成績概要書(2003年1月作成)
課題分類: 研究課題:牧草サイレージの品質と乳牛の採食性からみた春のスラリー散布時期
担当部署:根釧農試 研究部 乳牛飼養科
担当者名:
協力分担:
予算区分: 道費研究期間:2002年度(平成14年度)

1. 目的
根釧地域におけるスラリーの肥料効果からみた施用適期は5月中旬である。しかし、酪農現場では牧草サイレ−ジの採食性が低下するとして春散布を避ける事例が多い。その原因として、原料草へのスラリーの付着や牧草サイレ−ジ品質の低下が挙げられている。しかし、スラリー散布における原料草への付着量と採食性については検討されていない。
本成績では、スラリーの春散布がサイレージ原料草へのスラリー付着量、サイレージの品質および乳牛の採食性に及ぼす影響を検討した。

2. 方法
 試験1. 牧草サイレージの品質と乳牛の採食性からみた春のスラリー散布時期
  チモシー主体草地に、スラリーを5月中旬、5月下旬および6月上旬に散布した(5中区、5下区、6上区:合わせてスラリー散布区)。対照区には化成肥料を5月中旬に散布した(化成区)。施肥量は施肥標準に従って、供試草地の前年度のマメ科率(30%)から決定した(N−P25−K2O:4.0−6.7−12.0kg/10a)。供試スラリーの成分分析を行い、スラリーの散布量(4.55t/10a)を決定し、スラリー施用で不足する養分は化成肥料で補った。原料草は6月下旬に全区を同時に刈取り、1日予乾後、細切して500kg容のフレコンバッグに詰めて牧草サイレージに調製した。牧草サイレージの品質判定は、全窒素に占めるVBNの割合(VBN/TN)とVFA含量を用いるV-SCOREによって行った。10月に開封し、乾乳牛を供試して、自由採食量(4×4ラテン方格法)および飼料選択性(カフェテリア方式)を測定した。
 試験2. スラリーの散布時期が異なる原料草のスラリー付着量
  クロム吸着オガクズをスラリーに混ぜ(原物比4%)、試験1と同時期にチモシー単播草地に散布し、刈取った(処理区名は試験1と同じ)。スラリークロム含量および刈取牧草クロム量から牧草のスラリー付着量を算出した。

3. 成果の概要
 試験1:5月中旬、5月下旬、6月上旬のスラリー散布は、牧草サイレージの品質や乳牛の自由採食量に悪影響を及ぼさなかった(表4、5)。しかし、散布時期が遅くなると牧草サイレージの発酵品質や乳牛の飼料選択性が低下する傾向が示唆された(表4、5)。また、5月下旬および6月上旬の原料草の収量は5月中旬にスラリーまたは化成肥料を施用した区よりも低い傾向にあった(表1)。
 試験2:散布時期が遅くなるほど、牧草のスラリー付着量は有意に多くなったが(表6)、牧草のスラリー中の付着量(乾物比)は0.006から0.109%であり、堆肥散布に比べて極めて少なかった。
以上のように、春のスラリー散布は乳牛の採食性に問題ない。なお、スラリーの散布時期は既存の報告(5月中旬まで)を遵守する。













4. 成果の活用面と留意点
 1)本成果は、施肥標準を遵守したスラリー散布量で検討されたものである。

5. 残された問題とその対応