2.「北海83号」の特記すべき特徴
 「北海83号」は、健全ほ場における根重並びに根中糖分が「シュベルト」より高く、不純物価が低い。耐病性に関しては複合抵抗性を有し、そう根病抵抗性並びに褐斑病抵抗性は“強”であり、黒根病発病ほ場において発病指数が「モノホマレ」より低い。また、耐湿性は“中”である。

3.奨励品種に採用しようとする理由
 てんさい主要病害の一つであるそう根病は、発生の恒常化とともにその面積の拡大が懸念されているが、効果的な防除法がなく、抵抗性品種による対応が不可欠である。北海道農研では、平成10年に、そう根病抵抗性が“強”で、同病発病ほ場における糖量が多い「シュベルト」を育成し奨励品種としたが、一般品種に比べ健全ほ場における糖量が少なく、不純物価が高いことから、広く普及するに至らなかった。このため、生産者からは、健全ほ場における糖量が多く、不純物価の低いそう根病抵抗性品種の開発に対する要望が強い。
 「北海83号」は、そう根病抵抗性が「シュベルト」と同等の“強”であり、同品種に比べ健全ほ場における糖量が多く、不純物価が低い。また、褐斑病抵抗性が“強”であることから、同病害に対する被害拡大の回避並びに防除回数の軽減が期待される。さらに、黒根病に対して発病指数が低いといった複合抵抗性を有する。
 以上より、「北海83号」を北海道の奨励品種として、「シュベルト」に置き換えるとともに、そう根病発生地帯を中心とした北海道一円のてんさい栽培地帯に普及することにより、病害等による糖量の減少を防ぎ、てんさいの安定確収に寄与できると考えられる。

4.普及見込み地帯
 北海道一円のそう根病発生地帯

 図1.「北海83」の収量性
(糖量:対「モノホマレ」百分比表示)
◎:北海道農研生産力検定試験3か 年平均成績(平成12年〜14年)
▲:系適、地適試験、品種連絡試験 3か年平均成績(平成12年〜14年、中央農試のみ平成13年〜14年の 2か年平均成績)

5.栽培上の注意
1)根腐病抵抗性が“弱”なので、適期防除に留意する。
2)抽苔耐性は“やや強”であるが、育苗中の低温で抽苔する懸念があるため、極端な早期播種は避ける。