成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類
研究課題:高粉質かぼちゃの省力栽培法と非破壊手法による品質評価
      (高粉質かぼちゃの安定生産技術)
担当部署:花・野菜技術センター 研究部 園芸環境科・野菜科
予算区分:補助(地域基幹)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)   
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1.目 的
 高粉質かぼちゃの省力栽培法として、品種特性調査、セル苗定植などの検討を行った。加えて、近赤外分光法による非破壊的手法を用いて、品質評価の可能性について検討を行った。

2.方 法
1) セル苗利用による省力化栽培法の検討
育苗方法:72穴セル×育苗日数(1〜3処理)、12cmポリポット(対照)
2) 成熟特性の解明および栽植様式の検討
品種(えびす、こふき、雪化粧)×開花後日数(18〜60日)、品質(乾物率、澱粉、糖)
株間(60cm)×畦幅(200、300、400cm)+株間(80cm)×畦幅(300cm)
3) 品種特性調査  
場内2003年:品種(11)×育苗(72穴セル、12cmポリポット)×貯蔵(0、30、60日間)
  2004年:品種(14)×育苗(72穴セル、12cmポリポット)×貯蔵(0、30、45、60日間)
現地(長沼):品種(6;2003年、8;2004年)×育苗(72穴セル)
4) 近赤外分光法による非破壊的手法を用いた品質評価
  貯蔵した果実(えびす、こふき)を経時的に、近赤外分析装置(フルーツセレクタ K-BA100型、2nm毎に500〜1020nm)で測定し、スペクトル測定部位の果肉を分析した。
  スペクトル吸光度の2次微分値を説明変数、乾物率・澱粉・糖を目的変数として、統計処理ソフ ト(SPSS)を用いて、重回帰分析(ステップワイズ法)から検量線の作成、評価を行った。

3.成果の概要
(1) セル苗定植は慣行のポリポット苗定植に比べて、育苗・定植作業の効率化・軽作業化が図られ、作業時間は約1/3で、経費はほぼ半分程度になった(表1)。また、着果日・着果位置が低節位に集中しているため、一斉収穫に適した省力栽培法と考えられた(図1)。
(2) セル苗定植栽培はポリポット苗定植栽培に比べてやや低収であるが、「こふき」「虹ロマン」はいずれの栽培においても、「えびす」と比べて同等以上の収量性であった。いずれの供試品種においても収穫時の乾物率は「えびす」より高く、その多くは貯蔵中も乾物率が高く推移し た(表2)。
(3) 果実の成熟に伴い乾物率・澱粉含量は増加し、開花後45〜50日に最高値に達した後、減少に転じた。このことから、かぼちゃの収穫適期は開花後50±5日と考えられた(図2)。最適栽植様式は、乾物率および着果日の揃いの点から、株間60cm×畦幅300cmと考えられた(省略)。
(4) 近赤外分光法による測定では、乾物率の重相関係数は0.94以上、検量線評価時の標準誤差(SEP)1.4%と高い精度の検量線が得られたが、澱粉と糖については得られなかった(表3、図3)。
(5) かぼちゃの収穫適期の目安を乾物率25%以上、出荷時の品質基準を22%以上とすると、本器機を使用するときはSEP1.4%を加味して、それぞれの目標値は乾物率約26.5%以上、約23.5%以上 と考えられた。
(6) 以上から、高粉質かぼちゃ「こふき」「虹ロマン」等を用いて、セル苗定植栽培によって、 省力・低コスト化、一斉収穫の可能性が示された。加えて近赤外分光法による非破壊的手法を用いて、乾物率から果実品質を評価することができた。

表1 セル苗定植栽培の有用性

表2 供試品種の特性

4.成果の活用面と留意点
1) セル苗定植栽培の省力性、かぼちゃ生育の特性及び省力適性を有する品種情報の提供
2) 品質評価に供試した品種は「えびす」と「こふき」
3) 使用した近赤外分析装置はフルーツセレクタ K-BA100型

5.残された問題点とその対応
1) セル苗定植栽培における収量性の向上と品質改善
2) 近赤外による澱粉と糖の測定精度の向上