成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:ドライケミストリー法による小麦α-アミラーゼ活性簡易迅速測定       
担当部署:北農研・畑作研究部・麦育種研究室
担当者名:西尾善太、高田兼則、桑原達雄、一ノ瀬靖則、山内宏昭
協力分担:北農研・畑作研究部・品質制御チーム、流通システムチーム
予算区分:
研究期間:完1999−2001年度

1.目的
 北海道の小麦栽培においてしばしば穂発芽等によりデンプン粘度の著しく低下した
低アミロ小麦が発生する。デンプン粘度の測定には通常アミログラフやフォーリング
ナンバーが使用されるが、これらの方法は試料の準備や測定に時間を要する。そこで、
デンプン分解酵素であるα−アミラーゼ活性値からデンプン粘度を簡易迅速に推定するため
臨床分野で主に用いられているドライケミストリー法の小麦への適応性を検討する。

2.方法
1)試験試料の調製
 芽室試験圃場で標準栽培し,2000年の成熟期に採取したホクシン(秋播小麦)および
ハルユタカ(春播小麦) の発芽処理原麦をし、全体に対して0, 1, 2, 4,10, 20, 50, 100 %の
割合で健全粒に混合し,様々な発芽種子混入比率の原麦を調製し小麦粉及び全粒粉を得た。

2)酵素の抽出
 酵素の抽出は、Ceralpha法の希釈抽出緩衝液10mlに対し、小麦粉又は全粒粉1gを用いた。
20分間攪拌後、1000Gで10分遠心分離し、上澄を0.45μmのフィルターでろ過し酵素抽出液とした。

3)α−アミラーゼ活性値の測定
 Ceralpha 法ではα−アミラーゼ活性測定キット(Ceralpha Method、メガザイム社) を用い渡辺ら(1994)
の方法により、ドライケミストリー法では富士ドライケム 3030(富士写真フイルム(株))と
麦α−アミラーゼ測定用に新規に開発されたスライドを用いて、それぞれ2反復で測定した。


3.成果の概要
1)新たに開発された麦α−アミラーゼ測定用多層フィルムスライド(化学反応に必要な試薬を
フィルム中に封入し重ね合わせたもの)と専用分析装置(富士ドライケム 3030 富士写真フイルム(株))
の低アミロ小麦評価への適用性を検討した。

2)ドライケミストリー法は、液体法のような酵素反応液の調製や配管系が不要なため操作や保守が
容易で、スライドへの抽出酵素液滴下から分析機中での反応を経て最終的に生成するパラニトロフェノールの
吸光度測定まで要する時間が約6分で、40点/時間のα−アミラーゼ連続測定が可能であった(図1)。

3)ドライケミストリー法による全粒粉のα−アミラーゼ活性値は、標準測定法であるCeralpha 法(液体法)
との相関が極めて高く,両測定法の間で品種間差もほとんど認められなかった(図2)。

4)ドライケミストリー法によるαアミラーゼ活性値からアミロ値(アミログラム最大粘度)及び
フォリングナンバー値の推定が可能であった(図3)。

5)ドライケミストリー法による本システムは、小麦α−アミラーゼ活性の簡易迅速測定とアミロ値等の
デンプン粘度の推定に使用できると考えられた。



図1.ドライケミストリーの概要



図2.Ceralpha法とドライケミストリー法の関係


図3.ドライケミストリー法によるα-アミラーゼ活性値とアミロ値及びフォーリングナンバー値との関係
                  (ホクシン、ハルユタカ2品種込み)


4.成果の活用面と留意点
1)酵素の抽出条件によってα−アミラーゼ活性値は変動するので、既定の抽出液を使用する必要がある。

2)測定精度においてCeralpha 法よりも若干劣るが、実用上問題のないレベルである。


5.残された問題とその対応
1)小麦の生麦から酵素を迅速かつ的確に抽出するための「前処理法」の改良

2)検査現場での適応性試験