成績概要書(2003年1月作成)
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1.目的
近年、「きらら397」に代表される抵抗性遺伝子Piiを有する品種の作付増加に伴い、これを侵害するレース037が全道的に広まってきた。そのため、従来のいもち病圃場抵抗性検定では菌系の変動に対応できず、適正な圃場抵抗性を評価できない事例が増加した。
そこで本試験では、穂いもち圃場抵抗性検定について見直しを行うために、①道内品種の遺伝子型の推定、②既存品種の穂いもち抵抗性の再評価と遺伝子型別基準品種の選定、および③具体的な検定に必要となる穂いもち検定マニュアルの作成を目的とした。
2.方法
(1)道内品種の真性抵抗性遺伝子型の推定
道内新旧品種および育成系統について、5種類のいもち病胞子懸濁液を接種し真性抵抗性遺伝子型を推定する。
(2)
既存品種の穂いもち圃場抵抗性再評価と出穂期・遺伝子型別基準品種の選定
1) 既存品種の穂いもち圃場抵抗性の再評価
道内新旧品種および育成系統について、レース037を用いた新たな穂いもち検定を実施し、従来法との圃場抵抗性評価の違いを検証する。
2)出穂期・遺伝子型別基準品種の選定
上川農試においても穂いもち検定を実施し、中央農試との整合性を検討した上で、より普遍性の高い出穂期・遺伝子型別基準品種を選定する。
(3)穂いもち検定マニュアル
真性抵抗性遺伝子型の推定および穂いもち検定のマニュアルを作成する。
3.成果の概要
(1)道内品種の真性抵抗性遺伝子型の推定
1)「ユーカラ」以前に育成された道内旧品種は、+あるいはPiaを単独でもつものが多いのに対して、「ユーカラ」以降の育成品種では、Pia、Pii
、Pikを複数併せ持つものが多いことが明らかとなった。
(2)
既存品種の穂いもち圃場抵抗性再評価と出穂期・遺伝子型別基準品種の選定
1)中央農試では、5ヶ年の試験において、各品種の出穂期と発病程度には緩やかな正の相関関係が認められた(図1)。
2)レース037を用いた検定での判定結果を従来方法による評価と比較したところ、Piiを有する品種については、評価が低くなる傾向がみられたが、Piiを有しない品種では従来の評価とのずれはわずかであった(表1)。
3)品種によっては、中央農試と上川農試で出穂期や抵抗性の評価が逆転するものも見られたが、判定結果は概ね一致した。
4)基準品種として現在普及する品種を中心に32品種を選定した(表2)。
(3)穂いもち検定マニュアル
真性抵抗性遺伝子型の推定については、菌株の保存法、菌株の培養法、いもち病菌の接種法および判定方法。穂いもち検定については、圃場設計、誘発方法、調査方法、判定方法についてマニュアルを作成した。
4.成果の活用面と留意点
1) 水稲品種育成における穂いもち圃場抵抗性の評価に利用する。
2)
この基準品種は、Pia、Pii、Pikの抵抗性遺伝子のみをもつ品種に適用される。
5.残された問題とその対応
1)基準品種として選定した、旧品種や育成系統については、その判定基準に適応する新品種が育成された場合、順次組み替えていく必要がある。