセフェートW 空散 8/21 16 12.3 14.7 13.3 12.0 10.3 14.3 -
9/3 (16)   (90.2) (63.3) (60.0) (30.9) (31.1)
地上 8/21 1000 13.0 13.0 17.5 08.3 10.7 10.3 -
9/4 (1000)   (79.8) (57.1) (41.5) (32.1) (22.4)
エトフェンプロックスMC 空散 8/21 16 16.3 18.7 19.3 12.0 12.7 13.3 -
9/3 (16)   (112.0) (91.9) (60.0) (41.9) (28.9)
エトフェンプロックスEC 地上 8/21 1000 10.7 14.0 16.7 16.7 14.3 18.0 -
9/4 (1000)   (85.9) (83.5) (83.5) (42.9) (39.1)
無処理   8.3 16.3 21.0 21.0 33.3 46.0  
注)( )内は無処理比


4.成果の活用面と留意点
1)てんさいのヨトウガに対して無人ヘリコプタによる防除は有効である。
2)ただし、散布後さらに被害が進むときには追加防除が必要である。


5.残された問題点とその対応
1)農薬登録の促進