成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:鶏卵由来成分の免疫賦活機能およびアレルゲン性の評価法と品種間差 (鶏卵の機能性とその有効利用「鶏卵のアレルゲン性および免疫賦活機能の個体・品種間差の解明」) 担当部署:畜試 家畜生産部 特用家畜科 予算区分:道単 研究期間:2000〜2002年度(平成12〜14年度) |
1. 目的
鶏卵の免疫賦活機能およびアレルゲン性の評価法を検討し、品種の違いが鶏卵の免疫賦活機能およびアレルゲン性に及ぼす影響を明らかにする。
2. 方法
(1) 鶏卵由来成分の免疫賦活機能評価法と品種間差
マクロファージ系培養細胞の活性化反応(細胞分化・細胞傷害作用)を評価基準とする鶏卵由来成分の免疫賦活機能評価法を検討した。
さらに、検討された評価法を用いて品種間差を検討した。
<細胞分化の指標:細胞増殖抑制・形態変化、細胞傷害作用の指標:一酸化窒素(NO)産生量>
(2) 鶏卵由来成分のアレルゲン性評価法と品種間差
食物アレルギーモデルとして注目されているBrown Norway Rat(BNラット)を用いて、鶏卵由来成分のアレルゲン性評価法を検討した。さらに、検討された評価法を用いて品種間差を検討した。
3. 結果の概要
(1) 鶏卵由来成分の免疫賦活機能評価法と品種間差
① リポポリサッカライド(LPS)の刺激により、J774.1およびRAW264において、細胞増殖抑制および形態変化が認められ、活性化マクロファージに分化誘導されていることが確認された(図1)。
② 細胞分化を指標とする評価法は、J774.1やRAW264を用いて、培養時間3日間、対照区のLPS濃度は0.4μg/ml以上、細胞傷害作用を指標とする評価法は、RAW264(1×106個/ml)を用いて、培養時間24時間、対照区のLPS濃度1μg/mlに条件設定することが適当と考えられた。
③ プロテアーゼ処理したオボムチンにおいて、NO産生量を増やす効果が認められ、免疫賦活機能が確認された。さらに、プロテアーゼ処理時間を半分に短縮することができた。
④ 供試品種由来オボムチンの免疫賦活機能において、単位量あたりでは、品種間差は認められなかったが、鶏卵1個あたりでは、品種間差が存在することが示唆された(図2)。
(2) 鶏卵由来成分のアレルゲン性評価法と品種間差
① BNラットに卵白を週4回、4週間経口投与し、アレルギー感作した。その結果、鶏卵のアレルゲンであるオボムコイド(OVM)およびオボアルブミン(OVA)に対するIgGおよびIgEにおいて、抗体価の上昇がみられ、アレルギー感作が成立していることが確認された(図3)。
② ELISAによる抗体価の測定は、感作開始後4週目の血液を用いて、血清の希釈倍率をIgGは10-3、IgEは10-1とするのが適当であると考えられた。
③ 品種別に調製した卵白を経口投与することにより、各品種の卵白に由来するアレルギーラットを作出し、これらのラットから得た血清中の鶏卵アレルゲン特異抗体と白色レグホーン種由来アレルゲンとの交差反応性を検討した。その結果、白色レグホーン種由来OVMおよびOVAは、品種の特異性が高く、一部を除いて他の品種との交差反応性が低いことが認められ、抗原決定基に品種変異が存在することが示唆された(図4)。
以上本試験では、鶏卵の免疫賦活機能およびアレルゲン性の評価法を検討し、これらの評価法を用いて、鶏卵の免疫賦活機能およびアレルゲン性に、品種間差が存在する可能性を示唆した。
4. 成果の活用面と留意点
(1) 鶏卵由来成分の免疫賦活機能評価法と品種間差
本試験で検討された評価法は、ヒトや実験動物を用いた評価法に比べて、簡易に多数の評価が可能であるというメリットがあり、免疫賦活機能の一次的なスクリーニングに有効である。しかし、本評価法は、in
vitroのものであることに留意が必要である。
(2) 鶏卵由来成分のアレルゲン性評価法と品種間差
本試験の結果から、品種特異的な鶏卵アレルギーがヒトにおいても成立している可能性が示唆された。しかし、ヒトのアレルギーは様々な要因が複雑に関連して発症し、しかも、それらの要因は患者により異なるので、直ちに言及できないことに留意が必要である。
本試験で検討された免疫賦活機能およびアレルゲン性の評価法とその評価情報は、機能性卵作出の基礎情報となる。
5. 残された問題点とその対応
① 飼養法の違いが鶏卵の免疫賦活機能に及ぼす影響の検討(→市販銘柄卵の評価)
② 免疫賦活機能評価法およびアレルゲン性評価法の利用拡大(→牛乳など他の畜産物への利用)
③ 鶏卵アレルギー患者血清を用いた品種間差の検討
(→鶏卵アレルギー患者の血清と品種別鶏卵アレルゲンとの交差反応試験)