成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:だいこんの品質(かたさ・辛味)の評価法と調理・加工による変化       
担当部署:中央農試 農産工学部 農産品質科
協力分担:十勝農試 作物研究部 てん菜畑作園芸科
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:1999〜2001年度

1.目 的
 機器分析によるだいこんのテクスチャーおよび辛味の客観的評価法を、調理(煮物)および
加工(浅漬け)の用途について検討することにより、品質を考慮した品種選定、栽培および
流通・貯蔵技術の向上に資する。
 
2.方 法
1)テクスチャー分析
分析機器:Stable Micro Systems社製 テクスチャーアナライザーTA-XT2i
供試試料:1999〜2001年十勝農試産だいこん
試料調製:コルクボーラーにより直径10mm、厚さ5mmのディスクを調製(表1)
テクスチャー測定法の検討:①プローブの種類、②試料圧縮率、③部位間差異、④試料調製法、
    ⑤内部成分との関係、⑥官能検査によるかたさ評価
官能検査:中央農試パネル43名。
    かたさ評価は、7段階の評点法1:「非常にやわらかい」 ⇔4:「ふつう」⇔7:「非常にかたい」
    により実施した。

2)辛味成分分析
分析機器:Hewlett Packard社製ガスクロマトグラフAgilent 6890(検出器NPD)。
抽出方法:伊藤(1993)の方法に従い、ジエチルエーテルで抽出した。
分析条件:岡野ら(1990)および堀ら(1999)の方法に準じて4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオ
シアネート(ITC)の分析を行った。ピーク面積(pA・S)を算出し、内部標準物 質(フェニルイソ
チオシアネート5ppm)により補正した。
 

3.成果の概要
1)根部のテクスチャー測定には、ディスク試料を直径25mm円筒型プローブで圧縮し、破断時の
最大荷重を測定する方法が最適であった。ディスク試料のテクスチャー測定時の圧縮率は
70%に設定するのが最適であった。テクスチャー測定用の試料は、根部の最上端および
表皮直下の部位を避けて調製するのが最適であった。

2)生、浅漬け後および煮熟後のディスク試料の破断時荷重を測定した結果、品種間に有意な差異が
認められた(図1)。浅漬け後の試料の破断時荷重は、生に比べて上昇し、生と浅漬け後の
破断時荷重には高い相関が認められた。煮熟後の試料は、生に比べて破断時荷重が
著しく減少(軟化)し、破砕性(もろさ)が高まった。

3)肉質特性の異なる4品種を用いて、生、浅漬け(図2)および煮物の各用途でディスク試料の
破断時荷重とかたさの官能評価指数の関係をみると、両者の傾向は一致しており、品種の差を
反映していた。このため、テクスチャーアナライザーによるディスク試料の破断時荷重の測定により、
だいこんのかたさ評価が可能である。

4)生試料の破断時荷重と新鮮物中食物繊維含量には高い相関が認められた。また、煮熟後の
破断時荷重と不溶性ペクチン含量には高い相関が認められた(図3)。

5)ITC含量は、根部を上、中、下に3等分して比較したところ、いずれの品種でも、下部、中部、上部の
順で高かった。品種間でのITC含量の差異は、辛味品種を除いて1810〜 5870pA・S(2000年)および
80〜2700pA・S(2001年)であった。98℃、10分間の加熱条件に
より、ITC含量はいずれの品種においても著しく減少した(図4)。

6)テクスチャーアナライザーによるだいこんのかたさ測定法を調理・加工法別にとりまとめ(表1)、
今後の機器分析による多点数の品質評価が可能となった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
 だいこんの品種特性調査、栽培および流通・貯蔵試験等での品質評価に活用できる。

5.残された問題点とその対応
1)流通・貯蔵による品質変動の評価
2)各種調理・加工場面での品質指標値の設定