成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:ほうれんそう・こまつなの夕どりによる硝酸塩低減
       (夕どり収穫方法を活用したホウレンソウ等の硝酸塩濃度低減化)
担当部署:花・野技セ 研究部   園芸環境科
                       野菜科
協力分担:
予算区分:受託(国費)             研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1.目的
 収穫時刻を従来の朝どりから夕どりにすることによるほうれんそう・こまつなの硝酸イオン濃度の低減をはかるとともに、こまつな品種の硝酸イオン濃度の違いに関して検討した。

2.方法
1)収穫時刻の影響(ハウス栽培)

・供試品種、播種期(春夏まき〜夏まき):
年次 こまつな ほうれんそう
6、7、8月まき 6、7月まき 8月まき
H14 浜ちゃん、裕次郎 トニック、マトリックス テリオス、スペードワン
H15、H16 浜ちゃん トニック テリオス
・収穫時刻:4時(朝どり)、10時(昼どり)、16時(夕どり) 
・供試面積:2.25㎡/区(条間20cm×株間5cm) 2反復(H14)、3反復(H15、16) ・施肥量:N9kg/10a

2)日射の影響(環境制御温室)
・日射条件:対照、遮光(50%遮光フィルム、実質60%遮光)、補光(対照と同日照時間でほぼ4,000ルクス補光)、収穫日のおよそ3日前から処理
3)こまつなの品種間における硝酸イオン濃度の違い(ハウス栽培)
栽植様式:条間15cm×株間5cm 栽植密度13,333株/a 施肥量N10kg/10a 0.50㎡/区
供試品種数:春播(9、8、0)、夏播(9、11-18、14)、秋播(9、11、18)(平成14、15、16年)

3.成果の概要
1)収穫を朝どりから夕どりにすることにより、こまつな、ほうれんそうのいずれにおいても硝酸イオン濃度が低下した。その程度はこまつなで11.0%(3.3〜17.3%)、ほうれんそうで14.9%(2.5〜37.0%)であった(表1)。
2)夕どりによる硝酸イオン濃度の低下はおもに葉身における硝酸同化に起因すると考えられた(表2)。また、夕どりによる硝酸イオン濃度低下程度には日射条件等による乾物率の変動が影響しているものと考えられた。
3)ほうれんそうと同様に、こまつなにおいても、収穫を夕どりにすることによってビタミンC、糖濃度が増加し、内部品質が向上した(表3)。
4)遮光条件下では夕どりによる硝酸イオン濃度の低減効果が小さくなるため、効果を十分に発揮させるためには、極端な遮光条件をさける必要があると考えられた(図1)。
5)夕どりによって乾物率が高まるような条件では収穫時にしおれが生じることがあるが、水浸漬処理を行うことによって簡単にしおれ発生を抑制でき(表4)、品質の低下も認められなかった。
6)こまつなの品種間における硝酸イオン濃度の違いに関して検討した結果、年次・作型により収穫迄日数、基部径及び平均一株重に硝酸イオン濃度との間で負の相関が認められ、品種選択が低硝酸化の一助となる可能性が示された。硝酸イオン濃度が統計的に有意に低い品種の選定はできなかったが(図2)、硝酸イオン濃度が低い傾向にある品種について以下に示す。
「はづき」:平成14年秋播作型では高かったが、他試験期においては作型によらず硝酸イオン濃度が低かった。やや開張気味の草姿であり葉色は薄いが、基部径は大きく株張りの良い晩性品種であり、収量性に優れる。
「河北」:平成14年春播作型では高かったが、他試験期においては作型によらず硝酸イオン濃度が低かった。早晩性はヤ早〜中程度であり、「はづき」に比べて基部径、一株重は小さく、収量性は劣る。しかし、極立性草姿であり葉巻が少ないといった利点を有する。
「ひとみ」:平成15、16年のみの供試であり春播作型について未供試。夏播・秋播作型において硝酸イオン濃度が低かった。早晩性は晩性であり、葉色は濃緑であるが、一株重は小さく収量性はやや劣る。
7)以上のことから夕どりによる収穫体系を図3の様にまとめた。


図2 作型別の硝酸イオン濃度の品種間差

4.成果の活用面と留意点
1)雨よけ・ハウス栽培を対象とする。

5.残された問題点とその対応
1)硝酸蓄積圃場における実証試験