成績概要書   (2003年1月作成)
課題の分類:
研究課題名:草地酪農における飼料自給率70%の放牧技術
        (草地酪農における飼料自給率70%の放牧技術の開発)
担当部署名: 根釧農試 研究部 乳牛飼養科、乳質生理科、乳牛繁殖科、草地環境科
         天北農試研究部 牧草飼料科、
担当者名:
協力分担:
予算区分:国補
研究期間:1998〜2002年度(平成10〜14年度)

1. 目 的
 TDN自給率70%を目指し、放牧草の栄養価を評価するとともに、併給濃厚飼料の給与量を制限する際の飼料構成および給与水準とその生乳生産性を明らかにし、TDN自給率70%のための飼料給与メニューを作成した。また、放牧時の栄養モニタリングとしてMUNの適正値を明らかにした。

2. 方 法
 1) 草種別放牧草の飼料成分            
 単播草(イネ科4草種、マメ科1草種)の飼料成分から各イネ科草を主体とした混播草の成分表を作成
  供試草種:チモシー、メドウフェスク、ペレニアルライグラス、オーチャードグラス、シロクローバ
  分析項目:一般成分、蛋白分画、リグニン、酵素法による繊維分画、ミネラル、ビタミン、推定TDN、WSC
 2) 乳中尿素窒素による放牧期の栄養モニタリング
  (1)併給飼料中CP含量、NDF含量および脂肪含量がMUN濃度に及ぼす影響
  (2)併給飼料の給与回数および給与変更がMUN濃度に及ぼす影響
  (3)放牧期におけるMUN濃度の適正値
 3) 自給率70%のための放牧飼養法
  (1)放牧飼養に適したデンプン質飼料の検討  (圧片トウモロコシ、大麦、粉砕トウモロコシの構成割合)
  (2)泌乳前期濃厚飼料のCP水準         (乾物中CP含量14%、9%)
  (3)TDN自給率70%における飼料給与メニューと乳生産 (濃厚飼料給与量2水準)

3. 結果の概要
 1) 単播草の飼料成分表を作成した。これをもとに、各イネ科草を主体とした混播草の飼料成分表をマメ科乾物割合別(0、15、30、45%)に策定した。
 2) マメ科乾物割合15%で、イネ科草丈が放牧時に推奨される長さであれば、どのイネ科草を主体とした混播草でも、年間平均CP含量は約20%以上、同推定TDN含量は約71% 以上であった(表1)。
 3) 併給飼料のCP含量の違いはMUN濃度に大きく影響する。NDF含量の増加は、放牧草摂取量を低下させ、TDN/CP比が変わらない場合がある。このような場合、MUN濃度は変動しない。併給飼料の脂肪含量を6%(乾物中)まで高めても、MUN濃度に影響しない。
 4) 併給飼料を変更した場合、変更日の翌日からMUN濃度に反映する。
 5) MUN濃度とTDN/CP比に高い相関がみられた(図1)。推奨養分含量(日本飼養標準)のTDN/CP比から、放牧期におけるMUN濃度は10〜12mg/dlが適正値であり、上限は17mg/dlが目安となる。
 6) 放牧草摂取量(表2)および第一胃液性状から判断して、デンプン質飼料は圧片トウモロコシが適当である。繁殖性から判断して、泌乳前期濃厚飼料CP含量は14%(乾物)が適当である(表3)。
 7) 濃厚飼料を泌乳前期、中期、後期にそれぞれ9.8㎏、2.6㎏、1.7㎏(乾物)給与することにより、TDN自給率70%が達成でき、一乳期換算乳量で8,351㎏が得られた(表4)。
 TDN自給率70%とする放牧の飼料給与メニューを作成した。本飼養法により、
濃厚飼料給与量1,439㎏(乾物)で一乳期換算乳量8,200㎏(乳脂肪率3.6%)が得られる(表5)。














4. 成果の活用と留意点
 1) 混播放牧草の飼料成分表は多回刈りした単播草の値から求めた推定値である。
 2) 適正に維持管理されている放牧草地があることを前提とする。
 3) 飼料給与メニューは放牧草種として、チモシー、メドウフェスク、ペレニアルライグラスまたはオーチャードグラスを用いた放牧飼養を対象とする。

5. 残された問題とその対応
 1)トウモロコシサイレージ利用による高自給率放牧飼養体系の確立
 2)フリーストール飼養における補助飼料給与法、
 3)搾乳ロボットと組み合わせた放牧方法