成績概要書(2004年1月作成)
研究課題:肉用牛における飼育密度に応じた発酵床の管理法
(予算課題名:乳牛・肉牛におけるバイオベッド(発酵床)方式の実規模実証)
担当部署:畜試 環境草地部 畜産環境科、家畜生産部 肉牛飼養科
予算区分:道費
研究期間:1999〜2003年度(平成11〜15年度)
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1.目的
発酵床方式による家畜飼育試験および小規模試験において、発酵促進技術や発酵の様相、水分の変化などを検討し、発酵床方式における飼育環境別(飼育密度や乾燥処理の有無など)の床管理について検討した。
2.方法
1)肉用牛における発酵床方式での飼育試験
約4カ年間、10〜15頭の肉用繁殖牛および肥育牛を発酵床方式で飼育した。飼育期間中に床の発酵促進処理、水分低下処理や飼育密度の影響などを調査した。
2)発酵床維持管理要因の検討
実規模発酵床と同様の条件で水分蒸発量、乾物分解率を測定した。
3)発酵床の堆肥化施設としての利用
牛不在時の発酵床の堆肥化施設利用を検討した。
3.成果の概要
1)全体概略
発酵床方式により肉用繁殖牛および肥育牛を飼育密度9.6〜19.2(m2/頭)で飼育した場合、週1回の床撹拌および適宜敷料追加を行なうことで床を泥濘化させずに維持管理することが可能であった。供試牛の健康・衛生状態への顕著な影響は観察されなかった。
2)発酵床の発酵
ふんの乾物分解率は夏季約50%(91日間)、冬季約10%(91日間)であり、夏季は活発に分解が進行し冬季は停滞した。
発酵床下層部にバーク堆肥等の粗大な資材を利用することで底部からの強制通気の効果が現れ、床の発酵が促進された(図1,2)。
3)発酵床における水分蒸発
畜舎環境による蒸発量の変化については、年平均値で大型換気扇による蒸発促進効果0.2kg/m2(24時間運転)、0.1kg/m2(日中6時間運転)、遮光による蒸発抑制効果0.5kg/m2であった(表1)。発酵床における水分蒸発量を推定する重回帰式を作成した。
推定式:蒸発量(kg/m2・日)=0.0299×気温(平均気温℃)+0.0682×全天日射量(MJ/㎡)+0.1287×水分負荷(kg/m2・日)−0.0857 (R2=0.71)
4)飼育密度と発酵床管理の関係
1頭当りの牛床面積を2倍にすることで敷料使用量(kg/頭・日)は約1/7に低減できた(表2)。飼育密度、飼育環境、敷料種類などから敷料使用量の目安を推定するシートを作成した。
5)牛不在時の発酵床の堆肥化施設としての利用
床表層部(表面から30cm程度まで)は順調に堆肥化が進行し、乾物分解率は68日間で約30%であった。床底部は強制通気により発酵が促進され、発酵床全体の堆肥化には底部からの強制通気が有効であった。堆肥化が終了した発酵床にふん尿を添加することで再発酵が開始する。
6)発酵床方式導入試算(肉用繁殖牛70頭規模)
発酵床の導入により、ふん尿処理に関する労力と堆肥舎や敷料にかかるコストが低減される。発酵床方式では飼育密度を低下させると、畜舎コストが増加するが、堆肥舎や敷料費など堆肥化にかかわるコストが減少する(表3)。
以上の結果、飼育密度や乾燥処理の有無など飼育環境別に発酵床における床管理方法を明らかにし、労力とコストの低減効果を示した。

図1 床温度推移(底部:下から30cm地点)
図2 床層位別の灰分含量(通気試験終了時)
表1 発酵床からの処理別水分蒸発量
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水分負荷
(kg/m2・日) |
調査期間 |
調査
日数 |
平均水分蒸発量
(kg/m2・日) |
| L区 |
1.6 |
01/5/28〜02/4/4 |
118 |
1.0 |
| H区 |
3.3 |
01/5/28〜02/4/4 |
118 |
1.2 |
| 通常 |
2.1 |
02/4/8〜03/5/15 |
215 |
1.3 |
| 扇風機6時間 |
2.1 |
02/4/8〜03/5/15 |
215 |
1.4 |
| 扇風機24時間 |
2.1 |
02/4/8〜03/5/15 |
215 |
1.5 |
| 遮光 |
2.1 |
02/4/8〜03/5/15 |
215 |
0.8 |
ハウス牛舎内においてプラスチック容器に床サンプルを充填し、一定量の水(飼育密度10〜20m2/頭のふん尿由来水分量をめどに)を毎日加えて、重量変化から蒸発量を測定した。
表2 飼育密度と敷料使用量
| |
牛床面積
(m2/頭) |
ふん尿負荷
(kg/m2・日) |
敷料使用量
(kg/頭・日) |
追加頻度
(日) |
試験期間 |
| H区 繁殖牛 |
9.6 |
3.4 |
6.4 |
7 |
01.5〜02.4 |
| L区 繁殖牛 |
19.2 |
1.7 |
0.9 |
105 |
01.5〜02.4 |
表3 ふん尿処理にかかわる労力とコストの試算例(肉用繁殖牛70頭規模)
| |
通常体系 |
発酵床 |
| 通常密度 |
低密度 |
| ふん尿処理労力 |
|
|
|
| 畜舎関係(時間/年) |
344 |
312 |
353 |
| 堆肥舎関係(時間/年) |
48 |
15 |
5 |
| 労力合計 |
392 |
327 |
358 |
| ふん尿処理コスト |
|
|
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| 畜舎(千円) |
7,666 |
7,666 |
12,625 |
| (必要面積) |
(958) |
(958) |
(1578) |
| 堆肥舎(千円) |
7,316 |
4,140 |
2,614 |
| (必要面積m2) |
(333) |
(188) |
(119) |
| 施設費合計(千円) |
14,982 |
11,806 |
15,239 |
| 敷料費(千円/年) |
3,875 |
1,895 |
817 |
| (必要量t/年) |
(387) |
(189) |
(82) |
4.成果の活用面と留意点
1)発酵床方式における飼育密度、飼育環境に対応した床の管理法(敷料量や作業頻度など)の目安を把握することができる。
5.残された問題点とその対応