成績概要書 (2003年1月22日作成)

課題分類:
研究課題:ばれいしょ播種床造成栽培法の適地拡大
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
担当者名:
協力分担:な し
予算区分:受 託
研究期間:2001〜2002年度(平成13〜14年)

1.目 的
 「播種床造成によるばれいしょの高度生産性作業システム」は平成13年1月に乾性火山性土において指導参考に移された。本試験は湿性火山性土、細粒質土壌など乾性火山性土以外での適応性を慣行栽培法と比較し,播種床造成栽培法の適応拡大を図る。

2.方 法

1)試験場所 (1)場内試験 ①乾性火山性土(「メークイン」,「農林1号」)
②細粒質褐色低地土(「メークイン」,「キタアカリ」,「男爵薯」)
(2)現地試験 ①乾性火山性土(「メークイン」,「男爵薯」)
②湿性火山性土(「メークイン」,「トヨシロ」,「農林1号」)
③褐色低地土(「メークイン」,「農林1号」)

 2)処理区
(1)慣行5cm区:慣行栽培,植付深5cm   (2)SC15cm区:播種床造成栽培,植付深15cm
(3)SC20cm区:播種床造成栽培,植付深20cm(4)粗砕土区:SC15cmと同じ(H14のみ切断種芋使用)
(5)細砕土区:SC15cmと同じで細砕土(H14のみ切断種芋使用)
 3)調査項目
植付及び収穫時の土壌水分・硬度,土塊径分布,三相分布や土塊・石礫除去作業条件,収穫作業状況など。植付以降,萌芽期調査,地上部生育量,塊茎着生状況,収量調査など。

3.結果の概要
 1)萌芽期の遅れは慣行栽培と比較すると,乾性火山性土で+2〜+4日,湿性火山性土などでは+4〜+6日程度であり,植付深度20cmの場合はさらに2日程度遅れる(表1)。
 2)株当たりの塊茎重量は,植付深度15cmが7月上旬頃から慣行栽培を上回る(図1)。
 3)植付深度15cmの規格内収量は,褐色低地土の「メークイン」を除くと,慣行栽培より約10%増収する(表2)。
 4)植付深度20cmの萌芽期は植付深度15cmと比較して2日程度遅れ,収穫期の上いも収量,規格内収量ともに慣行栽培と比較して減少する場合もみられたことから,最適な植付深度は15cmである。
 5)ローラコンベヤ間隔40〜45mmにおける平均土塊径は,湿性火山性土で4.5〜7.0mm,褐色低地土で5.4〜5.8mm,細粒質褐色低地土で5.4〜8.0mmとなり,これらの条件では規格内収量の差も少なく,生育・収穫作業に及ぼす障害もみられなかった(表3)。
 6)雑草対策としてセンコル水和剤のような効果の持続期間の長い土壌処理剤の萌芽直前散布が基本となるが,土壌が乾燥している場合は,萌芽以前の降雨後で土壌水分が適度にあるときに散布することが必要である。
 7)播種床造成栽培の1畦収穫機による作業能率は5.7〜6.8a/hであった。今回調査を行った湿性火山性土では慣行収穫作業と差はなかったが,褐色低地土では収穫作業速度の1割向上と作業人員の1名削減が可能であった。
 8)以上の結果より,播種床造成栽培は乾性火山性土,湿性火山性土,褐色低地土,細粒質褐色低地土で適応可能である。

表1 慣行区に対する萌芽期の遅れと伸長速度比

図1 株当たり塊茎重量の推移
(H13-14の平均)

表2 収量調査結果(慣行栽培との比較,H12-14の平均)

表3 収量調査結果(造成時の砕土条件別の比較,H13-14の平均)

4.成果の活用面と留意点
 1)播種床造成栽培法における植付深度は15cmとする。

5.残された問題点とその対応 1)播種床造成栽培法における総合的な雑草対策
                    2)重粘土壌における適応性