成績概要書(2005年1月作成)
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研究課題:道産大豆の豆腐加工適性(硬さ)の簡易評価法
       (「豆腐用大豆の品質評価法の確立と選抜強化」)
担当部署:中央農試 農産工学部 農産品質科
協力分担:中央農試作物開発部畑作科・十勝農試作物研究部大豆科
予算区分:道 費
研究期間:2002〜2006年度(平成14〜18年度)
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1.目 的
 豆腐加工適性に優れた大豆の品種育成に寄与するため、より早い育成段階での品質評価法の開発が求められている。北海道産大豆に特に望まれているのは豆腐の硬さの向上であり、本試験では、少量・多品目に対応でき、早い世代からの評価が可能な豆腐の調製方法およびテクスチャー測定法、並びに、初期世代におけるスクリーニングに適用できる簡易評価法について検討した。

2.方 法
1)豆腐加工実需調査:道産大豆の実需(道内外8社)に対し、豆腐原料としての北海道産大豆の実態、および求める品質についてヒアリング調査を実施した。
2)供試材料:豆腐調製法およびテクスチャー測定法の検討には2001〜2003年産「フクユタカ」「エンレイ」「トヨコマチ」「トヨムスメ」を用いた。作成したプロトコルに基づく豆腐の評価には2001〜2003年産の品種・系統を計467点供試し、成分(蛋白・脂質・全糖)分析および近赤外分光法の検討に用いた。
3)豆腐調製法およびテクスチャー測定法
  大豆40gを水浸漬後に所定量加水し、ミキサーでホモジナイズした。生豆乳を固液分離型の遠心分離器(コクサンH-112)で分離し、沸騰湯浴中で加熱後に冷却、分注した(25ml×6)。これらに凝固剤を添加し、専用容器(ポリプロピレン製円筒容器)中で加熱・凝固後に急冷した。調製した豆腐は、テクスチャーアナライザー(SMS社 TA-XTi2)による貫入試験(円筒型プローブ(φ10mm)、貫入速度1mm/秒、貫入長15mm)を行って破断応力を測定した。
3)近赤外分光法:粉砕試料、全粒試料および豆乳試料について近赤外吸光スペクトルを採取し、豆腐破断応力推定のための検量線を作成・評価した。

3.成果の概要
1)実需者が高コストの道産大豆をあえて使用する理由の第一は「味の良さ」であり、今後の道産大豆には、そのメリットを生かしつつも府県産「フクユタカ」「エンレイ」並に加工適性(豆腐の物性、特に硬さ)を向上させることが求められた。
2)豆乳調製および充填豆腐調製工程を検討した結果、豆乳調製時の総加水量を試料乾重比7.5倍、生豆乳の加熱時間を17分、0.25%MgCl2による凝固等の諸条件を設定し、手順を図1にまとめた。また、豆腐の調製は20gからも可能で、一部の初期世代系統の検定にも利用できる。
3)道内品種の豆腐の硬さを比較すると、主要品種では「トヨムスメ」が最も硬く、「ユキホマレ」が最も柔らかい傾向が見られた(図2)。また、蛋白(図3)および全糖含有率と豆腐の硬さとの間には有意な相関が認められたものの、いずれも単独の分析値から豆腐の硬さを推定するのは困難と考えられ、実測による評価は不可欠である。
4)豆腐破断応力の非破壊評価法として近赤外分光法を検討した結果、大豆全粒試料の二次微分スペクトルからPLSR法によって得た検量線が高い精度を示し(図4)、異なる年次の試料にも良く適合した(図5)。
5)以上の結果から、近赤外分光法および実測法を用いることによって、早い世代からの豆腐加工適性(硬さ)の効率的な選抜が可能になると考えられた。


図2 豆腐破断応力の比較(2001〜2003(十勝農試ユキホマレは2002除く)平均)


   図3 原料大豆の蛋白含有率と豆腐破断応力の関係


図4 全粒試料の二次微分スペクトルから作成した豆腐破断応力検量線およびその評価(2002-2003年産)


  図5 年次の異なる全粒試料による豆腐破断応力検量線の評価(図4検量線を2004年産(n=55)で評価)

4.成果の活用面と留意点
1)少量の大豆原料による豆腐調製および豆腐破断応力の測定が可能であり、豆腐の硬さを選抜形質とした系統選抜、および、小規模の栽培法試験における処理区別の豆腐加工適性の判定に活用できる。
2)豆腐の硬さを選抜形質とした、初期世代系統の一次スクリーニングに近赤外分光法を活用できる。

5.残された問題点とその対応
1)大豆成分特性と豆腐加工適性(硬さ)との関連性の解明。
2)豆腐加工適性(硬さ)評価と、実需者評価および官能評価との整合性の検討。
3)近赤外分光法による豆腐破断応力検量線の精度向上。