成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:雪中貯蔵キャベツの結球内部黒変症状の発生要因
       (越冬キャベツの葉腐症状軽減対策、雪中貯蔵キャベツの内部品質安定化)
担当部署:上川農試 研究部 栽培環境科・畑作園芸科
協力分担:JA北ひびき和寒基幹支所、和寒町農業活性化センター、士別地区農業改良普及センター
予算区分:道費(2001年度)、民間受託(2002〜2003年度)
研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)
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1. 目 的
キャベツを雪中貯蔵した時に発生する、結球内部の葉が葉先を中心に褐〜黒変する症状(結球内部黒変症状)の発生要因を解明する。

2. 方 法
○本症状の評価方法:10株について、赤道および結球頂部と赤道の中間で水平に切断し、切り口における発生程度を0(無)〜4(甚)の5段階で指数化し、発生程度として表示。
1)発生実態調査 
 1.結球内部黒変症状と土壌化学性の関係 2003年の30サンプルについての関係解析
 2.結球内部黒変症状と結球部無機成分の関係 2002,2003年の50サンプルについての相関関係
 3.結球部カルシウム含有率と土壌化学性の関係 2003年の30サンプルについての相関関係
2)結球部における発生葉位と葉位別カルシウム含有率の分布  
2002,2003年に上川農試で採取したキャベツ20個体を、結球最外葉から一枚ずつむき分け、本症状の発生葉位を調査。2003年のサンプルの10枚毎の部位別(中肋,中央,葉縁,発生部位)のCaO含有率を測定。
3)水耕栽培でのカルシウム濃度処理試験 
  Ca添加量:対照区(100ml/L),微量区(30ml/L),欠如区(0ml/L)、Ca処理日数:3〜28日間

3. 成果の概要
1) 発生実態調査の結果、発生程度が大きくなるに従って交換性カリウム含量は低下する傾向であった。交換性カルシウム含量は発生程度区分による差はないものの、発生程度「0.5以上」の石灰飽和度,塩基飽和度は他の区分より低く、土壌診断基準値を下回った(表1)。
2) 本症状の発生程度と結球部無機成分含有率との間には、カルシウム,カリウム,窒素の順に有意な負の相関関係が認められ、本症状は要素欠乏症であると考えられた(表2)。また、既往の欠乏症の典型例と本症状の発生パターンを比較した結果、本症状の主要因はカルシウム欠乏による可能性が高いと考えられた。
3) 結球部カルシウム含有率と土壌化学性との相関関係を解析したところ、交換性カルシウムとの相関が強かった(表3)。また、現地栽培圃場の交換性カルシウムは、土壌診断基準値を下回る場合が多かった。
4) 結球部における発生葉位は結球部の比較的外側に多く分布し、発生部位は必ず葉縁部で“縁腐れ症状”を呈していた。部位別のカルシウム含有率は、いずれの葉位についても中肋から葉縁部に向かうにつれて低下する傾向を示し、発生部位が最も低かった。また、発生有無別のカルシウム含有率は、発生「なし」より発生「あり」が低かった(図1)。
5) 水耕栽培試験の結果、カルシウム添加量を減じた区で本症状の発生が見られた(表4)。また、カルシウム添加量を減じる期間を長くすると、本症状の発生葉数が増加したことから、カルシウム欠乏期間と本症状の発生程度との間には密接な関係があると考えられた。
6) 以上より、本症状の主要因はカルシウム欠乏によるものと判断された。また、結球部のカルシウム含有率と本症状の発生程度は負の相関関係であることから、発生軽減には結球部のカルシウム含有率を高めることが重要と指摘できる(図2)。

4. 成果の活用面と留意点
1) 本試験は「冬駒」を用いて実施した。

5. 残された問題点とその対応
1) 結球部のカルシウム含有率を高めるカルシウム肥料の選定およびその施用法
2) 本症状の発生が少ない品種の探索
3) 本症状が雪中貯蔵中に進行するメカニズムの解明
4) 土壌水分、生育速度が本症状に与える影響