成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:畑土壌に対する脱水ライムケーキ(ビートライム)の施用効果
(ビートライムの処理・利用法に関する研究)
担当部署:十勝農試生産研究部栽培環境科
予算区分:受託
研究期間:2001〜2002年度(平成13〜14年度)

1. 目的
ビートライムの溶解特性や移行性を明らかにし、主に酸性矯正力の面から畑土壌に対する施用効果を検討すると共に、畑地における適正施用量の指針を設定する。

2. 方法
 供試資材:ビートライム(水分28%、アルカリ分37%)、市販炭カル(アルカリ分53%)
  1)酸性矯正力の差異の検討 【室内培養実験及び枠試験】
 供試土壌:多腐植質黒ボク土、淡色黒ボク土、褐色低地土、灰色台地土
 資材施用量:室内 80mg/20g風乾土、枠 600g/㎡(10cm深)
  2)溶解特性と移行性の検討 【圃場試験】
 資材施用量:300kg/10a(資材散布後ロータリー混和、土壌は淡色黒ボク土)
  3)資材施用が作物生育に及ぼす影響 【枠試験】
 供試作物:てんさい(えとぴりか)、小豆(エリモショウズ)
 資材施用量:300g/㎡(資材は10cm深に混和、土壌は淡色黒ボク土)
  4)投入量算出法の検討 【資材添加・通気法】
 供試土壌:多腐植質黒ボク土、淡色黒ボク土、褐色低地土(風乾砕土20g)
 資材施用量:0、20、50、100、150、200mg(6段階)
 分析方法:資材を添加し水50mlを加えて24時間室温に放置した後、5時間振とう。
 小型エアポンプでけん濁液中に2分間通気(2㍑/分)して、直ちにpH測定。

3.成果の概要
 1)腐植含量や土性の異なる4種類の土壌を用いて培養実験を行ったところ、いずれの土壌でもビートライムのpH上昇が早く培養1日でほとんどピークに達し、非常に高い溶解性を示した。その後炭カルのpHが追いつき、最終的には炭カルの方がやや高いpHとなった (図1)。また野外における試験でも同様の結果が得られた。
 2)資材を施用した後ロータリー混和を行った場合のpH上昇部位並びにカルシウムの移行性について検討した結果、混和深10cm程度まではpHの上昇がみられたが、その下の層ではほとんど変化はなかった(表1)。また交換性カルシウムも同様であった。従ってビートライムの移行性は炭カルと同程度と考えられた。
 3)ビートライムおよび炭カルによって酸性矯正を行った枠圃場でてんさいと小豆を栽培し、生育収量に対する影響を調査した。処理前のpHは約5.4、処理後は6.1前後となった。てんさいの収量は両資材施用区で低pHの無処理区より明らかに増収した。また小豆においても両資材区で増収効果が認められた(表2)。
 4)通気法による緩衝曲線を作成した場合、現物量を横軸にとると炭カルの酸性矯正力の方がビートライムを上回るが、アルカリ量で比較した場合は後者の酸性矯正力が若干上回った。また緩衝力が小さい土壌ではビートライムで急激なpHの上昇がみられた(図2)。
 5)投入量の決定には「資材添加・通気法」による緩衝曲線から算出することが望ましいが、「アレニウス氏表」を利用する場合には、現物で炭カルの1.2倍量程度とする。
 6)以上のように、ビートライムは畑土壌において炭カルと同様に使用できるが、短期的な酸性矯正力の大きさや土壌の緩衝力を考慮して使用する。

        多腐植質黒ボク土            淡色黒ボク土               褐色低地土
        腐植:10%、土性:L           腐植:4%、土性:L           腐植:2%、土性:SL
                 図1.種々の土壌における資材の酸性矯正力の差異
                        ○:ビートライム ●:炭カル

 



                    図2.通気法による緩衝曲線
          丸印:淡色黒ボク土(腐植:3%、土性:L)、三角印:褐色低地土(腐植:1%、土性:SL)
                   白抜き(○△):ビートライム 黒塗り(●▲):炭カル

4. 成果の活用面と留意点
 1)本資材は水分含量がやや高く塊になりやすいので、散布むらや多量散布にならないように専用の散布機(ライムケーキスプレッダ:平成11年、指導参考)を使用することが望ましい。
 2)緩衝力が小さい土壌(腐植含量が2%以下で砂質な場合など)では過剰施用にならないよう、緩衝曲線により投入量を決定する。

5. 残された問題とその対応