成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:貫入式土壌硬度計を用いた耕盤層の簡易判定法と広幅型心土破砕による対策
       (十勝主要畑作物の高収益・持続的農業生産技術解析調査)
担当部署:十勝農業試験場 生産研究部 栽培環境科
協力分担:十勝農試関係各科、十勝管内農業改良普及センター、十勝農業協同組合連合会、
       十勝管内農業協同組合、てんさい製糖3社(日甜芽室、北糖本別、ホクレン清水)
予算区分:受託
研究期間:2001〜2005年度(平成13〜17年度)

1. 目的
 畑土壌の表面排水不良要因については、プラウ耕起に伴う耕盤層の影響が指摘されている。耕盤層については既に山中式硬度計を用いた判定基準が提案されているが、試掘が必要なためより簡易な手法の開発が求められている。また、近年、耕盤層対策として従来の心土破砕機に改良を加えた広幅型心土破砕が導入されつつある。そこで本研究では、十勝地方における耕盤層の形成実態を明らかにするとともに、貫入式硬度計を用いた簡易な耕盤層判定法を検討し、さらに耕盤層対策の一つとして広幅型心土破砕機の施工効果を検討した。

2. 方法
 1)貫入式硬度計を用いた耕盤層の簡易判定
  (1) 測定圃場:平成12〜14年、十勝管内の146圃場の収穫跡地土壌。
  (2) 硬度測定方法:①山中式硬度計および②貫入式硬度計−大起理化工業製DIK-5521(直径2cmコーン)。いずれも3反復し、深さ5または10cm毎の平均値を算出。
 2)広幅型心土破砕機の効果検討
  (1) 実施圃場:平成11〜14年、十勝管内の15圃場(供試作物はエン麦2、てんさい11、大豆2。土壌タイプは黒ボク土4、多湿黒ボク土9、低地土2)。
  (2) 処理:広幅型心土破砕の施工と無施工(一部で従来型心土破砕処理区と比較)。

3. 成果の概要
 1) 十勝管内の心土(土層深20〜40cm)の山中式硬度計の平均値は、黒ボク土で20.9mm、多湿黒ボク土で20.3mm、低地土で21.6mmでいずれも20mmを上回っていた(表1)。耕盤層の判定基準を黒ボク土、低地土では20mm以上とした場合、耕盤層の形成率は黒ボク土で77%、低地土では84%であった。一方、多湿黒ボク土で判定基準を16〜18mm以上とした場合、すべての圃場で耕盤層有りと判定された。多湿黒ボク土についても心土の堅密化が進んでいることから、耕盤層の判定基準としては黒ボク土や低地土と同様に20mmを採用する。
 2) 貫入式硬度計と山中式硬度計の関係において土壌間差は小さく、3土壌をまとめた両者の相関はr=0.783**(n=1044、y=7.72Ln(x)+16.5)であった(図1)。推測誤差が3.2mmとやや大きかったが、土壌硬度のおおよその目安になると考えられる。貫入式硬度計による耕盤層の目安として、心土(土層深20〜40cm)が1.1MPa以下では耕盤層形成の可能性低く(形成率21%)、1.2〜1.4MPaでは耕盤層形成の危険性が高まり(形成率73%)、1.5MPa以上ではほぼ形成(形成率92%)と推測される(図2)。
 3) 黒ボク土、多湿黒ボク土、低地土において広幅型心土破砕を施工した結果、全般に土壌硬度が低下していた(表2)。下層土の混入による作土化学性の悪化が懸念されたが、各養分の低下はほとんど認められず、実際上大きな問題にはならないと考えられた。
 4) 広幅型心土破砕によりてんさいでは主として根重増により糖収量が高まり、その施工効果は従来型心土破砕よりも高かった(表3)。エン麦、大豆でも生育向上、増収効果が認められた。また、施工翌年においても効果が認められた(表4)。
 5) 以上のように、貫入式硬度計を用いた耕盤層の簡易判定基準は1.5MPaとする。耕盤層対策として広幅型心土破砕の施工が有効であった。















4. 成果の活用面と留意点
 1) 貫入式硬度計の測定に当たっては、取扱説明書をよく読むこと。一圃場で3反復以上測定し、深さ5cmまたは10cm毎に平均して得られた貫入硬度曲線から耕盤層形成を判定する。
 2) 礫を含む土壌では、礫が当たらないよう注意する。トラクターの轍跡や心土破砕の直上部分での測定は避ける。土壌が過乾、過湿状態での測定も避ける。
 3) 広幅型心土破砕を春に施工すると、トラクターや作業機が破砕溝に引っ張られたり、下層からの土塊により砕土が不十分となる場合がある。秋施工ではこれらの問題は軽減されると考えられる。
 4) 下層に石礫が多く含まれる場合、広幅型心土破砕施工により表層に露出し、各種の作業に悪影響を及ぼすため、施工深度を浅くするか施工を見合わせる。

5. 残された問題とその対応
 1) 易有効水が少なく堅密な重粘土(たとえば台地土など)における広幅型心土破砕の施工効果の検討。