成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:生食用「種なしぶどう」の垣根栽培
    (「種なしぶどう」の品種選定と高品質果実生産技術の確立)
担当部署:中央農試 作物開発部 果樹科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2000〜2004年度(平成12〜16年度)
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1.目的
 我が国の生食用ぶどうの一般的な栽培方式である棚栽培は、長時間顔を上に向け、腕が肩より上がる姿勢を余儀なくされ、首、肩、腰への負担が大きい。そのため他府県では作業姿勢改善、早期成園化を目的とした垣根栽培や改良棚といった試験例があるが、本道とは品種や気象条件等が異なるため実用的ではない。そこで、府県の方式を参考にして現在の棚や支柱を有効利用でき、本道の気候(冬季の積雪、低温)や栽培品種に適応すると考えられる生食用ぶどう垣根栽培方式を考案し、その栽培性、作業性の検討を行った。

2.方法
 1)試験場所 中央農業試験場 無加温ハウス
 2)供試品種 「バッファロー」「デラウェア」
 3)栽植距離・整枝・剪定 
  垣根栽培 樹間3.0m×列間2.5m(133.3本/10a)一文字整枝・短梢剪定
  棚栽培  樹間5.4m×列間7.2m(25.7本/10a)一本主枝整枝・長梢剪定
 4)栽植 2001年(2000年1年生苗を購入し、1年間ハウス内でポット育苗)
 5)作業時間 2003年(栽植3年目・樹齢5年生)、2004年(栽植4年目・樹齢6年生)の2カ年、垣根栽培と棚栽培の作業時間を比較するため、差が出ると考えられた「枝上げ」「芽かき」「ジベレリン処理」「誘引」「副梢整理」「収穫」「剪定」の作業をビデオ撮影し、総作業時間と「上向き・腕上げ」姿勢(手が肩より上がった状態)の作業時間をストップウォッチで測定。

3.成果の概要
 1)生育相は開花期まで差はないが、同時期に収穫した果実では、垣根栽培の酸度が高かったことから、収穫期はやや遅くなると考えられた。垣根栽培は初期から枝数を確保でき、栽植3年目には成園化した。そのため栽植4年目までの10a当たりの累積収量は棚の約3倍であり、早期成園効果が見られた。果実品質では垣根栽培の方が果房、果粒が大きかった(表1)。
 2)垣根栽培は成園化するのが早いため1樹当たりの作業時間は長いが(表2)、収量当たりの作業時間を比較すると2割程度短かった(表3)。「誘引」は垣根栽培の方が長かったが、「枝上げ」「剪定」は樹が小さく、剪定方法も単純なため短くなった。
 3)「上向き・腕上げ」の姿勢になる時間は棚栽培では作業時間の64%なのに対し、垣根栽培では12%と大幅に短く、作業姿勢の改善効果が見られた(表4)。
 4)本試験で検討した垣根栽培は作業姿勢の改善効果が大きく、作業が快適に行える。既存の棚や支柱を利用して新たに架線を設置するだけで良いことから導入コストは低く抑えられる。また、栽培技術が棚栽培と比べて単純で、しかも早期成園化するといったメリットがあるため高齢者の軽労化のための利用や、既存産地以外の新規導入での利用などが考えられる。

棚栽培に比べて、
生育相 果実品質 収量性 作業時間
早い 大きい 多い 短い
やや早い やや大きい やや多い やや短い
同等 同等 同等 同等
やや遅い やや小さい やや少ない やや長い
× 遅い 小さい 少ない 長い

4.成果の活用面と留意点
 1)生食用ぶどう栽培の早期成園化および作業姿勢を改善するための方法として利用する
 2)樹齢6年生(栽植4年目)までの「デラウェア」「バッファロー」での結果である。

5.残された問題とその対応
 1)適応する品種の検討
 2)樹齢が進み、樹勢が強くなった時の管理方法(間伐、剪定)