成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:ゴボウ黒条病の発生生態の解明と防除対策       
担当部署:道立花・野菜技術センター 研究部 病虫科
       道立十勝農業試験場  生産研究部 病虫科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:1998〜2001年度

1.目的
 ごぼうの黒条症状は古くから発生していた病害であるがその病原菌については
未解明であった。そこで,本病菌の同定を行うとともに,病原菌の諸性質,発生生態
および本病による被害状況を解析し,農薬等を用いた効果的な防除対策を構築する。


2.方法
1)全道における本病の発生実態調査
2)病原菌の分離・同定と培養性質,病原性等の調査
3)発病に影響を及ぼす気象条件(温度,湿度,葉面の濡れ時間等)と
 ほ場環境(播種日,うね幅,連輪作),ごぼうの感受性(葉齢,品種)および
 伝染経路(他植物,種子伝染)などについて調査
4)本病の発病とごぼう収量への被害状況を解析
5)有効薬剤の選抜およびほ場における効果試験,効果的散布時期の検討


3.成果の概要
1)全道における発生実態を調査したところ,全ほ場で発生し,常発する病害であった。

2)病原菌はその形態および諸性質からItersonilia perplexansと同定された。
 本病菌はごぼうの茎葉のみに黒条症状を示し,きくの花弁にも花枯症状を示す(表−1)。
 ごぼうの根には発病しない。

3)発病の好適条件は温度が10〜20℃,葉面の濡れ時間が15〜20℃で24時間以上,
 胞子形成湿度が95%以上であった。また,発生しやすい栽培条件は播種時期が早く,
 うね幅が狭く,連作ほ場であった(表−2)。ごぼう葉の感受性は出葉後日数が小さいほど
 感受性が高かった。本病の発生が少ない品種はなかった。他植物から分離された
 Itersonilia菌はいずれも病原性を示さなかった。市販種子からは病原菌は分離されなかったが,
 人工的に花部に接種した株のごぼう種子から接種菌が分離され,幼苗に発病を起こした。

4)葉柄の折損処理を行った結果,総収量および規格内収量を減少させ,折損程度が
 大きいほど,時期が早いほど,顕著な減収に結びついた。年次間では9月の低温が
 収量減を助長させた。実際の発病による発病度や葉の枯死・折れ率と収量で有意な
 相関が得られた。発病度と総収量はy=−0.0965x2−4.7724x+2551.5(R2=0.6706)で,
 発病度と枯死・折れ率はy=−0.0103x2−0.192x(R2=0.9717)の関係式で示される(図−1,2)。
 発病度20〜30は枯死・折れ率で0.3〜3.5%に相当する。黒条病の被害を確実に防ぐには
 茎葉の枯死・折れを防ぐことが重要である。

5)本病に有効な薬剤はフルアジナム水和剤の1000倍およびテブコナゾール水和剤Fの3000倍で,
 初発直後からの2回散布の効果が高かった。フルアジナム水和剤は本病に農薬登録を
 有する(1000倍,茎葉散布,収穫21日前まで,3回以内)(表−3,4)。

6)本病の防除は,ごぼうの茎葉でうね間が覆われる時期から本病のほ場観察を開始し,
 初発を確認後,すみやかにフルアジナム水和剤を10日間隔で2回散布する方法である(図−3)。





図-1 発病度と総収量との関係(2001年,十勝農試)



図-2 発病度と枯死・折れ率との関係(2000〜2001年,十勝農試)





4.成果の活用面と留意点
1)本成果はゴボウ黒条病の防除対策に活用する。
2)テブコナゾール水和剤Fは本病に対して未登録である。


5.残された問題点とその対応
1)感染機作の解明
2)防除要否を判断する基準
3)未登録農薬の登録促進