成績概要書(2003年1月作成)
研究課題:ドライケミストリー法による小麦α−アミラーゼ活性の簡易迅速測定システムの開発
       小麦α−アミラーゼ活性測定のための簡易迅速前処理システムの開発
担当部署:中央農試農産工学部農産品質科、富士フイルムメディカル株式会社、静岡製機株式会社
協力分担:斜里町農業協同組合
予算区分:共同研究
研究期間:2001〜2002年度

1. 目 的
 農業現場で活用しやすい簡易迅速な小麦α−アミラーゼ抽出法とドライケミストリー法による分析装置を組み合わせることにより、小麦原粒に対応可能なα−アミラーゼ活性測定システムを開発するとともに、同システムの農業現場における適応性について検討する。

2. 方 法
 1)簡易・迅速前処理方法の開発
  (1)麦専用ジェネレーターの開発 内刃・外刃サイズおよび外刃の形状
  (2)ジェネレーターと抽出容器の位置関係の検討
  検討事項:偏心(回転軸と容器中心の距離)、クリアランス(先端と容器底面の距離)
  (3)抽出液組成の検討
  供試溶液:3水準(脱イオン水、0.05%NaCl+0.002%CaCl2、0.5%NaCl+0.02%CaCl2)
  (4)ホモジナイザー運転条件の検討
  運転条件 回転数:4水準(5000〜9000rpm) 破砕時間:8水準(15〜360秒)
  (5)抽出液の温度がα−アミラーゼ活性に及ぼす影響 抽出液温度:10〜40℃
 2)ドライケミストリー法による小麦α−アミラーゼ活性の測定
  (1)器具および装置
   ①ホモジナイザー:超高速万能ホモジナイザー「ヒスコトロン」(㈱マイクロテック・ニチオン)
   ②遠心機:卓上小型遠心機「H-1300」(㈱コクサン)
   ③α−アミラーゼ活性測定装置:「富士ドライケム3030型」(富士写真フイルム㈱)
  (2)測定手順 農業現場での利用を想定し、迅速かつ多点数に対応した手順の検討
  (3)物性測定値との関連  供試材料:斜里農協産「ホクシン」40材料の乾麦
  測定項目:α−アミラーゼ活性およびアミログラム最高粘度(=「アミロ値」)
  (4)農業現場における試行的なα−アミラーゼ活性の測定
  対象農協:斜里農協 品種:「ホクシン」分析項目:生麦α−アミラーゼ活性

3. 成果の概要
 1)麦専用ジェネレーターと1Lポリ容器との位置関係を偏心2.0cm、クリアランス4.0cmとすることで、安定した水流が得られ、効率的に小麦粒を破砕することが可能であった。また、ホモジナイザー回転数が高くなるほど、また破砕時間が長くなるほど抽出液のα−アミラーゼ活性が高くなったが、農業現場での作業性を考慮した場合、回転数8,000rpm、破砕時間120秒が抽出条件として適当であると判断した。本システムで測定されるα−アミラーゼ活性は、抽出液中のイオン濃度により変動することから、脱イオン水を用いて調整した0.075%NaCl、0.003%CaCl2水溶液を抽出液として用いることが適当であると判断した(表1、図1、図2)。
 2)α−アミラーゼ測定システムを用いることにより、1点あたりの分析時間がおよそ12分、また3名の人員配置により連続操作することで1時間あたり約25点(前処理装置二台稼動で35点)の分析が可能であった。この処理能力は、仕分けを目的としたα−アミラーゼ活性の測定に十分対応できるものであった(表2)。
 3)農業現場で測定したα−アミラーゼ活性は、受入開始日から8月9日までは150〜200mU/gとほぼ一定であったが、その後やや上昇し、12日以降は急激に上昇した。実験室において測定した乾麦のα−アミラーゼ活性値とアミロ値の間には密接な関係があった。これらのことから、本システムで測定したα−アミラーゼ活性は、受入時の低アミロ小麦の仕分けに活用できる可能性があると考えられた(図3、図4)。











4. 成果の活用面と留意点
 1)ドライケミストリー法を用いたα−アミラーゼ活性測定システムは、小麦子実中のα−アミラーゼ活性を簡易かつ迅速に測定できる。
 2)水道水の温度が極端に低い地域および時期には、抽出液の温度を調整するため適当な加温操作が必要である。
 3)本成績のα−アミラーゼ活性測定値は、新たに開発した前処理方法を用いた場合のものであり、異なる前処理方法により抽出した場合のα−アミラーゼ活性値とは単純に比較できない。

5. 残された問題とその対応
 ドライケミストリー法による小麦α−アミラーゼ活性測定システムを用いて測定した分析値に基づく小麦品質仕分け基準の策定