新品種候補                                        (作成  平成15年1月21日)
ばれいしょ新品種候補「F001」の概要                      

                           

ばれいしょ新品種候補
                  「F001」の概要
                                   北海道立中央・上川・道南・十勝・北見農業試験場
                                   独立行政法人北海道農業研究センター
                                   北海道種馬鈴しょ協議会(ホクレン農業総合研究所)

1.特性一覧表

系統名 ばれいしょ「F001」

交配組合せ

 87062-217 × Maris Bard
   ホクレン農業協同組合連合会総合研究所が
   育成し、平成12年から14年に各種試験を行っ
   た。

特性

長所
1) 目が浅く、大粒・多収である。
2) ポテトサラダ適性が「男爵薯」より優れる。
3) ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。

短所
1) 塊茎腐敗抵抗性が“ごく弱”である。

 

採用予定県及び普及見込み面積   北海道 150 ha

調査地

北見農試

中央農試

上川農試

十勝農試

調査年次

平成12〜14年

平成12〜14年

平成12〜14年

平成12〜14年

        系統・
項目     品種名

001

男爵薯
(対照)

さやか
(比較)

農林1号
(比較)

001

男爵薯
(対照)

001

男爵薯
(対照)

001

男爵薯
(対照)

早晩性

中晩

中晩

 

 

 

 

 

 

終花期の茎長(cm)

63

32

54

62

71

37

71

69

79

39

枯凋期  (月日)

9/30

9/ 2

9/26

10/3

9/14

8/20

9/15

8/20

9/20

8/29

上いも数(個/株)

9.1

10.1

8.9

9.5

12.3

13.2

12.3

13.3

9.5

11.6

上いも平均一個重(g)

133

84

113

122

101

76

105

79

130

75

中以上いも重(kg/10a)

5,259

3,285

4,419

5,057

4,571

3,476

4,978

3,686

4,936

3,237

  対照比 (%)

160

100

135

154

131

100

135

100

152

100

上いも重(kg/10a)

5,579

3,905

4,670

5,282

5,294

4,391

5,615

4,607

5,239

3,883

  対照比 (%)

143

100

120

135

121

100

122

100

135

100

でん粉価  (%)

16.9

16.3

16.9

18.8

14.8

14.0

14.0

13.6

16.0

14.5

塊茎の特性

 

 

 

 









 






 

ポテトサラダ
適性

001

男爵薯
(対照)

トヨシロ
(比較)


ホク


 

剥皮歩留り

86%

78%

 82%

***

+1.1

0.0

 

甘み

-0.1

0.0

 

なめらかさ

+0.5

0.0

 

ホクホク感

+0.1

0.0

 

総合

+0.4

0.0

 

ケン
コー

製造直後****

3.5-4.0

3.5-3.9

3.3-3.3

製造30日後

3.5-3.8

3.0-3.0

2.3-2.5


 

 形

偏球

偏球

 皮色

黄褐

白黄

白黄

 肉色

淡黄

 目の深さ

 休眠期間

やや長

やや長

やや長

やや短

 褐色心腐の多少*

(無)

 中心空洞の多少*

(少)

 二次生長の多少*

(無)

(無)

病虫害抵抗性**

 

 

 

 

 ジャガイモシストセンチュウ

(H1)

(h)

(H1)

(h)

 疫病圃場抵抗性

やや弱

 塊茎腐敗

ごく弱

やや強

 Yモザイク病

 そうか病

やや弱

調理特性*

 

 

 

 

 煮崩れ

(少)

 調理後黒変

(少)

(少)

(中)

* 各農試の試験結果による。括弧内はばれいしょ種苗特性分類調査報告書(昭和56年)の分類による。

** 特性検定試験の成績による。 *** 色〜総合は、男爵薯を0としてー2(劣る)〜+2(優る)で評価。

**** ケンコーマヨネーズ(株)による総合評価で、1(悪い)〜5(良い)。

 

 

2.ばれいしょ「F001」の特記すべき特徴

 ばれいしょ「F001」は、中晩生で肉色が淡黄色の生食用系統で、「男爵薯」よりポテトサラダ適性が優れ、

目が浅く、大粒・多収である。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。

 

 

3.奨励品種に採用しようとする理由

 生食用ばれいしょは外食・調理済み食品・一次加工品等の業務需要が急増し、適品種の要求が強い。

従来これらの用途では、北海道で栽培面積が多く、安定供給が可能な「男爵薯」が多くを占めていたが、

目が深く加工歩留りが低い、剥皮後の褐変や調理後の黒変が起こりやすい等の欠点があった。

これらの欠点を補って近年奨励品種となった、ホールポテト向けの「マチルダ」(平成5年)、

コロッケ向きの「ベニアカリ」(平成6年)、白肉・大粒で各種調理に向く「さやか」(平成7年)が

栽培面積を増やしており、調理の多様化に対応した適品種の要望は今後も強まると考えられる。

 「F001」は、「農林1号」並の枯凋期の中晩生で、「男爵薯」、「農林1号」及び「さやか」より大粒・

多収である。ポテトサラダ用原料の主力品種である目の浅い「トヨシロ」や、目の深い「男爵薯」と比べ、

ポテトサラダ製造時の歩留りは高く、「さやか」並に優れる。ポテトサラダの官能評価では色や食感の

評価が高く、総合的にポテトサラダ適性が優れる。「トヨシロ」、「男爵薯」や「さやか」と違い「F001」は

肉色が淡黄色であるが、同じ淡黄色である「キタアカリ」(昭和62年)の普及によって黄肉色ばれいしょの

需要は広がってきており、「F001」の肉色を生かした商品開発が期待できる。また、ジャガイモシスト

センチュウ抵抗性を持っており、汚染圃場のシストセンチュウ密度を低下させることが可能である。

 以上のことから、「F001」をポテトサラダ向けとして用いられている「男爵薯」の一部に置き換えることにより、

高品質原料の安定供給が可能となり、道産ばれいしょの振興に寄与することができる。

 

 

4.普及見込み地帯

  北海道の生食用ばれいしょ栽培地帯  150 ha

 

 

5.栽培上の注意

 1) 塊茎の腐敗が発生することがあるので、排水不良な圃場での栽培は避ける。

 2) 疫病に弱いので、予察情報などを活用し、適正な防除に努める。

 3) 中心空洞の発生することがあるので、多肥や疎植を避け、培土や収穫時期に留意する。