成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:ほうれんそうの品種特性Ⅳ
       (野菜の品種特性)(新技術・新品種導入対策事業)
担当部署:上川農試 研究部 畑作園芸科
協力分担:農産園芸課・地域農業技術センター
予算区分:受託
研究期間:2001〜2002年(平成13〜14年度)

1. 目的
 ほうれんそうの民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ、外観品質特性や収穫作業性等を加味した品種特性を調査し、産地における品種選択の資料を提供する。

2. 方法
 (1) 作型別の標準品種と重要調査項目


 (2)耕種概要(上川農業試験場)


3. 成果の概要
 1)総合評価が標準品種と同等以上の品種における特性の要約
累年の総合評価が標準品種と同等以上の品種・系統の各作型における特性の要約
トニック(標準品種):やや開張性の草姿で、葉形はやや丸葉で葉色も濃い。葉身の縮みが強く葉の丸まりも強いため、収穫作業性がやや劣る。収穫期の目安は播種後33〜35日程度。発芽は良好であり、生育の揃いもよく、株のボリュームもあることから、抽台が発生しなければ収量性は高い。
スペードワン(春夏まき、夏まき):草姿は中間型、葉形は中間葉で葉色は濃い。葉身の縮み、丸まりは弱く、欠刻が浅く入ることもある。生育速度は「トニック」並、抽台性は晩抽である。発芽は良好で、生育の揃いも良い。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。 
みっちゃん(春夏まき、夏まき):草姿は中間型、葉形は中間葉で葉色は濃い。葉身の縮み、丸まりは弱く、欠刻が浅く入ることもある。生育速度は、「トニック」並、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。 
サマンサ(春夏まき、夏まき):草姿は中間型、葉形は中間葉で葉色は濃い。葉身の縮みが弱く、欠刻はほとんど入らない。生育速度は「トニック」並で、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。
ピカソ(春夏まき、夏まき):草姿は中間からやや立性、葉形は中間葉、葉色は濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻は浅い。生育速度は、「トニック」並、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。
パシオン(春夏まき):草姿は中間やや開張性、葉形は中間葉で葉色は濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻はほとんど入らない。生育速度は「トニック」並で、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。
SC7-405(春夏まき):草姿は中間型、葉形は中間葉、葉色は極めて濃い。葉身の縮み、丸まりは弱く平滑である。発芽はやや不良で、生育速度はやや遅い。抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。
モナリザ(春夏まき):草姿はやや立性、葉形は中間葉、葉色は濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻は浅い。生育速度は「トニック」並、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。
アリスト(春夏まき):草姿は中間型、葉形は中間葉で葉色は濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻が浅く入ることがある。発芽は良好で、生育速度は「トニック」並、抽台性は晩抽である。収穫作業性は「トニック」よりやや優る。

 2)2カ年供試した品種・系統の特性の概要
上川農試の試験結果をもとに2カ年供試した品種・系統の特性をまとめた

  注)各特性は上川農試における調査結果より評価した
    生育速度、収穫作業性の評価は次の通り
    ◎(早、良)、○(やや早、やや良)、□(標準品種並み)、△(やや遅、やや劣る)、×(遅、劣る)
    「トニック」の規格内収量標準対比は収量(kg/a)
    「レジーナ」の抽台性は年次による差が大きく判定不能

 3)内部品質
 総ビタミンC:いずれの作型においても供試した品種・系統間に有意な差はなかった。また、両作型間および両年次間の含量に有意な相関関係は認められなかった。
硝酸:平成14年春夏まきに有意な品種間差があったが、その他の作型にはなかった。有意な品種間差が認められた平成14年春夏まきと平成14年夏まきの両作型間に、有意な相関関係は認められなかった。

4. 成果の活用面と留意点
 ほうれんそう産地における品種選択時の資料となる。

5. 残された問題とその対応
 春まき(4月10〜30日播種)における、べと病新レース抵抗性品種・系統の検討。
 春夏まき、夏まきでの新品種・系統の検討。