成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:小麦のデオキシニバレノール汚染低減のための乾燥調製法 
      (小麦子実のマイコトキシン汚染に対するリスク管理技術の開発
      -収穫・乾燥調製法と汚染程度評価法の開発-)
担当部署:中央農試 機械科、病虫科、十勝農試 栽培システム科
担 当 者:
協力分担:
予算区分:重点領域など
研究期間:2002〜2004年度(平成14〜16年度)
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1.目的
小麦中のデオキシニバレノール(DON) 汚染程度を暫定基準値以下に低減する乾燥調製技術を確立する。

2.方法
1) 小麦の二段乾燥における半乾貯留中のDON濃度推移
①供試小麦 H14中央農試産「ハルユタカ」、H15中央農試産「春よ恋」、H16中央農試産「春よ恋」、道央産「春よ恋」、②貯留水分(14〜18%) ③貯留期間35日サンプリング7日毎 ④貯留形態 H14,H15フレコンバッグ、H16PP袋(50kg)いずれも上面開放・無通風⑤調査項目 DON濃度(H14:ELISA法、H15,H16:LC/MS法:協力 ホクレン農総研)、赤かび粒率、外観健全粒からのFusarium graminearum(以下F.graminearum)分離率の推移
2) 選別機によるDON濃度の調製法 ①供試機 粒厚選別機WS61E、比重選別機4800MAXICap(呼称能力10t/h)、GA712(呼称能力1〜2t/h)、光学式選別機(低アミロ小麦選別機) Au-2000 (呼称能力10t/h) ②供試小麦 H14〜H16年道央産「ハルユタカ」「春よ恋」③調査項目 DON濃度(ELISA法)、赤かび粒率、容積重(ブラウエル穀粒計)、歩留、流量

3.結果の概要
1) 小麦の二段乾燥において、無通風での半乾貯留中、子実水分14〜18%ではいずれの水分条件でも外観健全粒からのF.graminearum分離率に大きな変化は無く(図1)、赤かび粒率にも変化はなかった。したがって、半乾貯留中にF.graminearumに侵された粒から新たな感染の広がりが起きる可能性は低い。しかし、小麦中のDON濃度は徐々に増加する確率が高く、中でもDON濃度が高い場合は顕著であった(図2)。このため、特に高DON濃度(2000ppb以上)の小麦までは速やかに本乾燥を行うことでDON濃度の増加を回避する必要がある。
2) 原料によっては粒厚分布および粒厚とDON濃度の関係が異なり、同じ目の篩で選別してもDON濃度の低減効果や歩留に大きな差があるため、粒厚選別のみでDON濃度を暫定基準値以下に調製することは困難である(表1)。
3) DON濃度3600ppb程度の小麦は比重選別機によって暫定基準値以下に調製することが可能であった(表2)。
4) 比重選別における原料、製品、屑のDON濃度は、容積重と相関が高い。このため、DON濃度と容積重の関係を求め、製品のDON濃度が目標より高い場合に容積重を目安に選別程度調節用の仕切板位置等を調節し、目標値以下にできる(表3、図3)。
5) 比重選別機によって製品の容積重を向上させ、DON濃度を調製した後に、光学式選別機(低アミロ小麦選別機)を用いることでさらにDON濃度を効率的に低減できる(表4)。
6) 以上の成果により、小麦の二段乾燥における半乾貯留中のDON濃度の増加を回避し、製品小麦のDON濃度を低減することができる(図4)。


図1 貯留中の外観健全粒からのF.graminearum分離率の推移(中央農試「ハルユタカ」「春よ恋」)


図2 貯留中のDON濃度の推移(中央農試「ハルユタカ」「春よ恋」)

表1 粒厚選別機による選別例

表2 比重選別機による選別例

表3 容積重を利用した比重選別機によるDON濃度調製例


図3 比重選別によるDON濃度調製における予備稼働での容積重とDON濃度

表4  光学式選別機によるDON濃度の効率的な低減例


図4 麦乾燥調製貯蔵施設におけるDON濃度低減のための乾燥調製作業の流れ

4. 成果の活用面と留意点 
1) 防除等の対策を徹底し、DON汚染の低減をはかる。
2) 本技術の実施にあたっては、原料小麦中のDON濃度にばらつきがあることに留意する。
3) DON濃度が3600ppbを超える小麦の比重選別は未検討である。

5. 残された問題点とその対応
1) 施設の荷受け段階でのDON濃度別仕分け技術及び迅速簡易なDON濃度測定技術の開発
2) 製品小麦の貯蔵中におけるDON濃度の推移は「調製技術と簡易分析法によるマイコトキシン汚染低減技術の確立(H16〜H18)」で実施。
3) 赤かび粒率0.0%とする選別技術の開発。