成績概要書(2003年1月)
北海道>畜産・草地>畜産
課題分類:研究課題:高水分アルファルファサイレージの調製法と特性評価
             (予算課題名 寒地・寒冷地における高能力牛用自給飼料の高品質生産技術)
担当部署:道立畜産試験場 環境草地部草地飼料科、畜産工学部代謝生理科
担当者名:出口健三郎、伊藤めぐみ
協力分担:北農研センター、根釧農試 作物科、天北農試 草地飼料科
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:1998〜2002年度(平成10〜14年度)      

1. 目的
 アルファルファを高水分条件でサイレージ調製する際のチモシー混播割合や添加剤が、発酵品質、嗜好性および排汁量に及ぼす効果について検討し、総合的な評価を行う。

2. 方法 
 高水分アルファルファサイレージに対する①チモシーの混播割合(模擬混播TY0,50,75,100%)の効果、②蟻酸製剤および③酵素・乳酸菌複合製剤(Acremonium cellulolyticus由来×Lb.casei subsp.rhamnosus)の添加の効果、を以下の方法により調査した。
 (ア) 発酵品質:ドラム缶およびフレコンバックサイロで調製し、TY割合および添加剤処理の効果を、pH、VBNおよび成分分析値を比較することにより検討した(試験1)。
 (イ) 嗜好性:泌乳牛5頭を用いた一対比較法により、TYの混合割合および添加剤処理毎に総当りで嗜好性の比較を行った。給与1時間後の採食量を各対ごとに比較し、多く採食した試料を好んで選択したとみなし、任意の試料ののべ選択頭数で嗜好性の判定を行った(試験2)。
 (ウ) 排汁:添加剤を使用したサイレージの排汁について、排汁量およびBODを調査した。また、蟻酸製剤については排汁の計時的推移についても調査した(試験3)。

3. 結果の概要
 高水分アルファルファサイレージの調製条件別特性を以下にまとめた。
  ① チモシーとの混播では
   ・ チモシー割合が高くなるほど発酵品質が向上したが、嗜好性は低下した(表1)。発酵品質および嗜好性の両面からアルファルファ率50%程度が適当と考えられた。
   ・ アルファルファ単播より排汁量が少ないことが示唆された(図1)。
  ② 蟻酸製剤の添加は
   ・ 発酵品質の改善に有効であり、CPs割合を低下させ、嗜好性も高くなることが確認された。(表1,2)。
   ・ 詰め込み初期の排汁を増加させ(図1)、総排汁量が増えることが示唆された(表3)。
  ③ 酵素・乳酸菌複合製剤の添加は
   ・ 酵素・乳酸菌製剤の添加は、発酵品質の改善に有効であったが、AL単播ではOa含量およびNDF含量の低下が認められた(表2)。CPs割合の低下程度は蟻酸製剤よりやや小さかった。また、嗜好性の改善は認められなかった(表2)。
   ・ 細胞壁の分解により可溶性分画を増加させ、総排汁量が増加することが示唆された(表3)。
  ④ 各条件共通
   ・ アルファルファサイレージの排汁中BOD含量は30000mg/L以上であった(表3)。
  以上のように、高水分アルファルファサイレージ調製における発酵品質の改善にはチモシーとの混播、蟻酸製剤および酵素・乳酸菌複合製剤の添加が有効であり、蟻酸製剤については乳牛の嗜好性の改善効果が認められた。高水分サイレージで発生する排汁はBODが糞尿並に高く、蟻酸および酵素・乳酸菌複合製剤の添加により量が増加するため、適切な処理が必要である。

 表1 チモシー割合の異なるアルファルファサイレージの発酵品質および嗜好性
処理区1) 水分
%
pH VBN
TN%
CP NDF Ob DMD CPs 嗜好性の検定2)
—————DM%———— CP% 選択頭数 嗜好性順位
TY0%蟻酸添加 77.8 4.03 3.1 17.3 54.3 50.7 62.5 50 17/20 1
TY0%無添加 79.6 4.83 14.4 17.8 56.5 55.3 62.9 67 14/20 2
TY50%  〃 77 4.29 11.4 14.7 60.7 58.5 58.8 64 11/20 3
TY75%  〃 76.6 4.1 9.7 12.9 64.7 62.3 56.8 61 2/20 5
TY100% 〃  75.8 4.2 7.7 7.9 70.6 67.8 54 57 6/20 4
  注1) TY50%,75%区はTY0%とTY100%の原料草を混合することにより調製した。
  注2) 一対比較法による。原物7〜10kgの試料を対にして並べ、給与1時間後の採食量を比較。各組合せ5頭×1反復の総当り。結果は選択頭数/供試頭数(のべ数)。

 表2 蟻酸および酵素・乳酸菌複合製剤添加区における発酵品質および嗜好性

添加剤処理区 pH VBN NDF Oa Ob CPs 嗜好性の検定1)
添加剤 添加量 TN% —————DM%———— CP% 選択頭数 嗜好性順位
AL単播 酵素・乳酸菌 0.05% 4.22b 8.4 a 48.6 a 6.6 a 48.9 a 59 a 9/30 a 2
蟻酸アンモニウム 0.60% 4.25b 8.8 a 50.3 b 9.4 b 47.1 a 50 b 24/30 b 1
無添加 - 4.57a 10.2 a 49.6 b 9.3 b 48.6 a 62 c 12/30 a 2
AL混播2) 酵素・乳酸菌 0.05% 4.08a 9.1 a 63.1 a 9.3 a 58.4 a 52 a 10/30 a 2
蟻酸アンモニウム 0.45% 4.10a 9.2 a 64.5 a 11.0 a 56.8 a 52 a 24/30 b 1
無添加 - 4.20a 9.2 a 64.7 a 10.7 a 57.6 a 56 a 11/30 a 2
  注1) 一対比較法による。原物7〜10kgの試料を対にして並べ、給与1時間後の採食量を比較。各組合せ5頭×3反復の総当り。結果は選択頭数/供試頭数(のべ数)。
  注2)アルファルファ率は26%、 注a,b,c);単播,混播別に異なる文字間で有意差あり(p<0.05)。

 表3 サイレージ調製条件、pHおよび排汁量(ドラム缶サイロ)

添加剤 調製量
kg
風乾物率
%
pH 排汁の割合
FM%
BOD
mg/L
種類 添加量
AL

酵素・乳酸菌 0.05% 171 22.6 4.26 23 34850
蟻酸アンモニウム 0.60% 179 23.8 4.1 20 38900
無添加 - 174 21 4.65 16 31050




4.成果の活用面と留意点
 (1)高水分アルファルファサイレージ調製時の情報として使える。
 (2)排汁の絶対量はサイロの規模により変動する。

5. 残された問題とその対応
 (1)実規模での排汁量の測定およびその処理方法
 (2)中水分サイレージでの嗜好性評価