成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:組織対応によるふん尿処理・利用システムの機能と経済性       
担当部署:十勝農試  生産研究部 経営科
       
協力分担:根釧農試 生産研究部 経営科
予算区分:道費(ふんプロ)
研究期間:1999〜2001年度

1.目的
 組織的対応によりふん尿の処理・利用システムを構築を進めている事例を取り上げ、
ふん尿処理・利用システムの機能と経済性を明らかにする。
 
2.方法
①既存資料の分析により、畜産経営のふん尿処理・利用の現状と課題を明らかにする。
②関係機関での聞き取り調査結果と収集資料の分析により、集中処理システムの概要、
運営方法、収入・費用構成の特徴および処理コストを明らかにする。
③農家での聞き取り調査結果および収集資料にもとづいて、農家におけるふん尿処理・利用状況、
処理費用およびシステム利用の意向を明らかにする。
④上記の結果と関係機関および農家での聞き取り結果をもとに、システムの処理費用の水準を
明らかにするとともに、運営改善の方向を検討する。
 
3.成果の概要
1)畜産経営では、ふん尿処理に関わる諸問題のうち、経済的負担の軽減を最も強く意識
している。集中処理を希望する農家は20%強(約2,200戸)あり、これらの農家は抱えている
諸問題を、集中処理により解決することを期待している。
2)農協が運営主体の場合には利用農家が責任ある立場で運営に関わる仕組みになっていない
ことや、補助事業の利用に伴う制約で事前の論議が必ずしも十分でないことのため、システムの
安定的な運営に支障が出る可能性がある。
3)耕種経営と畜産経営が連携するA地域、C地域では、耕種経営が運営費用を負担しているが、
ふん尿を供給する畜産経営は費用を負担していない。
4)費目を整理して各システムのふん尿処理費用を算出した。処理費用に占める固定費の割合が
高く、稼働率(年間の原料搬入量実績/年間の計画原料搬入量×100)80%程度を維持する
必要がある。処理費用は、原料トン当たりで1,000円〜1,500円程度、製品堆肥トン当たりで
3,000円〜4,000円程度である(表1)。
5)システムを利用する意向を持つ酪専経営・酪畑経営は自家処理が困難であったり、施設装備が
不十分な農家である。耕種経営でシステムを利用する意向を持つのは、従来から堆肥を利用して
いたり、野菜を作付けしている農家の方が多い。畜産経営ではある程度安定的に利用することが
期待できるが、耕種経営では堆肥価格に影響される可能性がある。
6)農家の自家処理工程のうち、システムを利用することにより代替される工程部分の処理費用は、
酪専経営・酪畑経営(堆肥舎有り)では、経産牛頭当たり12,000円〜16,000円程度、
散布量トン当たり1,100円〜1,600円程度、畑専経営では散布量トン当たり500円〜700円である。
今後の利用意向は確定しておらず、ふん尿処理費用の負担については消極的であるが、
状況によってはやむを得ないという考えもある(表2)。
7)集中処理システムのふん尿処理費用は、酪農経営および耕種経営の自家処理費用に比べて
割高である(表3)。費用負担に関する考え方の改善点として、処理費用は畜産経営と耕種経営の
双方で負担、原料(ふん尿)搬入費用は畜産経営が負担、水分調整材費用は畜産経営が負担、
原料代は耕種経営が支払い畜産経営に還元、を示した。運営の改善方向として、利用農家(代表)が
運営に責任を持つ立場で意思決定機関に参加すること、意思決定機関と執行機関を分離すること、
を提示した(図1)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
1)ふん尿の集中処理システムを構築する際の参考資料として活用できる。
2)集中処理システムに関わる数値は計画に基づく概数である。
 
 
5.残された問題とその対応
1)集中処理システムについては、稼働後の実績値を確認する必要がある。これについては
継続調査の予定である。
2)運営方法改善の効果については、今後実態に即して詳細な検討が必要である。