成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:ほうれんそうの品種特性V(野菜の品種特性)(農作物供給体制確立事業)
担当部署:上川農試 研究部 畑作園芸科
協力分担:農産園芸課・地域農業技術センター
予算区分:受託
研究期間:2003〜2004年(平成15〜16年度)
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1.目 的:ほうれんそうの民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ、外観品質特性、収穫作業性、内分品質等を調査し、産地における品種選択の資料を提供する。

2.方 法:耕種概要および作型別重要特性


3.成果の概要:
1)春まき、春夏まき、夏まき作型におけるほうれんそうの抽台性、発芽・生育特性、外観品質、収穫作業性について品種特性を明らかにした。従来の丸形の葉形で葉身の縮みの強い品種に対して、葉形が中間型で葉先がやや尖り、葉身の縮みが弱く草姿が中間からやや立性の品種・系統が多くみられた(表2)。
2)1)に加え、葉色が極めて濃いタイプ、立性が強く収穫作業性が極めて優るタイプのほうれんそうも有った(表2)。
3)硝酸含量については、2か年ともに夏まきの作型で有意な品種間差がみられた。年次間で共通する品種・系統間においては、春まき、春夏まき、夏まきの順で硝酸含量が高くなる傾向が見られたが、各作期中の年次間に有意な相関は認められなかった(表1、図1)。
4)葉色(SPAD)と硝酸含量の関係をみると、平成15年のみ葉色(SPAD)と硝酸含量に負の相関がみられたが、平成16年は相関がみられず、葉色が濃い特徴を持つ品種の硝酸含量が高い傾向は認められなかった(図2)。
5)累年の総合評価が標準品種より優る品種・系統の各作期における特性の要約
サマンサ(春夏まき):発芽はやや良好で、生育速度は「トニック」並である。抽台は晩抽である。収穫作業性は、「トニック」よりやや優る。草姿は中間型、葉形は中間葉で、葉色はやや濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻は入らない。
ブリット(夏まき):発芽はやや良好で、生育速度は「トニック」並である。抽台は晩抽である。収穫作業性は、「トニック」より優る。草姿は中間型で、葉形はやや丸葉で、葉色はやや濃い。葉身の縮みはやや弱い。欠刻は入らない。
サンパワー(夏まき):発芽はやや良好で、生育速度は標準品種並〜やや速い。抽台は晩抽である。収穫作業性は、「トニック」より優れる。草姿は中間型、葉形はやや丸葉で、葉色はやや濃い。葉身の縮みはやや弱く、欠刻は入らない。
SC0-408(夏まき):発芽は中で、生育速度は標準品種並〜やや遅い。抽台は、平成15年の春夏まきで抽台が発生した。株にボリューム感がある。収穫作業性は、「トニック」より優る。草姿は中間型、葉形は中間葉で、葉色は極めて濃い。葉身の縮みは弱く、欠刻は浅く入ることもある。
タキシード(夏まき):発芽はやや良好で、生育速度は「トニック」よりやや速い。抽台は、晩抽である。収穫作業性は、「トニック」より極めて優る。草姿は立性、葉形は剣葉で、葉色は濃い。葉身の縮みはやや弱く、葉身と葉柄のバランスが悪い。欠刻は中〜やや深い。


図1.年次間の硝酸含量の関係


図2.葉色(SPAD)と葉身の硝酸含量の関係(平成15年および16年)

4.成果の活用面と留意点
ほうれんそう産地における品種選択時の資料となる。

5.残された問題とその対応
 各作期の新品種・系統の検討。