成績概要書(2003年1月作成)
研究課題名:かぼちゃの品種特性Ⅱ(野菜の品種特性)(新技術・新品種導入対策事業) 担当部署:花・野菜技術センター 研究部 野菜科 協力分担:農産園芸課、各地域農業センター 予算区分:受託、事業 研究期間:2001,2002年度(平成13、14年度) |
1.目的
かぼちゃの民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ、品質特性や着果性等を加味した品種特性を調査し、産地における品種選択の資料を提供する。
2.方法
1) 試験実施場所、実施年次・作期
・花・野菜技術センター H13、H14 作期Ⅰ、Ⅱ
・伊達市西胆振農業センター H13、H14 作期Ⅰ
・今金町農業実証試験圃場 H13 0 作期Ⅰ
・帯広市農業技術センター 0H14 作期Ⅰ
・美深町農業振興センター 0H14 作期Ⅰ
・遠別町農業振興センター 0H14 作期Ⅰ
作期Ⅰ:露地早熟移植栽培 作期Ⅱ:露地早熟直播栽培 整枝法:子蔓3本仕立て。今金町は放任。帯広市は子蔓2本仕立て。
2)供試品種
標準品種:「えびす」 作期Ⅰ:22品種(H13,H14) 作期Ⅱ:20品種(H13)、16品種(H14)
3.成果の概要
1)品種の特性概要
花・野菜技術センターで2ヶ年供試した品種について、作期Ⅰにおける成績を主として、地域農業センターの成績を加味した特性の概要について以下に記す。
「えびす」:果形は扁円型で,果皮色は濃緑色。草勢は中位である。平均一果重は概ね1.8kg〜2.0kgであり、肥大性
は良好である。着果数は安定して多く、収量性は高い。肉質は粘質気味である。
「北のこころ」:果形は腰高扁円から球形に近く、果皮色は濃緑色。草勢は強めである。平均一果重は概ね2.0kg〜
2.3kgであり、肥大性は「えびす」と比べて良好である。着果数は「えびす」と比べて少なく、収量性はやや低い。肉質は粉質である。年、地域により果形、果重及び果皮色がばらつくことがある。花・野菜技術センターでは、平成14年作期Ⅰにおいて試験区配置により霜害を受けた。
「メルヘン」:果形は腰高扁円。果皮色は濃緑色。草勢は強めである。平均一果重は概ね1.5kg〜1.8kgであり、肥
大性は「えびす」よりやや劣る。着果数は安定せず、変形果が多くなる場合があり、収量性は低い。肉質は強粉
質で、甘味は強い。
「みやこ」:果形は扁円型で、揃いは良好である。果皮色は濃緑色。草勢は中位である。平均一果重は概ね1.3kg〜
1.7kgであり肥大性が劣るため、着果率は「えびす」と同程度であるが、収量性は低い。肉質は粉質で、甘味は強い。
「こふき」:果形は扁円型で、揃いは良好である。果皮色は黒緑。草勢は強い。平均一果重は概ね2.0kg〜2.4kgであり、
肥大性は良好である。着果数は安定せず、収量は年、地域によりばらつく。肉質は強粉質で、甘味は強い。
「九重栗EX」:果形は栗型。果皮色は「えびす」と比べて濃い濃緑色。草勢は強い。平均一果重は概ね1.6kg〜1.9kg
であり、肥大性は「えびす」と比べてやや劣る。着果数は「えびす」と比べて安定して多い。収量性は「えび
す」と比べてやや低い。肉質は強粉質で甘味は強い。
「試交24号」:果形は扁円型で、揃いは良好である。果皮色は濃緑色。草勢は中位である。平均一果重は概ね1.8kg〜
2.1kgであり、肥大性は良い。着果数は少なく、収量性は「えびす」と比べてやや低い。肉質はやや粉質である。
「くりひろ」:果形は扁円型で、揃いは良い。果皮色は濃緑色。草勢は強めである。平均一果重は概ね2.0kg〜2.2kg
であり、肥大性は良い。着果数は少なく、収量は地域によりばらつく。肉質は強粉質である。
「虹ロマン」:果形は扁円型で、揃いは良好である。果皮色は濃緑色。草勢は強めである。平均一果重は概ね1.8kg
〜2.0kgであり、肥大性は「えびす」と同程度である。着果数は「えびす」に比べて安定して多い。但し、着
果節位が高節位に偏る傾向がある。収量は地域によりばらつく。肉質は粉質である。
「甘ウマ」:果形は扁円型で、果皮色は黒色。草勢は強めである。平均一果重は概ね2.4kg〜2.9kgであり、肥大性
は極めて良い。果重のばらつきが大きくなることがある。着果数は安定せず、収量は年、地域によりばらつく。
肉質は粉質で、甘味は強い。
「NS-217」:果形は扁円型で、揃いは良い。果皮色は濃緑色。草勢はやや強めである。平均一果重は概ね1.6kg〜1.9kg
前後であり、肥大性は「えびす」と比べてやや劣る。着果数は「えびす」と比べて少ない。収量性は「えびす」
と比べて低い。肉質は粉質である。
