成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:スターチス・シヌアータの灰色かび病軽減のための栽培法改善
       (スターチス・シヌアータ(栄養系品種)の灰色かび病軽減のための栽培法改善)
担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科 病虫科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2000-2002年度(平成12〜14年度)

1. 目的
 スターチス・シヌアータは本道の基幹品目であるが、栽培上の最も大きな問題が灰色かび病である。灰色かび病は切花の商品価値をなくすだけでなく近年では株枯れを引き起こすことも明らかとなっているが、農薬だけで病害を抑制するのは困難である。
そこで現在主流である栄養系品種について、本病の被害を軽減し、かつ切花品質には影響を与えないような、ハウス内環境を含めたより良い栽培法を本試験において検討した。

2. 方法
 (1)灰色かび病軽減のための栽培法改善試験
  1)環境制御、耕種法による灰色かび病(切花)発生軽減対策試験
  2)環境制御、耕種法による灰色かび病(株枯れ)発生軽減対策試験
  3)耕種法の違いと株元における灰色かび病菌の飛散胞子数との関係
  4)耕種法の違いが空中飛散胞子数などに与える影響
  5)環境制御の切花の収量性、切花品質に対する効果
  6)栽培法の切花の収量性、切花品質に対する効果
 (2)灰色かび病の動態の検討と有効薬剤の検討
  1)灰色かび病の発生を助長する湿度および濡れ条件
  2)薬剤耐性菌の推移
  3)有効薬剤の検索

3. 成果の概要
 (1)灰色かび病軽減のための栽培法改善試験
  1)切花の灰色かび病に対する環境制御では除湿機の効果が最も高く、加温除湿が次いだ。送風は送風量が少ないと灰色かび病発生率が増加し、逆に多くすると低下した(表1,2)。
  2)株枯れは環境制御により抑制できなかった。送風量が多いと逆に株枯れが増加した。
  3)マルチや葉かきにより採花初期の灰色かび病(切花、株枯れ)を抑制することはできたが、全期間を通じて抑制することはできなかった。
  4)薬剤の茎葉散布で切花の灰色かび病は抑制できたが、株枯れは抑制できなかった。しかし株元散布や倍量散布で株枯れを抑制できた(表3.4)。
  5)株元の飛散胞子は薬剤の茎葉散布、株元散布によって減少したが、マルチの有無の影響はなかった(表5)。
  6)空中飛散胞子は除湿、加温除湿により減少したが、送風による影響はなかった(図2)。
  7)環境制御区の収量性が高い年次と連作のためか収量性に差がない年次があった。
  8)環境制御による電気料金を試算すると切花1本当たり除湿機で2.7円、加温除湿で2.5円であった(表6)。

 (2)灰色かび病の動態の検討と有効薬剤の検討
  1)湿度90%で1時間以上、80%で3時間以上の濡れ時間により発病が助長された(表7)。
  2)薬剤散布によって該当する薬剤耐性菌の胞子数の割合が速やかに上昇した。
  3)S水和剤の効果が高かった。F水和剤はやや効果が劣ったが、対照と同程度の効果が認められた。

 (3)スターチス・シヌアータの灰色かび病軽減対策
  1)除湿機(目標湿度75%)もしくは加温除湿(目標湿度85%)を導入する。
  2)全面マルチの導入
  3)葉かきは除湿機や加温除湿の導入により省略可能。
  4)茎葉への薬剤散布
  5)株枯れの病徴が見られる場合は茎葉散布時に散布量を増やす。

 表1. 環境制御と灰色かび病発生割合(H13)    表2. 環境制御と灰色かび病発生割合(H14)


 表3. 株元散布と株枯れ指数(H12)             表4. 防除と株枯れ指数(H14)


 表5. 耕種法の違いおよび防除の有無による葉の付着胞子数の違い


 表6. 環境制御による規格品収量とコスト


 表7. 濡れ時間および湿度と発病度の関係




 図1. 夜間湿度の推移 (H13.9月平均、地上高50cm)



 図2. 空中飛散胞子数の推移 (平成14年度)

4. 成果の活用面と留意点
 全道のスターチス栽培ハウスに適用する。有効薬剤は未登録である。

5. 残された問題とその対応
 効率的な除湿、暖房法の検討登録農薬の拡大、茎葉に対する薬剤散布回数削減の検討