成績概要書 (2005年1月作成)
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研究課題:大規模畑作における休閑緑肥導入が生産力に及ぼす影響と経営評価
担当部署:十勝、北見、上川農試技術普及部技術体系化チーム
協力分担:資源循環型農業確立支援事業(鹿追,更別,小清水,美幌,士別)地区推進協議会
予算区分:国費補助(資源循環型農業確立支援事業)
研究期間:2000〜2004年
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1.目的
十勝、網走、上川地域の主要畑作地帯における大規模畑作経営体を対象に、休閑緑肥導入による自然循環機能を重視した農法への転換が畑作物の収量性、土壌環境に及ぼす影響を農家レベルで検証し、休閑緑肥導入の農家経営に対する影響を評価する。
2.方法
1) 調査実施地区･農家数と導入緑肥:①十勝地域〜鹿追町4戸(ひまわり〔一部，えん麦野生種に変更〕),更別村5戸(とうもろこし,えん麦野生種)､②網走地域〜小清水町4戸(とうもろこし),美幌町5戸(ソルガム)､③上川(士別)地域〜士別市6戸(えん麦野生種,ソルガム,ひまわり)
2) 基本的輪作体系:①十勝地域〜休閑緑肥-秋まき小麦-てんさい-ばれいしょ･豆類-豆類、②網走地域〜休閑緑肥-秋まき小麦-てんさい-ばれいしょ、③上川(士別)地域〜休閑緑肥-秋まき小麦-てんさい-小豆-ばれいしょ。対照区は緑肥が入らない地域の慣行3〜4年輪作体系)。H12〜15年緑肥導入のA〜D系列を設置。農家慣行栽培。
3) 調査項目:緑肥収量、作物収量･品質、土壌調査および労働時間、経済性。
3.結果
1) 休閑緑肥導入が生産力に及ぼす影響
(1)休閑緑肥の乾物生産量は十勝550〜1050kg/10a、網走860kg/10a前後、上川(士別)450〜630kg/10a程度で、炭素量ベースで牛ふん堆肥2.5〜5t/10aに相当した(表1)。
(2)休閑緑肥導入後の作物収量に及ぼす効果は、①十勝で1作目秋まき小麦>3作目ばれいしょ，豆類>2作目てんさい、②網走で3作目ばれいしょ>2作目てんさい>1作目秋まき小麦、③上川(士別)で1作目秋まき小麦>2作目てんさい、であった(表1)。
(3)効果の持続性は、①十勝、網走で概ね3作目、②上川(士別)で概ね2作目まで、と推定した。
(4)土壌理化学性に及ぼす影響〜①熱水抽出性窒素は十勝，上川(士別)では導入後1作後、網走では導入後3作後で高まった。②十勝，網走では作土層下部および心土の土壌硬度が低下、上川(士別)では導入2作目の砕土性向上(聴取調査)が認められた。③土壌硬度の改善から判断した導入効果の持続性は十勝，網走で導入3作後まで確認できた(表2)。
(5)以上の結果を総合して、休閑緑肥導入の効果とその要因を表1に、また、休閑緑肥の肥効の観点から、導入後1作目秋まき小麦の窒素施肥に対する留意点を表3にまとめた。
2) 休閑緑肥導入の経営的評価
(1)経営耕地一定のまま休閑緑肥を導入すると,少なくても短期的には10a当たり所得は低下する(表4)。規模拡大をともなわない場合,緑肥を組み入れた輪作体系を経営耕地の全てに適用すると所得の低下は大きいため,部分的な導入に限定するほうが望ましく,経営耕地の5%程度の導入なら影響は小さい。ただし,①平均的には50ha程度の経営なら資金収支に影響を及ぼさずに10%程度の休閑緑肥を定着させうる。②網走地域3品輪作では,経営耕地の10%程度の休閑緑肥を導入し,早堀りでん原ばれいしょと置き換えることで,小麦連作を解消しつつ,所得を向上させうる。
(2)規模拡大に伴って休閑緑肥を導入すると，所得総額の低下を回避しうる(表5)。増収効果が大きいほど効果は大きく，とりわけ105〜110の増収効果を達成しうれば所得増大に効果的である。
(3)増収効果の大小の判定方法は課題として残されるが,土壌物理性の劣る圃場の改善のために休閑緑肥を積極的に活用する効果は大きい。とりわけ,土壌改良や有機物施用が不十分でありがちな新規取得農地の土壌改善をはかる場面に優先して,休閑緑肥を活用することが有効である。
4.成果の活用面と留意点
1)休閑緑肥作物の導入に当たっては、今回の成果と既往の知見(北海道緑肥作物等栽培利用指針改訂版北海道農政部編)とをあわせて活用する。
2)ひまわりはバーテシリウム抵抗性品種を用いる。
3)経済性評価は、①分析対象地域を想定している、②長期の休閑緑肥導入による生産性向上は評価していない。
5.残された問題点とその対応
1)持続的畑作農業の展開における土壌病害と緑肥の新たな機能の解明と効果の実証
2)畑作経営の大規模化に伴う耕耘管理と土壌の堅密化対策
3)休閑緑肥の長期的な導入効果の解明