成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:アブラムシ接種によるインゲン黄化病抵抗性検定法       
担当部署:十勝農試生産研究部病虫科,作物研究部小豆菜豆科
協力分担:
予算区分:道費(豆基)
研究期間:1997〜2001年度

1.目 的
 金時類のインゲン黄化病抵抗性系統の選抜を行うにあたり、発生量が自然発生頼りで検定結果が
不安定となりやすい検定ほを補う高精度・効率的な抵抗性検定法を確立する。
 
2.方 法
(1)インゲン黄化病のほ場における検定
 ほ場検定は鹿追町多発ほ場、十勝農試多発ほ場で実施し、菜豆各品種・系統の自然感染による
発病個体率を調査した。
(2)保毒アブラムシの幼苗接種による抵抗性検定法の検討
 菜豆を素焼鉢あるいは紙ポットには種し、初生葉展開期に達した幼苗を接種検定に供試した。
接種源としてジャガイモヒゲナガアブラムシおよびダイズわい化ウイルス黄化系統を用い、接種後は
温室あるいはほ場で生育させ、発病個体率を調査した。
 
3.成果の概要
(1)接種検定の手順として、素焼鉢密播による室内検定法と紙ポットは種によるほ場移植検定法を
考案した(表1)。前者は、は種後およそ2〜2.5ヶ月で判定が可能である。冬季間の実施が可能で
あるため、交配系統後期世代の検定に利用することができる。一方、後者は、は種後およそ
2〜3.5ヶ月で判定が可能である。大量の苗を検定する場合に効率的なので、交配系統中〜後期世代の
検定に利用できる。
(2)感染個体の判別法は、見とりによる発病調査が適当と考えられた。ただし、品種・系統によって
病徴に差があるため、調査の際には注意が必要であった。
(3)抵抗性の指標となる品種・系統として「大正金時」(弱)「北海金時」(やや弱)「十系B103号」(中)
「十系B316号」(中)「姫手亡」(やや強)「北原紅長」(強)を選定した。接種検定における指標品種・系統の
発病個体率順列は検定ほの結果とおおよそ類似性がみられた(図1)。ただし、指標品種「北原紅長」(強)と
「姫手亡」(やや強)の発病個体率順位が逆転する事例が見られ、実態を反映しなかった。接種検定法は、
検定ほにおける抵抗性やや強〜強の基準に関して問題はあるが有効と考えられた。
(4)接種検定における評価基準(暫定)を設定した(表2,図2)。ただし本評価基準による判定区分は改善の
余地があるため、当面は暫定とし、弾力的に運用する必要がある。
 
 
 表1 接種検定法における検定植物の準備とアブラムシの増殖・接種過程
 
 

図1 交配系統の発病個体率と順列(左:接種検定,右:平成13年検定ほ)
 
 

図2 接種検定における評価基準(暫定)を用いた交配系統の判定結果(平成13年)
 
 
表2 接種検定における評価基準(暫定)
判定指数*判定
0〜 30
31〜 80
81〜100
  *判定指数=(対象系統の発病個体率/大正金時の発病個体率)×100
 
 
4.成果の活用面と留意点
1.本接種検定法は、育種場面においてインゲン黄化病抵抗性系統の選抜に活用する。
 
5.残された問題とその対応
1.接種検定法の精度向上と簡略化
2.抵抗性機作の解明
3.抵抗性機作に基づく簡易な接種検定手法の開発