成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:高所作業台車利用および低樹高化によるリンゴ栽培の軽労化対策       
担当部署:中央農試作物開発部果樹科
       
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:1997年〜2001年度

 
1.目的
 りんごの主要作業における高所作業台車の効率的な利用法や作業負担の軽減、および
既存樹低樹高化による作業能率や作業負担の軽減効果を検討し、りんご栽培の軽労化を図る。
 
2.方法
 I  高所作業台車利用による主要作業の軽労化
   1 脚立作業と台車利用作業との比較:高所作業台車区、脚立区(対照)
   2 樹形改造による高所作業台車の効率的利用
   台車利用・改造樹形区(以下、台車・改造:台車を利用しやすいように樹形を改造、作業台車を利用)、
   台車利用・慣行樹形区(以下、台車・慣行:慣行樹で作業台車を利用、対照)。
 
 II 既存樹の低樹高化による主要作業の軽労化
 
 
3.結果の概要
 I  高所作業台車利用による主要作業の軽労化
(1)高所作業台車を利用することで脚立作業に比べ作業時の心拍増加率が減少し、身体的負担が
軽減された(表1)。しかし作業能率は脚立作業に比べて改善されない場合もあり、慣行樹形の枝の
配置が作業台車の効率的運用を妨げていると考えられた。
(2)樹形改造を行うことで作業台車を効率的に運用でき、台車の移動時間の短縮、作業時間の短縮、
投下労働量の減少が見られ、作業能率が改善された(図1、表2、表3)。
(3)樹形改造による大幅な減収、果実品質に対する影響は少なく(表4)、また樹形改造に要する時間も
大きな負担にはならなかった(表5)。
(4)以上の結果から高所作業台車を利用する際には高所作業台車利用に適した樹形に改造する
ことが望ましい。
 II 既存樹の低樹高化による管理・収穫作業の軽労化
(1)樹高を低くすると慣行樹に比べ作業時間は短縮され、投下労働量も減少し作業能率は改善された
(図2、表6)。また脚立上での作業姿勢が改善され(表7)、脚立作業の割合も減少し(表8)、作業強度、
安全性の面からも改善が図られると考えられた。 
(2)低樹高化に伴う減収、および本道のりんご産地の積雪深を考慮すれば低樹高化は2.3m程度が
よいと考えられた(表6)。この場合、割合は減るが脚立作業が必要になり、作業能率を更に改善する
には使用する脚立について検討する必要があると考えられた。
(3)木製脚立に比べて軽量で高さが低いアルミ製三脚を用いたところ、作業時間が短縮され、
投下労働量も減少し、作業能率が改善された(表9)。
 

図1:台車利用に適した樹形改造
 

図2:既存樹の低樹高化(ハックナイン)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4 成果の活用面と留意点
(1)主幹形のりんごわい化樹に適用する。
(2)低樹高化処理は減収を伴う。
(3)低樹高化の処置を行う場合、「ハックナイン」のように樹勢が強い品種では、主幹を切り下げず、
設定した高さより上の枝を剪去する。
 
 
5 残された問題とその対応
 新植樹の低樹高化樹形の開発