成績概要書(2005年1月作成)
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課題分類:
研究課題:雪氷冷熱エネルギー利用によるだいこん、ながいもの長期貯蔵技術
       (秋どりだいこん・ながいもの冷熱利用貯蔵技術の開発)
担当部署:花・野技セ 研究部   園芸環境科
協力分担:十勝農試 研究部 てん菜畑作園芸科、中央農試 農産工学部 農産品質科
予算区分:補助(国費)             研究期間:2001〜2003年度(平成13〜15年度)
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1.目的
雪氷室型貯蔵庫を用いて、だいこんは冬期間の浅漬け加工用途向けを対象として、ながいもは生食用途への周年供給を対象に試験を行い、貯蔵期間や、適切な貯蔵形態を明らかにする。

2.方法
1)だいこんの長期貯蔵と内部品質
・貯蔵庫:雪氷室型貯蔵庫(JAびばい氷室貯蔵試験研究所)、対照貯蔵庫:1℃(湿度80%R.H.)低温貯蔵庫(花・野技セ内) ・包装形態:プラスチックコンテナ詰め(20本×2反復)、0.03mmPE折込包装、雪氷室型貯蔵庫はPE上部開放 ・貯蔵形態:平成13年 土付(L)、平成14、15年 土付(L、2L)、洗い、いずれも葉切除・供試品種:「夏つかさ」(H13〜15)、「健志総太り」(H14、15)・収穫日、調査時期:10月中旬に収穫、11月下〜12月上旬まで3℃の低温貯蔵庫で仮貯蔵後、試験処理。調査は翌年 1、2、3月。
・外観品質調査項目:腐敗、黒点、黒斑、表皮変色、健全割合(腐敗あるいは黒点の評点が3以上の割合) 全くみとめられない(5)〜著しい(1)の5段階評価 ・実需評価:浅漬け業者における加工試験
・内部品質等:糖、ビタミンC(アスコルビン酸)、だいこんのかたさ(浅漬け)
2)ながいもの長期貯蔵と内部品質
・雪氷室型貯蔵庫(同上)、対照貯蔵庫:農業倉庫(A農協、基本的に3℃、湿度無制御)
・包装形態:プラスチックコンテナ詰め(L〜2L規格 20本×1反復)、0.03mmPE折込包装、無包装(上部開放) ・貯蔵形態:土付 ・供試ながいも:十勝農試産、A農協産 ・外観品質調査項目:腐敗、黒点 全くみとめられない(5)〜著しい(1)の5段階評価 ・内部品質等:粘り、糖
3)ながいもの貯蔵腐敗の発生と内部品質
 乾物率(胴部)を変化させたながいもを供試し、貯蔵性を検討した。

3.成果の概要
1)だいこん貯蔵時の雪氷室型貯蔵庫の庫内温度は、入庫時、2〜3℃でありその後徐々に低下しおおよそ0〜1℃の間で推移し、平均庫温も3カ年とも1℃以下で安定した値を示した(表1)。ながいも貯蔵時の雪氷室型貯蔵庫の庫内温度は、冬から春にかけて0〜1℃の範囲で推移し、夏季に一時的に4〜8℃程度になることがあったものの、平均庫温で1.4〜1.8℃と十分な低温環境が維持できた(表2)。庫内湿度はいずれの品目の貯蔵時においてもほぼ95%以上の高湿度条件が維持された。
2)だいこん貯蔵において「健志総太り」を用いた場合、2月時点で黒点の発生が少なく、健全割合も高く、外観品質が良く維持されたことから、雪氷室型貯蔵庫で2月まで貯蔵可能と判断された。洗いだいこんを用いた場合、2月までは土付よりも黒点の発生が少ないが、腐敗、表皮変色の発生が多くなることから安定性に欠けた。サイズはL,2Lいずれを用いても2月までの貯蔵期間であれば貯蔵性に与える影響は小さかった(表3)。
3)貯蔵だいこんの内部品質やかたさなどの物理性は、処理区、貯蔵期間にかかわらず、変動が小さかった。実需者において貯蔵だいこんの加工試験を行った結果、2月までの貯蔵品であれば良い評価を得たことから十分利用可能と考えられた。
4)ながいも貯蔵において、秋掘り品は3月以降、黒点状の腐敗が多く発生した。しかし、春掘り品は入庫後、腐敗がほとんど見られなかったことから、秋掘り品を3月まで出荷し、その後春掘り品を入庫、出荷することにより、周年供給が可能と考えられた(表4)。内部品質に関して、秋掘り品を雪氷室型貯蔵庫で貯蔵すると糖が高まった(表5)。
5)ながいもの乾物率が15%以下になると、貯蔵中の腐敗が多く発生した(図1)。「ながいもの粘り評価法と品質向上対策」(H15年度、指参)では乾物率の目標値を17%としていることから、貯蔵腐敗の低減から見ても17%の乾物率を目標値とすることが妥当と考えられた。
6)以上をまとめて雪氷室型貯蔵庫におけるだいこん、ながいもの貯蔵期間とした(表6)。

4.成果の活用面と留意点
1)農協、生産者団体等の雪氷利用型貯蔵庫(雪室、氷室等)における、加工向けだいこんの冬季貯蔵、および生食向けながいもの周年貯蔵に活用できる。
2)高温年には冷熱源の雪氷が不足することがあるので、十分量の雪氷を確保する。

5.残された問題点とその対応
1)ながいも貯蔵中の腐敗発生と貯蔵病害の関係