新品種候補(2003年1月作成)
課題の分類:作物>冬作物>小麦>1−2−011−1
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育種事業課題名:秋まき小麦新品種候補系統「北海257号」の概要
担当研究室:北海道農業研究センター・畑作研究部・麦育種研究室
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キ−ワ−ド:秋まき小麦、パン適性、硬質、うどんこ病抵抗性
1.特性一覧表
系統名 北海257号    組合せ ホロシリコムギ/GK Szemes
特性 長所 1.製パン適性が優れる。 2.赤さび病、うどんこ病抵抗性が優れる。
3.耐倒伏性が優れる。
短所 1.コムギ縞萎縮病抵抗性が劣る。 2.収量性がやや劣る。
採用都道府県と普及見込み面積: 北海道 5.000ha


2.「北海257号」の特記すべき特徴
 成熟期は「ホクシン」に比較して5日遅く、収量性はやや劣る。赤さび病抵抗性、うどんこ病抵抗性および耐倒伏性は優れるがコムギ縞萎縮病には弱い。粉質は硝子質であり、小麦粉は黄色みが強く、ファリノグラムの吸水率は高く、製パン適性は優れる。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 北海道における小麦の作付面積は近年9万ha以上で推移し、このうち9割以上を秋まき小麦が占め、特にめん用の「ホクシン」の作付が突出している。「ホクシン」は平成7年に育成され、当時の基幹品種である「チホクコムギ」と比較して、やや早生で、雪腐病抵抗性等に優れ、多収であったため、急速に普及し、「チホクコムギ」と完全に置き換わるとともに、他の品種とも置き換わりつつある。しかし平成12年産から導入された民間流通の制度により、供給過剰気味の「ホクシン」の入札価格は低下してきている。
 一方北海道は国内唯一硬質小麦の生産が可能な地帯であり、春まき小麦の「ハルユタカ」はパン用として一定の評価を実需者から受けている。そのため需要量は増加したが、近年成熟期の不順な天候により穂発芽等の被害が多発し、需要量の多くが供給できない状態が続き、実需者から硬質小麦の安定的な供給が要望されている。
 「北海257号」は「ホクシン」に比べ、成熟期が5日遅く収量性がやや劣る。コムギ縞萎縮病にも弱い。しかし、うどんこ病、赤さび病抵抗性および耐倒伏性に優れる。さらに、製パン適性が「ハルユタカ」以上に優れる。
 そこで「北海257号」を「ホクシン」の一部に置き換えることにより、「ホクシン」の需給バランスの改善をはかるとともに、国産硬質小麦の供給不足を解消し道産小麦の安定供給に寄与できるものと考えられる。

4.普及見込み地帯  全道の秋まき小麦栽培地帯  5.000ha

図 普及見込み地帯における「北海257号」の成熟期と収量(「ホクシン」対比(%))

5.栽培上の注意
 1)耐雪性は「ホクシン」と同じ“やや強”であるが、多雪地帯での冬損程度がやや多い傾向があるので、適切な管理に努める。
 2)赤かび病抵抗性、穂発芽性は必ずしも強くないので、防除の徹底と適期収穫を励行する。
 3)パン用であるので、蛋白含量が低くならないように肥培管理に努める。