研究課題:施設栽培におけるたい肥連用効果と窒素・リン酸減肥基準 (周年利用型ハウスにおける施用有機物の養分評価と施用基準設定) 担当部署:道南農試 研究部 園芸環境科 協力分担:なし 予算区分:国費(補助) 研究期間:1998〜2002年度(平成10〜14年度) |
1. 目的
ハウス栽培条件下における完熟牛糞尿由来たい肥について養分評価を行い,環境負荷を低減させクリーンな生産を持続するための窒素およびリン酸減肥基準を策定する。
2. 方法
1)各産地(桧山,渡島,日高,後志管内のキュウリ,ホウレンソウ,ニラ,軟白ネギ,トマト栽培)におけるたい肥施用の実態と連用による土壌肥沃度の変化
2)牛糞尿由来たい肥の連用が土壌理化学性およびトマトの生育・収量に与える影響
処理:牛糞(バーク混合)たい肥3水準(0,4,8 t/10a),0t,4t/10a区は1987年から連用12〜16年目。8t/10a区は4t/10a連用区の上に平成10(1998)年から連用1〜5年目(平成11年12月〜同12年3月に被覆剥がし,他は周年被覆),場所:農試(褐色低地土)
窒素施肥:各たい肥水準と窒素施肥量(基肥0〜10,追肥0〜20kg/10a)との組み合わせ。
施用時期:各年の4月中旬〜5月上旬,トマト定植の1〜2週間前。トマトは7段収穫。
共通施肥:基肥にP2O510kg/10a,K2O10kg/10a,追肥にK2O20kg(4kg×5回)/10a
3)農家ハウスにおけるたい肥の連用が作物生育と土壌理化学性に与える影響
厚沢部町(ホウレンソウ栽培,腐植質普通黒ボク土)および江差町(主にトマト,他にキュウリとレタス栽培,泥炭質グライ低地土)の各周年被覆ハウスにおいてたい肥連用試験を行った。
3. 結果の概要
1)道南地域の施設栽培では様々な種類のたい肥が用いられていたが,中でも牛糞尿由来たい肥が多く,たい肥1t当たりに含まれる窒素は3.8〜4.8kg/10aであった。
2)トマト栽培試験ではたい肥4t/10a連用につき基肥窒素を5kg/10a程度,追肥窒素を連用4年目までは5kg/10a,5年目以降は10kg/10a程度を減肥することが出来た(表1)。
3)土壌の熱水抽出性窒素はたい肥1t/10a施用につき0.1mg/100g程度増加した(図1)。熱水抽出性窒素が8mg/100g以上のハウスではたい肥の施肥効果は認められなかった。
4)たい肥連用による土壌物理性の改善効果はたい肥4t/10aで認められ,8t/10aとの効果の違いは小さかった(表2,図1)。また,栽培期間中の草勢維持,たい肥による窒素投 入量と作物体による持ち出し量との差,周辺環境への負荷を回避すること等の点から, たい肥連用量は4t/10aが適当と判断した。
5)たい肥連用により有効態リン酸が高まったことから(図1)、リン酸施肥対応は、連用条件下でたい肥1t/10a施用につき1kg/10a減肥、ただし黒ボク土を除外することとした。
6)以上を踏まえ,施設栽培における完熟たい肥施用による施肥対応を提案する(表3)。
7)トマト栽培では牛糞尿由来たい肥1t/10aにつき連用5年未満では基肥1kg/10a+追肥1kg/10a、連用5年以上では基肥1kg/10a+追肥2kg/10a減肥することとする。
表3 たい肥類の減肥可能量(施設園芸)
連用年数 | N | P2O5 | K2O | |
完熟たい肥 | 5年未満 | 2 | 1 | 4 |
5年以上 | 3 | 1 | 4 | |
未熟たい肥 | 1 | − | 4 | |
バークたい肥 | 0.5 | − | 3 |
4. 成果の活用面と留意点
1) 本成績はたい肥を連用した施設栽培における窒素およびリン酸の減肥に活用する。
2) 本成績は完熟牛糞尿由来たい肥を各年の春に連用したトマト栽培試験に基づいている。
5. 残された問題とその対応
1) 黒ボク土における熱水抽出性窒素に対応した窒素減肥,たい肥連用時のリン酸減肥。
2) 牛糞尿由来たい肥以外の有機物についての施用基準および施肥対応