成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:ダイズのジャガイモヒゲナガアブラムシ有翅虫の飛来予測
      (大豆のジャガイモヒゲナガアブラムシのモニタリング手法の確立)
担当部署:  病害虫防除所 予察課
協力分担:  十勝農業試験場 病虫科
予算区分:  道 費
研究期間: 2000〜2002年度(平成12〜14年度)

1. 目  的 ダイズわい化病ウイルスを媒介するジャガイモヒゲナガアブラムシの発生時期に関する十勝農試の開発した予測法の道央地帯における適合性を検証するとともに、有翅虫飛来量の多寡を予測する方法を構築する。
2. 方  法
 試験場所:長沼町;一部については芽室町十勝農試のデータにより改良結果の検証を実施した。
 (1)有翅虫飛来状況とわい化病感染時期
  黄色水盤による飛来消長、有翅虫飛来量、わい化病感染率調査(6月と7月の比較)
 (2)有翅虫飛来期予測モデル(十勝農試開発)の検証
  黄色水盤による有翅虫初飛来日と積算温度による予測初飛来日の関係解析;
  融雪期を考慮して積算を開始した場合の予測初飛来日の適合性の検討
 (3)有翅虫の飛来期と飛来量の関
  有翅虫初飛来日、予測初飛来日と黄色水盤による6月の飛来量の関係を解析;
  5月下旬の積算温度による有翅虫飛来量予測可否の検討
3. 成果の概要
 (1)有翅虫飛来状況とわい化病感染時期
  1)黄色水盤による捕獲データ(図1)およびわい化病の感染時期に関する調査結果から、長沼町におけるダイズわい化病の一次感染に関わる重要な防除時期は6月下旬以前であると判断された。
  2)長沼町におけるアブラムシ初飛来日は調査した9年全てにおいて6月2半旬以前であった(表1)。したがって、6月3半旬を基準にした初飛来日の早晩による飛来量予測(平成9年度指導参考事項)は道央地帯への適用が困難と判断された。
 (2)有翅虫飛来期予測モデルの検証
  1)十勝農試開発の積算温度を用いたアブラムシ飛来期予測モデルによる飛来期予測、薬剤散布開始時期決定法(400日度到達日の7日以内)は、長沼町においても適用可能であった。
 (3)有翅虫の飛来期と飛来量の関係
  1)積算温度による予測初飛来日が早い年次には、6月中の飛来頭数が多くなる傾向が確認された(図2)。
以上のことから、道央地帯における飛来量の予測にあたって、以下の方法を代替法として提案する。
   アブラムシ有翅虫の初飛来やダイズの発芽に先立つ5月20日までの有効積算温度を当該地域の平年値と比較する。当該年の値が平年値を上回る場合には、5〜6月の有翅虫の多飛来および早期飛来が予測される(図3)。
   この予測法の妥当性は、十勝地方(芽室町)の23年間のデータについても確認され、本法は全道において適用可能と判断された。

  表1 黄色水盤調査による有翅虫の初飛来日(長沼町)
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年次  H6  H7   H8  H9  H10  H11  H12  H13  H14
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     6/5 5/29 6/10 5/29 5/27 6/1  6/1   5/24  5/29
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図1 長沼町における黄色水盤による有翅虫飛来消長と累積飛来割合
                                (H16〜14年平均)



図2 予測初飛来日と5〜6月の飛来有翅虫数







4. 成果の活用面と留意点
 (1)飛来時期予測のための積算温度の算出にあたっては、三角法もしくは平均気温法を用いる。算出起点は、融雪期が4月中旬以前であれば4月1日とする。
 (2)発生状況に応じた茎葉散布は、平成9年度指導参考事項に準ずる。

5.残された問題とその対応
 (1)主要栽培地帯におけるわい化病ウイルス保毒虫率と、その年次変動の程度
 (2)春季の気象経過、特に温度が6月の有翅虫飛来量に及ぼす影響の解明
 (3)飛来有翅虫のわい化病ウイルス保毒率の季節変動(減少傾向)のメカニズム解明による安定性確認