成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:ハイドランジア・アナベルのグリーン化と開花調節技術 (新しい道産花きの開発普及促進事業) 担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科 協力分担: 予算区分:事業 研究期間:1998〜2002年度 |
1. 目的
花・野菜技術センターでは花きの多様性を求める消費者、生産者の声に応えるため、新しい花きの創出を行っている。本成績はハイドランジア・アナベルを新しい花きとして取り上げ、本来白色の花をグリーン化すると共に、開花調節についても検討しアナベルの普及向上を図る。
2. 方法
1))アナベルのグリーン化技術
(1)生育状況調査(平10〜14):前歴の異なる4種の生育経過を調査し生育特性を検討。
①養成苗株、②購入苗株、③分割株、④移植多年株
栽植密度:畦幅1m、株間1m、施肥量:定植時N、P2O5、K2O各1.5kg/a、堆肥400kg/a、追肥:融雪後N、P2O5、K2O各0.5kg/a、
雨よけ・遮光資材:開花期以降設置 *以上の条件は以下の試験に共通。
(2)遮光によるグリーン化(平13、14):遮光条件を変えグリーン化状況を検討。
遮光資材(黒色ネット、シルバーネット)、遮光率(50%、50%・2重、80%)、
遮光開始時期、照度調査、色差計(日本電色、NR-3000)調査
(3)鮮度保持試験:前処理、輸送時(シミュレーション)、後処理の処理法について検討。
2)アナベルの開花調節
(1)雪利用による開花調節(平12、13、14):アナベルを植えたハウス内に雪を堆積し、断熱フィルム等で被覆、融雪を遅らせ開花時期を抑制。
①無処理、②雪積み+遮光フィルム
(2)摘心による開花調節(平13、14):当年の新梢を適当な時期に数節残し摘心、側枝を発生させ側枝に開花させることで、開花時期を遅らせる。
*摘心時期:5月中下旬〜7月上旬
3. 成果の概要
1)アナベルのグリーン化技術
(1)生育状況調査:露地における通常の生育概況は、開花期7月下旬、グリーン化期8月中下旬、草丈100㎝前後、花茎20㎝前後、苗株定植3年目以降の花茎数20~30本以上となる(表1)。
(2)遮光によるグリーン化:アナベルのグリーン化栽培のための遮光は、遮光率50%以上の資材を使い、アナベルの開花期以降に遮光を開始することで、グリーン化が可能である(表2、3、4)。
(3)鮮度保持試験:グリーン化アナベルの鮮度保持は、前処理剤(ハイフローラ)、輸送時処理 材(エコゼリー)、後処理剤(華の精)の体系処理の効果が高かった。実際場面では、コスト、後処理の有無など問題はあるが、鮮度保持のための参考となる。
2)アナベルの開花調節
(1)雪利用による開花調節:アナベルは雪の利用(ハウス内の雪堆積と遮光被覆)によって開花抑制が可能であるが、夏の気温経過によっては開花が遅れすぎ、グリーン化に至らないこともあり、融雪時期の調整等さらに検討が必要である。また、花茎数の減少も考慮する必要があ る(表5)。
(2)摘心による開花調節:摘心(3~6節残)は開花時期を遅らせ花を小さくする効果は認められるが、時期や年によっては、花茎数減少やグリーン化しない事があり注意が必要である(表6)。
3)グリーン化栽培体系:試験結果、試験中の知見からグリーン化栽培体系図を作成した(図1)。
表1 アナベルの生育概況
出蕾期 | 開花期 | グリ−ン化期 | 草 丈 | 節数 | 花 径 | 花茎数 | 花色 |
6月下旬 | 7月下旬 | 8月中下旬 | 100cm前後 | 7〜10 | 20cm前後 | 20〜30本以上 | 淡色 |
4. 成果の活用面と留意点
1)摘心による開花調節は気象条件により変動するので注意する。
2)遮光によるグリ−ン化は特許出願中である。
5. 残された問題点とその対応
1)開花調節技術の安定化
2)栽培経過等による株更新時期の検討