成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:水稲湛水直播栽培におけるレーザ均平機を用いたほ場均平化       
担当部署:中央農試 農業環境部 環境基盤科、中央農試 生産システム部 機械科
協力分担:
予算区分:国費補助
研究期間:1999〜2001年度

1.目 的
 水田の均平作業は従来代かき段階で行われてきたが、近年、作業労力の軽減と均平精度の
向上に有用なレーザ均平機の利用が増加している。
 代かき作業を行わない水稲乾田直播栽培では、既にレーザ均平機を導入した作業体系が
確立し、その作業効率や作業計画支援技術が提示されている。
 一方、湛水直播落水出芽法による栽培では代かきが必要となるが、毎年の均平作業の
必要性については検討されていない。また、本栽培法における均平度と水稲の生育収量との
関連性についても未整理である。このため、今後の省力的な作業体系の確立に向けて、
まずレーザ均平機による均平作業の作業能率、作業後の均平度について検討を行い、
同時に水稲生育の均一性に与える影響を明らかにしようとした。
 
2.方 法
(1)試験地:中央農試岩見沢試験地(延べ3ほ場)、北村(2ほ場)、長沼町
(2)均平施工条件:S社製トラクタ直装式レーザレベラ(作業幅4または5m)で春施工
(3)調査項目:以下の項目を、試験地、年度によって取捨選択
  均平機の作業性、施工前後の均平度、湛水直播水稲の生育収量、土壌特性分布
(4)調査方法:各ほ場内に5または10mメッシュを設定し、各点で標高測量と水稲調査を実施。
  トラクタの走行軌跡はGPSにより追尾。
 
3.成果の概要
(1)レーザ均平機を用いた一般的な均平作業では、均平精度(標準偏差)0.6cm程度の向上が
期待できる。またその持続性もよかった。(表1)
(2)面積が比較的小さく高低分布が偏在しないほ場では、レーザ均平機の作業能率は40a/h
程度であった。(表2)
(3)長沼の大区画ほ場では、長辺方向に最大16cmの高低差があり、北村の2〜4倍の運土仕事量
を要した。これに伴い、作業能率も19a/hと低くなった(表1、表2)。
(4)水稲の苗立ち数は、北村と岩見沢の試験ほ場において概ね200本/㎡以上と充分量を確保し、
比高±3cmの範囲内で水深や跡地比高との関係は見られなかった。(図1)
(5)このため苗立ち率低下を根拠とする均平精度目標値の設定は困難であったが、乾田直播の
目標値(高低差6cm、均平精度1.2cm)より粗い均平でも支障はないと思われた。
(6)収穫期の総重あるいはもみ重は、跡地の比高が平均値より離れるに伴ってやや低下するような
傾向が見られた。これは、土壌の窒素肥沃度変化の影響と思われた(図2)
(7)現地試験の結果から、高低差6cm以内、均平精度(標準偏差)2.0cm以下のほ場では水稲生育に
顕著な影響がないと判断されるので、不等沈下が顕著でなく、水稲を連作している場合には、
毎年のレーザ均平は不要と推定された。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
(1)本成績は、水稲湛水直播落水出芽法に適用する。
(2)大型ほ場で長辺方向の一端が沈下しているような場合は、作業能率が低くなるので、
レーザ均平機による均平作業は適さない。
(3)現場での活用にあたっては、簡易測量を行うか、前年の落水時の表面排水状況を目安とする。
(4)直装式レーザ均平機では、ほ場の隅部と枕地の均平は困難である。
(5)国の施工管理基準(高低差7cm、均平精度2.7cm)を越える場合は均平が必要。
 
5.残された問題とその対応
(1)表面排水の良否条件に応じた均平精度の目標設定。
(2)代かきによる均平度向上効果の評価。