成績概要書(2003年1月作成)
課題分類:
研究課題:アルファルファ草地の踏圧損傷とその軽減策
(寒地寒冷地における高能力牛用自給飼料の高品質生産技術)
担当部署:道立畜試 草地飼料科 
担当者名:中村克己、堤光昭
協力分担:根釧農試作物科、天北農試牧草飼料科
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:1998〜2002年度(平成10〜平成14年度) 

1. 目的
  アルファルファ草地の植生維持上の不安定要因の一つとして、農作業機の車輪による踏 圧に起因する株の損傷がある。そこで、農作業機によるアルファルファ草地へのダメージ を軽減するために、踏圧時期と強度が草地の被害程度に及ぼす影響を検討し、アルファルファ草地に対する踏圧軽減策を明らかにする。

2. 方法
 試験1. 刈取り後の踏圧の時期と強度がアルファルファの生育に及ぼす影響
  ア)供試草地と草地管理の概要
   供試草地:アルファルファ(AL)単播、アルファルファ・イネ科牧草(TY、OG)混播、1998年6月播種
  イ)踏圧処理:自走式多用途農作業車(スーパーカー)を用い、1999年1番草以降の各年各番草の刈取り後に実施、刈取り後の踏圧5:①なし(対照)
     ②早・弱(翌日から4日間1日1回)
     ③遅・弱(6日目か ら4日間1日1回)
     ④早・強(翌日から4日間1日1回)
     ⑤遅・強(6日目から4日間1日2回)
 試験2. 刈取りステージと踏圧損傷の関係
  ア)供試草種品種:AL・TY混播草地
  イ)1番草刈取りステージ3:着蕾期、開花期、開花揃
   ウ)他は1)に同じ
 試験3. 刈取り後のアルファルファ再生芽の発生時期調査
   AL単播草地を供試し1、2番草で調査

3. 成果の概要
 1)刈取り後の踏圧時期と踏圧強度がALの生育に及ぼす影響は単播草地、混播草地の両者 とも認められた。踏圧時期では早区(刈取り翌日から4日間の踏圧)に比べ、遅区(刈 取り後6日目から4日間の踏圧)でALの株数が減少し、ALの収量と割合が低下した。踏 圧強度間では弱区(1日1回の踏圧)に比べ強区(1日2回の踏圧)でALの収量と割合 が低下した。踏圧の影響を最も受けたのは踏圧時期が遅く、強度が強い「遅・強」の処 理であった(表1、表2)。踏圧の影響を単播と混播で比較すると混播は単播に比べ株数、 根重が維持される傾向にあり、雑草割合が少なかった。牧草収量の低下は単播に比べ混 播で小さかった。
 2)刈取り時のAL生育ステージにより踏圧の影響は異なり、AL収量とAL割合は着雷期刈り に比べ開花期以降の刈取りで低下した(図1)。
 3)再生芽の発生は刈取り時の生育ステージが早いほど遅く、発生開始時期は着雷期〜開 花始めでは刈取り4日前後、開花期以降では刈取り当日から観察された(表3)。
   1)、2)で得られた、踏圧時期が早く、刈取り時の生育ステージが進まない方が踏圧 の影響が小さいことの原因として、再生芽の発生時期が関係していると推察された。
 4)踏圧時期と踏圧損傷程度を再生芽発生時期で説明できたことから刈取り時の生育ステージ別に作業適期幅を示した(表4)。
   以上のとおり、アルファルファ草地に対する踏圧の影響を軽減するには、開花期以前 の刈取りと、刈取り後の速やかな収穫調製作業が重要であることを明らかにし、刈取り 時生育ステージ別の作業適期幅を示した。

 表1 単播草地における収量、雑草割合、株数および根重 (試験1)

  注)根重は根基部0〜10cmの乾物重

 表2 混播草地における収量、AL割合、株数および根重(3草地平均、試験1)

  注)根重は根基部0〜10cmの乾物重



 表3 再生芽の発生程度:1番草 (試験3)(再生芽発生程度、%)


 表4 刈取り時のAL生育ステージ別の作業適期幅
AL生育
ステ−ジ
刈取り後の
作業適期日数
着蕾期 0〜8日
開花始 0〜6日
開花期 0〜3日
開花揃 0〜1日
  注)AL再生芽50%発生以前に当たる期間である。

4. 成果の活用面と留意点
 1)アルファルファ草地の維持をはかるための収穫調製作業の参考資料となる。
 2)造成2年目以降の草地を用いて得られたものである。

5. 残された問題点とその対応
 1)播種当年における作業機の踏圧の影響
 2)早春、晩秋における作業機の踏圧の影響