成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:雪氷を用いた冷水予冷法の根菜類に対する鮮度保持効果       
担当部署:花野セ 研究部 園芸環境科
協力分担:食加研
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:1999〜2001年度

1.目的
 北海道におけるだいこんおよびにんじんの生産量は全国一位であり、10.2%(だいこん)、
28.0%(にんじん)のシェアを占めている(平成11年)。とくに、夏期の占有率は高く、道外市場
からの期待も大きい。しかし、それと同時に、根菜類が冷えにくい品目であることから、
予冷不足によるものと思われる輸送中のクレームが散見され、予冷・流通システムの改善が
望まれている。一方、利雪・克雪の気運が高まる中、北海道において雪や氷などの冷熱
エネルギーを利用した施設の建設が進められており、農産物の貯蔵を含めた多方面への
利用が模索されている。そこで本試験では、夏場の根菜類に対する新たな予冷方法を確立
することを目的として、冷熱源として雪氷(せっぴょう)を用いた冷水予冷によるだいこんおよび
にんじんの冷却特性および鮮度保持効果を検討した。


2.方法
1)予冷試験
(1)試験場所:赤井川村 ㈲どさんこ農産センター雪氷室型貯蔵庫

(2)予冷装置:雪氷冷水予冷システム(㈱今組、㈱共伸機工製)

(3)供試材料:
品目 品種 規格 目標品温 収穫日 供試重量(kg)
1回目(水洗品) 2回目(水洗品) 3回目(土付き)
だいこん かつみ M〜L 5℃ H11/8/5 310.3 308.3 305.4
にんじん 向陽2号 L 5℃ H11/9/8 300.6 300.3 331.8

(4)対照区:雪氷室型貯蔵庫予冷品(強制通風予冷庫と同等の予冷効果を想定)

(5)分析項目:品温・水温(コンテナ上部、中央部、下部)、重量歩留り、糖、ビタミンC、表皮色、細菌数


2)輸送試験
 冷水予冷の効果が輸送中の品質に与える影響を調査する(対照:強制通風予冷品)。
品目 品種 行先 調査期間 輸送形態 輸送中
設定温度
調査箱数
L規格10kg詰め
調査項目
だいこん 夏つかさ 東京都大田区 H13/8/21〜24 トラック 3℃ 1 重量歩留り 表皮黒変症
にんじん 向陽2号 大阪府高槻市 H13/9/7〜11 トレーラ 2℃ 4 重量歩留り とろけ 糖

3.成果の概要
1)氷を用いた冷水予冷システムの冷却水温度は1℃で安定していた(図1)。冷水予冷による
品温のばらつきは小さかった。目標品温を5℃とした場合のだいこんの予冷所要時間は60分
(初期品温25℃の場合、図2)、にんじんの予冷所要時間は25分(初期品温20℃の場合、図3)であり、
冷却時間は真空予冷とほぼ同程度、差圧予冷の1/6、強制通風予冷の1/8〜1/36と考えられ、
冷水予冷により根菜類の予冷時間の短縮が可能であると考えられた(表1)。

2)冷水予冷による鮮度保持効果は、強制通風予冷を想定した対照区と比較してだいこんで
重量歩留りの低下抑制、にんじんで重量歩留りの低下抑制および糖化抑制であった(図4、図5)。

3)雪氷を用いた冷水予冷において、水洗したものを予冷した場合は根菜の表皮および冷却水の
菌数に変化は認められなかった。土つきのものを予冷した場合には冷却水の菌数が増加したが、
冷却後、根菜は洗浄されるため問題はないと考えられた(表2)。

4)冷水予冷品を輸送した結果、強制通風予冷品と比較して重量歩留りの低下が抑制された(表3)。
輸送中の品温上昇があり、冷水予冷の品質に与える効果は確認できなかった(図6)。










4.成果の活用面と留意点
1)冷水予冷後は根菜の表面がぬれるため、強制通風予冷庫等へ入れ余分な水分を除く必要がある。

2)農協等の生産者団体で夏期にだいこんおよびにんじんの予冷を行う場面で活用する。


5.今後の問題点とその対応
1)冷水予冷システムおよび雪氷利用効率の改善

2)輸送中の低温環境の維持