成績概要書(2003年1月 作成)
課題分類 :
研究課題 : 秋まき小麦に対する可変追肥のための葉色センシング技術
        (葉色センサを利用した小麦の追肥技術)
担当部署 : 中央農試 生産システム部 機械科・栽培システム科、株式会社荏原製作所
担当者名 :
協力分担 :
予算区分 : 民間共同
研究期間 : 2001〜2002年度

1. 目 的
 秋まき小麦の生育は、圃場内においても土壌肥沃度や施肥ムラなどの要因によりばらつきがあり、安定生産のためには生育変動を軽減する技術が必要である。本試験ではトラクタ搭載型センサによる秋まき小麦葉色のセンシングと可変追肥の組み合わせが収量および子実蛋白含有率に与える効果を検討する。

2. 方 法
(1)供試センサ:N-sensor
 供試センサはトラクタ搭載型で、左右前・後方下向きの4方向(俯角26°、視野角12°、前後方向角45°)の受光部および入射光測定用受光部からなる分光反射センサである(図1参照)。分光測定データは専用のコントローラ内部で演算処理が行なわれ、1秒間隔でSV値と呼ばれる指標がモニタに表示される。以下、本成績ではセンサによる出力値をSV値とする。
(2)供試作物:秋まき小麦「ホクシン」
(3)年次および場所:平成13〜14年、中央農試、追分町
(4)調査内容:①日射量および太陽高度によるSV値の変動特性、②SV値と生育要素(SPAD、草丈、茎数、乾物重、作物体窒素含有率)の関係、③SV値および窒素追肥量と倒伏、収量、子実蛋白含有率の関係

3. 成果の概要
(1)定置試験におけるセンシング結果を見ると、秋まき小麦のSV値は日射量や太陽高度により変動した。SV値の変動は特に午前中や雨天時、日射量の変動が大きい条件で顕著であった(図2)。
(2)秋まき小麦の幼穂形成期以降におけるSV値は、SPAD値と高い正の相関を示し、圃場、生育時期、播種量を問わずほぼ同一に近い直線で回帰できる(図3)。また、SV値は生育時期全般において葉色とバイオマスを反映した生育指標、例えば窒素吸収量のような指標と相関が高い(図4)。
(3)秋まき小麦の幼穂形成期におけるSV値と収量との間に正の相関が認められた(図5)。止葉期から開花期におけるSV値と子実蛋白含有率との間に正の相関が認められた(図6)。このことから、圃場内においてSV値の大きい箇所は多収で子実蛋白含有率が高く、SV値の小さい箇所は低収で子実蛋白含有率が低いといえ、センシング時期に応じたSV値により、圃場内の収量や子実蛋白含有率のばらつきが推定できる。また、幼穂形成期のSV値が大きい箇所では倒伏が多い傾向にあった(図7)。
(4)以上のことから、本センサは圃場内における秋まき小麦の生育変動が把握でき、収量や子実蛋白含有率の均一化、倒伏の軽減を目指した栽培管理への応用の可能性がある。

正面図 上面図
図1 センサ視野範囲


  図2 SV値の時間変動(定置)


  図3 SV値とSPADの関係


 図4 SV値と作物窒素吸収量の関係


 図5 幼穂形成期のSV値と収量の関係


 図6 開花期のSV値と子実蛋白含有率の関係


 図7 幼穂形成期のSV値と倒伏箇所(H14-追分町)

5. 成果の活用面と留意点
 1) 秋まき小麦に対する可変追肥を検討する際の参考とする。

6. 残された問題とその対応
 1)SV値に基づいた可変追肥による実規模での効果の検証
 2)SV値に応じた追肥基準の作成