成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:炭化製紙滓の融雪剤利用       
担当部署:中央農試 生産システム部 機械科
協力分担:なし
予算区分:受託
研究期間:2001年度

1.目的
 製紙工場における再生紙製造過程で発生する製紙滓は現在、焼却あるいは
埋め立て処分されているが用地確保が困難となっており、また処理費用の高騰、
環境問題への対応から新たな処理法が求められている。製紙滓を造粒・乾燥・炭化
することで製造される炭化製紙滓は土壌改良材としての機能評価や農畜産廃棄物
処理への応用などについて研究が行われており、その中で融雪剤としての有効性が
示唆されている。本試験では炭化製紙滓の融雪効果、適正散布量および散布機の
性能を検討する。


2.方法
1)供試資材 炭化製紙滓, 対照資材:スノーメルト, くみあいアッシュ, ブラックパワー
2)試験設定 倶知安町現地農家 区制:1区制(M農場手散布区は2反復)
M農場:炭化製紙滓36kg(3袋)/10a, 対照:ブラックパワー51kg(3袋)/10a, 無散布
(手散布区):粉砕済炭化製紙滓36・48・60kg/10a, 対照:ブラックパワー34kg(2袋)/10a
A農場:炭化製紙滓36kg(3袋)/10a, 対照:スノーメルト60kg(3袋)/10a, 無散布
U農場:炭化製紙滓36kg(3袋)/10a, 対照:くみあいアッシュ40kg(2袋)/10a, 無散布
3)供試機
M農場:車輪式トラクタ(4WD) + スパウト式ブロードキャスタ(アジテータ有)
A農場:ゴムクローラ式(コンバイン改造) + シングルディスク式ブロードキャスタ(アジテータ無)
U農場:車輪式トラクタ(4WD後輪ダブルタイヤ) + ダブルディスク式ブロードキャスタ(アジテータ有)


3.成果の概要
1)炭化製紙滓は製紙工場の廃棄物である製紙滓を粒状に成形し炭化させたものである。
pH(H2O)は10.1でアルカリ分は約17%、重金属含有量は肥料取締法の規制値以下で
ダイオキシンは検出されないことが確認されており、農地への散布における安全性は
確認済みである。
2)使用前の炭化製紙滓の平均粒径は約1.8mmで慣行資材より大きく、
かさ密度は0.4g/cm3である(表1)。
3)炭化製紙滓はアジテータ(撹拌装置)を装着したブロードキャスタでは平均粒径が0.4〜0.8mmに
破砕されアジテータのないブロードキャスタでは1.7mmと破砕程度が弱かった。
4)粒が破砕されていたM農場、U農場では炭化製紙滓は融雪速度が5cm/日以上になり、
慣行資材と同等であったが、破砕程度が弱いA農場では4.9 cm/日であった(表2)。
5)M農場で使用した慣行資材(ブラックパワー)の慣行散布量は34kg/10aである。
炭化製紙滓で同等の融雪速度を得るには24kg/10a程度の散布量が必要と考えられた(図1)。
6)炭化製紙滓を散布した土壌のpHは石炭灰系の慣行資材と同程度の上昇がみられた。
7)炭化製紙滓の散布時における作業速度、散布量、補給回数は慣行資材とほぼ同じである。
散布作業能率は約1.3 〜1.7ha/hであった(表3、4)。


表1 資材の物性



図1 散布量と融雪速度(M農場)


表2 融雪速度


表3 作業能率(A農場)


表4 作業能率(U農場)


4.成果の活用面と留意点
1)炭化製紙滓は散布時に粒が破砕されることで融雪効果が高まるため、ブロードキャスタには
破砕効果のあるアジテータを装着し、破砕を確認する。

5.残された問題とその対応