「らいふく」:果形は扁円型で、揃いは良好である。果皮色は濃緑色。草勢は中位である。平均一果重は概ね1.6kg
〜1.8kg前後であり、肥大性は「えびす」と比べてやや劣る。着果数は「えびす」と比べて少ない。収量性は
「えびす」と比べて低い。、肉質は強粉質である。
「NS-K-1」:果形は扁円型で、果皮色は濃緑色。草勢はやや強めである。平均一果重は概ね1.6kg〜1.9kg前後であ
り、肥大性は「えびす」と比べてやや劣る。着果数は安定せず、収量性は「えびす」と比べて低い。果梗部の
コルク化が遅く、特に直播栽培においては収穫判断が難しい。肉質は粉質である。
「MK-K14」:果形は扁円型で、果皮色は濃緑色。草勢は強めである。平均一果重は概ね1.7kg〜2.0kg前後であり、
肥大性は「えびす」と同程度である。着果数は「えびす」に比べて安定して多い。収量は年、地域によりばら
つく。肉質は粉質である。
2)雌花着生及び着果(作期Ⅰ、花野セ)
「虹ロマン」、「九重栗EX」及び「MK-K14」は2ヶ年共に着果数が多かった。着果率は、「虹ロマン」、「九重栗EX」、「試交24号」、「NS-K-1」及び「MK-K14」等が2ヶ年共に高かった。
3)甘み及び粉質感(作期Ⅰ、花野セ)
甘み及び粉質感についてBrix及び乾物率を指標として評価した。「みやこ」、「メルヘン」及び「こふき」は2ヶ年共にBrixが高かった。「九重栗EX」、「くりひろ」及び「NS-K-1」は2ヶ年共に乾物率が28%以上で高かった。
表.2ヶ年供試した品種の特性一覧 |
番号 | 品種 または 系統名 |
果形 | 果皮色 | 作期Ⅰ | 作期Ⅱ | |||||||
肥大性 | 着果 性 |
収量 性 |
外部 品質 |
内部 品質 |
肥大性 | 収量 性 |
外部 品質 |
内部 品質 |
||||
13 | えびす | 扁円 | 濃緑 | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
1 | 北のこころ | 腰高扁円 | 濃緑 | ○ | △ | △ | △〜□ | ○ | △〜○ | ×〜□ | △ | ○ |
8 | メルヘン | 腰高扁円 | 濃緑 | △ | △〜○ | △ | □〜○ | ○〜◎ | △〜□ | ×〜△ | □〜○ | ○ |
9 | みやこ | 扁円 | 濃緑 | × | △〜○ | △ | ○ | ○ | − | − | − | − |
16 | こふき | 扁円 | 黒緑 | ○ | △〜○ | △〜○ | ○ | ○ | □〜○ | △〜□ | □ | ○ |
2 | 九重栗EX | 栗型 | 濃緑 | △ | ◎ | △〜□ | ○ | □〜◎ | △〜□ | ×〜△ | □〜○ | ○〜◎ |
3 | 試交24号 | 扁円 | 濃緑 | □ | △〜□ | ×〜□ | □〜○ | □〜○ | − | − | − | − |
7 | くりひろ | 扁円 | 濃緑 | ○ | ×〜△ | ×〜□ | □〜○ | ○ | □〜○ | × | □〜○ | □ |
11 | 虹ロマン | 扁円 | 濃緑 | □ | ◎ | △〜◎ | ○ | □〜○ | △〜○ | ×〜○ | ○ | □〜◎ |
12 | 甘ウマ | 扁円 | 黒 | ◎ | △〜□ | △〜○ | △〜□ | □〜◎ | ○〜◎ | □〜○ | △〜□ | □〜○ |
17 | NS-217 | 扁円 | 濃緑 | △ | ×〜△ | × | □ | □〜○ | − | − | − | − |
18 | らいふく | 扁円 | 濃緑 | △ | △〜□ | △ | ○ | ○ | ×〜○ | × | □ | □〜○ |
19 | NS-K-1 | 扁円 | 濃緑 | △ | △〜○ | △ | □ | □〜◎ | △〜□ | ×〜△ | □ | □〜○ |
20 | MK-K14 | 扁円 | 濃緑 | □ | ○ | ×〜○ | □〜○ | □〜○ | − | − | − | − |
※ 各特性評価は、各試験実施機関の成績を総合評価し(作期Ⅰ)、高い順に ◎ > ○ > □(「えびす」)> △ > × とした。但し、着果性及び作期Ⅱについては花・野菜技術センターの成績より評価した。内部品質は、果肉厚、果肉色の他、粉質程度及び甘味について加味した評価である。〜は地域、年次間の変動幅を示す。 |
4.成果の活用面と留意点
1)産地における品種選択時の資料とする。
2)本成績は各品種共通の栽培管理による特性評価である。仕立て法は子蔓3本仕立てとした。
5.残された問題とその対応
1)各品種に適合した栽培条件下での特性評価