成績概要書(2003年1月作成)

課題分類:
研究課題:掘削型無材暗きょを用いた農耕地の低コスト排水改善技術
     (排水不良地に対する低コスト無材暗きょ施工効果)
担当部署:中央農試 農業環境部 環境基盤科
担当者名:
協力分担:なし
予算区分:道費
研究期間:2000〜2002年度(平成12〜14年度)
 
1.目的
 農耕地における掘削型無材暗きょ(以下、無材暗きょとする。)の施工効果と適用条件、
耐久性、経済性等を検討し、低コストな排水改善技術を確立する。
 
2.方法
1)試験ほ場:新篠津村(転換畑・復田),標津町(草地),南幌町(転換畑)
         石狩・空知・宗谷の7市町村で耐久性等の実態調査
2)施工効果:排水量,土壌物理性,土壌水分変動,収量等により検討
3)耐久性と適用性:土壌断面,土壌物理性,泥炭構成植物等により判断
4)施工性と経済性:施工性を土壌別(泥炭土、台地土)で調査,経済性は弾丸・疎水材暗きょと比較
 
3.成果の概要
1)無材暗きょは、クローラトラクタに直装した掘削機で深さ60〜120cmに、幅5〜10cm
 程度の縦溝空洞と円形空洞を掘削し、空洞上部を閉蓋して閉蓋部より上方を掘削土で埋
 戻す工法である(図1)。管、疎水材など一切資材を用いない特徴がある。
 
2)無材暗きょの排水量及び流出率は通常の暗きょ排水に匹敵する。無材暗きょの排水性は
 2年後も施工直後と同等で(図2)、9年後でも排水機能が維持されていた。
 
3)無材暗きょは大きな縦溝空洞を有するため、排水効果が高い。すなわち、迅速な地下水
 の低下と作土からの余剰水排除により、土壌水分が広い範囲で低下していた。
 
4)施工後の溝空洞の経年変化を比較すると、泥炭土では4年後で変化せず、7年後で縦溝
 空洞がやや狭くなった。10年後で溝空洞が40%減少したが、排水機能は維持されてい
 た。一方、低地土では泥炭土より溝空洞が正確に掘削できたが、5年後で溝空洞がやや
 減少した。これに対して、台地土は溝空洞が崩落しやすい土壌であるため、本法の適用
 が困難と考えられた。
 
5)無材暗きょの落水部(排水路への出口)の崩落には、落水部に合成樹脂管を2m程度挿入
 することで対応可能であった。これにより、無材暗きょの耐久性は高まることが確認さ
 れた。
 
6)泥炭土と低地土に対する無材暗きょの適用条件を設定した(表1)。
 
7)無材暗きょは弾丸暗きょより施工費がやや高いが、排水効果が優れ、耐用年数が長い。
 また、無材暗きょは疎水材暗きょに比べると耐用年数が短いが、施工費が1/4以下と少
 ないため、極めて低コストである(表2)。
 
8)以上から、無材暗きょは排水不良を呈する泥炭土及び低地土に対して、優れた排水効果
 と長期の耐久性を発揮する極めて低コストな排水改善技術である。
 
図1 無材暗きょの断面
 
図2 無材暗きょの排水量(新篠津村、左:転換畑・右:復田)
 
 表1 無材暗きょの適用条件
  土 壌 項 目 適 用 条 件
  泥 炭 土 埋 木  掘削に支障となる埋木がない        

  低 地 土
 
 
コンシステンシー  液性限界40%以上           
粒径組成
 
 粘土含量20%以上、シルト含量50%未満、
 砂含量55%未満を満たすこと
ち 密 度  山中式土壌硬度計指示値29mm未満  
  共 通 砂 礫 層  空洞部の深さに砂礫層がない     
 ※本適用条件は無材暗きょの空洞部が位置する作土直下から空洞の最深部までの土層を対象にする。
 ※コンシステンシー:土の流動性や硬軟の状態、変形のしやすさを表す。
 
 表2 各排水改良法の施工費の比較             
 排水改良の種類
 
施工費例
(千円/10a)
実際の耐用年数
(年)
 無材暗きょ
 弾丸暗きょ
 疎水材暗きょ
20〜 42
7〜 11
180〜200
5〜10以上
5
半永久
 
4.成果の活用面と留意点
1)本法は泥炭土及び低地土に適用する。また、転換畑、畑、草地を対象とする。
2)無材暗きょの施工にあたっては、急勾配にならないよう地形を考慮する。また、落水部
 には合成樹脂管を2m程度挿入し、崩落対策を行う。
 
5.残された問題点とその対応
1)無材暗きょの適用土壌拡大のための施工手法