成績概要書(2005年1月19日作成)
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課題分類:
研究課題:菜豆(金時・手亡)の低損傷収穫技術(補遺)
      (菜豆類の低損傷収穫機実用化)
担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科,作物研究部 小豆菜豆科
協力分担:
予算区分:道費(豆基)
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1.目的
菜豆仕様の2条軸流式コンバイン3機種を供試して,残葉量が多い金時や高水分手亡の作業精度や作業能率を明らかにするとともに,収穫した子実の乾燥法,加工適性を検討した。また,機械収穫時に影響を及ぼす金時類の“葉落ち”に関して,開花期窒素追肥および気象条件が及ぼす影響,成熟期以降の手亡の茎葉および子実水分経過を検討した。

2.方法
1)試験場所:十勝農試,芽室町,音更町,帯広市
2)供試品種:「大正金時」,「福勝」,「雪手亡」
3)供試機:2条軸流式コンバイン3機種(菜豆仕様)
刈り取り形式 刈り刃形状 脱穀選別部の仕様
ロークロップヘッダ 回転丸鋸刃 こぎ胴周速度:5.0〜5.6m/s(変速機,プーリ交換)
大型コンケーブ(22〜25mm),大型グレンシーブ(φ20,25mm)
4)調査項目:①収穫(作物条件,作業精度,作業能率),②乾燥(堆積高さ,風量比,入気温度・湿度,平均乾減率),③加工適性(煮熟特性,粒色,官能評価),④金時類“葉落ち”(子実重,残葉量,吸収窒素量),⑤手亡類茎葉・子実水分経過(茎・葉・莢・子実水分)

3.成果の概要
1)2条軸流式コンバインの作業速度0.5〜0.7m/sにおける「福勝」の収穫損失は0.5〜4.7%,損傷粒は0.3〜2.5%(皮切れ粒は0〜0.4%)であった。作業速度0.58,0.65m/sにおける作業能率はそれぞれ0.20,0.24ha/hであった。残葉量(生重)は75〜164g/㎡であった。また,金時の成熟期における残葉量は,追肥や登熟後期が高温に経過することにより吸収窒素が子実へ移行されないときに増えると考えられた。
2)金時の常温通風乾燥では,乾燥前の子実水分が高いほど平均乾減率は大きかった。堆積高さ30cm以上,風量比1 m3/s・t程度では,乾燥途中の撹拌が必要である。堆積高さ25cm程度の薄層として風量比を高めれば,表層と下層との子実水分の差は1%未満であった。
3)金時の検査等級は,にお積み収穫の2等に対して,3等であった。入気温度・湿度が20℃・60%程度で平均乾減率がおよそ0.3%/hまでであれば,にお積み収穫子実に対して,加工適性や官能評価が劣ることはなかった。
4)手亡の収穫時期における茎水分および葉水分は気象条件に関わらずほぼ一定であった。平均子実水分は,完熟期頃では25%程度まで低下するが,その後の低下は小さかった。
5)2条軸流式コンバインの作業速度0.3〜0.6m/sにおける「雪手亡」の収穫損失は1.4〜5.3%,完熟期以降の損傷粒は0.5%以下であった。子実水分は22〜25%であった。茎水分70%以上では汚粒が発生し,汚れ指数は1.2〜2.4であった。作業速度0.46m/sにおける作業能率は0.24ha/hであった。
6)手亡の常温通風乾燥では,平均入気温度が16℃以下でも入気湿度が60〜65%であれば平均乾減率は約0.23%/hであった。入気湿度が60〜65%程度,堆積高さが16〜27cm程度の薄層として風量比を高めれば,表層と下層との子実水分の差は1%未満と考えられた。
7)手亡の検査等級は,にお積み収穫の2等に対して,収穫時に発生した汚粒により4等以下であった。平均乾減率が0.2%/hを超えると煮えムラ率が増加し,製餡歩留まりが低下する場合が見られた。にお積み収穫子実に対して,加工適性や官能評価が劣ることはなかった。

表1 金時のコンバイン収穫・乾燥法
品 種 「大正金時」,「福勝」
収穫時期の目安 熟莢率ほぼ100%,子実水分「大正金時」18〜26%,「福勝」19〜25%,
通常では完熟期から6日以内(収穫最適子実水分は22〜24%)
収穫機 2条軸流式コンバイン(金時仕様)
作業速度 0.6〜0.8m/s(総重量700g/㎡以上では0.6m/s未満)
刈取方式,刈高さ ロークロップヘッダ(回転丸鋸刃),0cm
倒伏程度 倒伏角45°:作業速度0.5m/s
倒伏角75°:作業速度0.5m/sで追い刈り収穫
こぎ胴周速度(回転数) 5.0〜5.6m/s(190〜212rpm)
送塵弁位置 6以上
作業能率 0.20〜0.24ha/h
培土高さ 12〜18cm程度
乾燥法 農協等の受入水分に調製する場合、
①常温通風乾燥(静置式)または自然乾燥とする。加温乾燥は行わない。
子実水分16%以下にしない。平均乾減率は0.3%/h程度までとする。
②乾燥後の子実水分ムラを低下させるために,堆積高さを50cm以下として乾燥開始から
6時間後に撹拌するか,25cm未満の薄層で乾燥する。

③自然乾燥の場合は、夾雑物を除去して堆積高さ10cm程度に広げ(約30m2/ha)、
1日1回程度の攪拌を行う。
収穫時の問題点 -
乾燥時の問題点 外気温度24℃以上,相対湿度40%以下の条件では,加工適性が劣る危険性がある。
  注)波線部は変更または追加した箇所

表2 手亡のコンバイン収穫・乾燥法
品 種 「雪手亡」
収穫時期の目安 熟莢率ほぼ100%,(子実水分18〜20%,通常では完熟期から1週間以降)
収穫機 2条軸流式コンバイン(手亡仕様)
作業速度 0.6m/s
刈取方式,刈高さ ロークロップヘッダ(回転丸鋸刃),-1〜0cm
倒伏程度 倒伏角30°程度まで
こぎ胴周速度(回転数) 5.6〜10m/s(212〜385rpm)
送塵弁位置 6以上
作業能率 0.24ha/h
培土高さ 10cm程度
乾燥法 金時に準ずる。平均乾減率は0.2%/hまでとする。
収穫時の問題点 収穫時の茎水分70%以上では,汚粒発生の危険性が極めて高い。
乾燥時の問題点 金時に準ずる。
  注)波線部は変更または追加した箇所

4.成果の活用面と留意点
1)穀物水分計で子実水分を確認して,収穫作業や乾燥作業を行う。

5.残された問題とその対応
1)収穫後の乾燥法は,さらに「機械収穫菜豆の高品質省力乾燥システムの確立」(H17-19)で検討する。
2)調製施設における手亡の汚れ除去法は,「調製(磨き)技術の向上」(H16-17)で検討する。
3)土壌窒素および追肥窒素が葉落ちに及ぼす影響と改善対策は,「菜豆類(金時、虎豆)における土壌・栄養診断技術の開発と窒素施肥技術の実証」(H17-19)で検討する。